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【年代別】私が“憧れと共感”を感じる女性たち
女性は歳を取るのが難しい生き物だと思う。
いまだ日本社会の中で呼吸していると、若さや美しさの価値だけが特別に高いもののように感じられてしまうし、体の変化もダイナミックだし、その変化と共に心も繊細に揺れ動く。年齢を重ねるほどに、何かが奪われたような息苦しさを感じてしまう瞬間がある。(一方では不思議な解放感と自己肯定感も増すのだけれど)
そんな中、心の片隅に憧れの女性がいれば、呼吸がすうっと楽になる。自分より年下や同世代ならば、あんな風に生きている人もいると思える希望が湧き、年上ならば年齢を重ねるほどに魅力や何か大切なものが増していくのだと確信を持たせてくれるから。
私は仕事柄、アーティストや作家、俳優さんなど、表舞台に立つ人を中心にさまざまな分野の人にお会いして話を聴き続けてきた。その経験も合わせつつ、自分のための覚書き程度に、年代別の憧れの女性を挙げてみたい。
70代
樹木希林さん(享年75歳)
女性として、人間としても多くの人が憧れる樹木希林さん。映画など作品で見られる唯一無二の存在感はもちろん、その生き方と発言は一致していて、そこにオリジナリティと美意識が宿っているところにも憧れる。ユーモアを含んだ毒舌や人間への興味と愛に溢れていたところも大好きだ。
希林さんの名言は枚挙にいとまがないけれど、私が特に好きなのはこちら。
どうぞ、物事を面白く受け取って愉快に生きて。
あんまり頑張らないで、でもへこたれないで。
このシンプルな言葉には希林さんの人生観と美学が特に色濃く現れているように感じられる。希林さんはおりに触れ、「役者であれば加齢を恐れず、過度な美容整形に頼らずに、年齢を重ねた自分の姿を見せていけ」といった趣旨の発言をしていますが、それは「年齢を重ねることも面白がればいい」という意でもあるのかなと。
癌を患った時も同じこと。「癌は死ぬ準備ができる病気だからいいじゃない」と語れる潔さもまた、人生の理不尽さや困難すらも面白がる姿勢からくるものなのかなと感じます。
*親友・浅田美代子さんが綴った樹木希林さんとの稀有な思い出と人生
60代
藤原美智子さん
藤原美智子さんは、長年、美容業界を牽引してきた伝説のヘアメイクアーティストであった同時に、今も多くの女性の憧れの存在でもあり続ける人。長年、女性誌界隈に身を置いてきた私にとってもずっと憧れの人だったのだけれど。
一昨年、東洋経済オンラインの連載ルポにご登場いただいたのを皮切りに、Voicyで対談させていただくなど交流を持たせていただくようになり、その憧れはしぼむどころか、共感とともにますます膨らんでいきました。
ヘアメイクという仕事がここまで脚光を浴びていなかった時代から、その類まれなるセンスと技術と人間力で、同職の地位向上や美容雑誌の躍進に貢献。クリエイターとしてのみならず、自ら事務所も立ち上げて、小田切ヒロさんなど多くのトップアーティストを育ててもきた。
人柄は驚くほど気取りがなく、フラットで自然体でチャーミング。大人の女性としての凛としたマニッシュな美しさをもちながら、内面には、おしゃべり好きな少女と冒険好きな少年が同居している。
そして、何より敬愛して励まされるのは、軽やかに変化することを楽しむという姿勢。63歳の時にヘアメイクアーティストを引退、ビューティーライフスタイルプロデューサーというオリジナルの肩書きを携えて、新たに起業。全女子を幸せに導く道へとシフトされたところも、かっこいい。
守りに入ることなく、自然体で新たな冒険へと繰り出す先輩の背中をずっと見ていきたいです。
50代
小泉今日子さん
私と10歳までは違わないのに、人生の大先輩だと感じられる小泉今日子さん。若かりし日から大スターであり、私にとっては子供の頃に見ていた“何てたってアイドル“だからなのでしょう。
何度かインタビューする機会に恵まれていますが、やはり器の大きさがずば抜けているし、それでいて、おちゃめなユーモアも感じられる。毎回、その人間力と佇まいに痺れています。きっと誰も見たことがないような景色をたくさん見てきた方なのだろうと、その言葉選びや思考の深さから感じます。
悲喜交々の経験を重ねて、見たいものだけではなく、この世界にあるものをさまざまな景色をしっかりと見ていこうと思わせてくれる先輩。
小泉さんについては、過去の記事でも書いているので、こちらもあわせて読んでいただけたら嬉しいです。
40代
aikoさん
アーティスト・aikoさんには20年超で定点観測的にインタビューする機会をいただいています。彼女に対しては取材者を超えて、同世代のいちファンとして、いち女性(人間)としてリアルに重ための敬愛を抱いています。
ゆえに、またいつか別コラムにて語りたいところですが、私が大好きな彼女の魅力を端的に記しておくと、人間(身近な人からファンまで)に対する愛も情も狂気を孕んでいるほどに深く。でも、そんな自分をユーモアに包んで表現できるところが面白いし、心打たれます。
ポップで親しみやすい恋愛の歌を歌っているようでいて、実はとても文学的な歌詞を描いているし、天才的なメロディを作れる人。
そして、今年デビュー27周年を迎える今も、音楽に対する純粋な情熱とストイックさを保ち、ライブに全身全霊を捧げている。彼女のライブは、毎回、理屈抜きで涙が出てくるのは、どれだけ音楽に賭けているが伝わってくるから。
子供の頃からの自分のピュアな好きを大切に守りぬき、大人になっても「夢の中のまっすぐな道」を歩き続けているところに憧れ続けています。
端的に語るつもりがどんどん長文になってしまう!
