「のれんバンク」閉店した地域の名店の「レシピ」と「街の味の記憶」の保存プロジェクト
数年前より考えている「のれんバンク」という企画があります。その内容をまず一度整理していきます。
(追記2022.09.27:思い出の名店の情報を集めるための、ランディングページを作りました。こちらもブックマークなどよろしくお願いいたします!https://norenbank-lp.studio.site/ )
「のれんバンク」の企画内容
街の人に今も愛されている飲食店なのに、後継者がおらず、シェフがご高齢なのもあり閉店をせざるをえない。こうした飲食店が日本中で増えています。このままでは、やがていろんな街から地域の味の記憶が消えていってしまう。そうした地域の人達に愛された飲食店のレシピを保存しておく仕組みはできないだろうかという発想がまず起点にあります。
STEP.1 閉店した地域の名店のレシピをアーカイブ
飲食店を閉店したオーナの協力をいただき、レシピなどを「のれんバンク」に預けアーカイブ化します。
保存を検討している項目は、「人気メニューのレシピ」、「調理の様子を保存した動画」、「店主が店の歴史などを語るインタビュー」、「常連客が語るその店の思い出のエピソード」などを想定しています。
STEP.2 人気メニューの使用希望者にレシピを販売
そのレシピを使いたい飲食関係者が現れたら、人気店のレシピの使用権を販売し、使用を許可します。その使用料はレシピを作った料理人の方に渡します。レシピの使用権を購入した店では、例えば「萬福軒のレバニラ炒め」のように、閉店した店舗の名前をメニューに表記してお客さんに提供できます。(そのメニューの売上の数%も、レシピ開発者に戻っていきます。)
STEP.3 人気メニューの再現提供と、その店舗のファン投票によるクオリティーコントロール
失われた人気レシピの使用権を購入した飲食店は、人気店のファンへ向けてその料理を提供していきます。地域の人気店のファンは、再現されたメニューを食べれるようになると同時に、人気店のファンクラブの会員になることことで、復活した人気メニューの再現度合いや美味しさなどを、レビューとして評価することができます。
大枠では、この様な流れを想定しています。
テクノロジーを使用して自動化を目指す
このプロジェクトにテクノロジーの使用がなぜ必要かというと、2つ理由があります。
1つは、なるべく多くの売上が引退した店主に届くようにするために自動化が必要だからです。
運営を自動化し、コストを極力抑え、最低限の運営費でプロジェクトが回るようにすることで、結果として、なるべく多くの売上を、引退した人気店の店主に渡せるようになります。自営業である、街の飲食店の場合は、年金などが、会社づとめの人より少ない可能性があり、退職金なども無いため、感謝の気持でなるべく街の人の思いを多く還元できればと思います。
2つめも、1部1番目の理由とかぶるのですが、お金の流れをなるべく、クリアにし外から見えるようにすることで、不正の可能性をなくし、その思い出の飲食店を応援したい人たちの気持ちがより集まりやすい流れを作りたいからです。
様々な関係者からのフィードバック
さて、こうした「のれんバンク」について、身近な友人や知人たちに話をし、フィードバックをもらって企画を練り込んで行きます。なお、私の理解と解釈が入っているので本人たちの発言そのままではありません。何か違和感があれば、それは私が原因になります。
地域の高級洋食店のシェフ 2名
「長く続けている人気店なら、ファンのコミュニティーがあるので、もう一度あの味を食べたいというお客さんは多いだろう。」
「こだわりの強い料理人は他の人のレシピをあまり使いたがらない人が多そう。」
職人タイプの料理人はレシピは使ってくれなそうな気配、後述の、弁当店などへのレシピ販売は相性が良さそう。
「レシピを提供してくれるかは、その人のパーソナリティーと、修行の仕方などによる。引退後であれば可能性はある」
「閉店する(した)店は、この街だけでもたくさんある。」
「レシピだけでの完全再現は、難しい。火加減、煮詰め具合、レシピ化しづらい部分が多い。一般の方は特に再現は難しい。プロでもそれぞれの手癖などがあるので、完全に一致はしなそう。」
「自分が自分のレシピで作っても完全に同じにはならない。」
「同じメニューを出していても、味が変わったと言われることすらある」「スープ、味噌汁なども難しい。調理時間が長い、工程が多い、あるいは工程が少ない(寿司)などは再現難度が高い」
「ケーキ、蒲鉾店などレシピが明確なものなど、再現に向いたメニューはある」
味の繊細さと曖昧さの話が続く。この辺りは、聞いていて非常に面白かった。
レシピの味の完全再現というより、美味しくて、80%ぐらいの味の再現あたりが落とし所のような気がする。あの名店に近い味を食べられて、あの引退した名店の店主を経済的に応援できるというのが購入の動機になるのでは。
フードに強い、ローカルウェブメディアを運営する社長
「レシピだけでなく店舗名とセットでなら良さそう。」
「レシピがオーナーの経験や感覚などの暗黙知であった場合に数値化するところにハードルがありそう。 文字化、計量などのハードル。」
料理人からも指摘のあったポイント、こちらはいろいろな人の知恵を借りたい。
「店舗がバンクを通さずに店頭でメニューをこっそり販売するのをどう防ぐかが課題」
美味しいお弁当が食べたいというお客もいるが、好きだったあの店の味が食べたい。引退したあの店主を応援したいという地域の顧客がこのプロジェクトの利用者の中心になる。売上が引退した名店の店主に確実に届いているというのがクリアに見せれたら、全く同じ味をパクられても、ネコババする店から買う人は、少なくともローカルのコミュニティーの中にはいない気がする。レシピを売る範囲をオリジナルの店の近隣に限定する。ある程度信頼のある法人にだけ販売するなど、方法はありそう。
アートプロダクトなどの販売をする福祉施設を運営する社長
「起業や社長業に興味があるけどコンテンツが無いと言うターゲットに人気店のレシピは当てはまるのでは。」
「弁当屋でその権利を買い取るのはおもしろいのでは。 弁当のメニューとして地域のレシピは魅力的。 全国で福祉の弁当屋×「のれんバンク」などの展開が見える。」
福祉施設で弁当や惣菜を作っている場所は多いので、そうした施設とのコラボは可能性を感じる。福祉施設の利用者の支援と、引退した名店の店主への支援。名店の味をもう一度、食べたい地域の人への料理の提供と、三方良しの気配。
今後の展開
プロジェクトを円滑に回すテクノロジー面の調査。具体的な地元の店舗へのアプローチ。今回声をかけた方たちとの継続したブレスト、企画の磨き上げを平行して進めていきます。
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