東洋経済オンラインの連載にご登場いただいた時のインタビューを置いておきます。話題にもなった記事なので、ぜひ読んでいただけたら。
30代
イ・スラさん
実は30代と20代部門は、なかなか思いつきませんでした。お会いしたことはないけれど、最近、かっこいいなと感じた人を挙げてみます。
イ・スラさんは、1992年、韓国・ソウル生まれの作家。エッセイストの友人から勧められ「日刊イ・スラ」を拝読したところ、その感性と文才に心動かされました。
本書は、一見、平凡にも感じられる彼女の生活と人生から、独自のテーマを掬い上げて、繊細に丁寧に思索して綴ったエッセイ集。
家族や友人など身近な人への愛情から、怒りや戸惑いや恐怖などの負の感情にも、深く真摯に向き合っている。自分について正直に書きながらも、そこに自虐やナルシシズムは感じられないところも好もしい。
本書を薦めてくれたエッセイストの友人は、「インターネット時代。手触りのない文章ばかりが増える中で、イ・スラさんの文章は肉体的だから惹かれた」と語っていて、確かにその通りだなと。裸の文章というか、生っぽい手触りがあって、そこに私も書き手として憧れます。
実際に、著者はヌードモデルのバイトを経験するなど、自らの肉体を通してさまざまなことを体得しています。
20代前半は「時間に対して高い報酬を得られる」のと、「自分の体に勇気を与えたい」という理由からヌードモデルのバイトを経験。アトリエや美術学校、海外の舞台まで、裸になって人前に立ち続けた彼女は、ある気づきを得る。
それは、みんな等しく彼女の裸を眺めて絵を描いているにも関わらず、どれも少しづつ描き手自身に似ていたということ。胴が長い人は、実際の彼女よりも長い胴を描き、唇が厚い人や、鼻が高い人も同じだったと。
他人を見るとき、誰もが自分の体を通過させるという事実を自分の目で確認したところで、自分は慰められたのだろうか。それとも悲しかったのだろうか。
そんな絵を三年間見続けていたら、私は自分の裸だけは上手に描けるようになっていた。それは「客観」と言ってもいいのかもしれない。私が手に入れた数少ない真実だった。
また、このエッセイについて「フィクションとノンフィクションの間で描写している」と彼女は公言しているのだけれど、そこも、ありのままの自分をより生っぽく深く描いたり、肉体的な文章を描く上での鍵なのかもしれない。
いずれも、長らくインタビューや文筆を続けてきた私としても、とても共感です。(この話は長くなりそうなので、また改めて)
30代を迎えたイ・スラさんはすでにメジャーな作家であると同時に、韓国ではファッションアイコン的な存在でもあるそうですが、彼女のInstagramを見れば納得です。
20代
ちゃんみなさん
アーティストのちゃんみなさんは、もともと好きな楽曲がいくつかあったし、たまたま目にしたインタビューでも「生き方も筋が通っていてカッコいい人だな」と感じていたのですが……。最近、後追いで見始めたオーディション番組「No No Girls」で、彼女のアーティスト、プロデューサーとしての凄み、年齢とか性別とか職業を超えた人間としての面白みに惹かれました。
「No No Girls」は、「身長、体重、年齢はいりません、ただあなたの声と人生を見せてください」とちゃんみなさんが最初に宣言した通り、年齢や外見ではなく、その人の唯一無二の「声と人生」を評価するというオーディション。
ルッキズムなどの外的要因で、これまで様々な場面で他人に「No」と言われ続け、いつしか自分にも「No」を出していた女の子たちにチャンスと希望を授けよう、令和の今も消えないルッキズム社会に「No」を突きつけようと立ち上がった企画です。
このコンセプトだけでも前のめりになりましたが、実際にオーディションが進んでいく最中もちゃんみなさんは、本質を突く言葉、魂に火をつけるような言葉を参加者たちに投げかけ、彼女たちの意識やスキルをガンガン底上げしていく様子は、とんでもなくクールでホットだった!
シェイプ(体型)を変えてほしいわけじゃなくて。パフォーマンスに出るマインドはやっぱり私生活からくるので、ストイックな部分は表に出る人としては必要不可欠です、絶対に。これはプロとアマチュアの違い。本当にここだけはやらないと差がつかないので頑張ってほしいです。
ちなみに、ちゃんみなさん自身もルッキズムと闘ってきたし、外見至上主義の社会に対して問題提起してきた人だからこそ、その言葉には深い説得力がありました。
ちゃんみなさんについては、明日のvoicyでも語る予定です。
以上、覚え書き程度のつもりが、すっかり長文に! まだまだ憧れの女性たちは数多浮かぶので、また書きたいなと思っています。