【植物が出てくる本】『中空』鳥飼否宇
鳥飼さんは、20年以上前に、ネイチャーゲームの会で一緒に活動していたお仲間でした。
鳥類にとてもお詳しく「トリさん」と呼ばれていましたが、奄美大島に転居され、ご一緒する機会がなくなり残念に思っていました。
そんな折、2001年に、本作で第21回「横溝正史ミステリ大賞」優秀作を受賞されたと伺い、驚いてハードカバーで買い求めました。
今やミステリー作家としてはもちろん、碇卯人名義で『相棒』シリーズのノベライズを手掛けるなど、活躍されています。
『中空』鳥飼否宇(2001年:KADOKAWA)
植物写真家の猫田夏海は、大学の先輩で自称「プロの観察者」鳶山久志と、鹿児島県の竹茂村を訪れます。何でもこの村で、数十年に一度しか咲かない「竹の花」が開花しているというのです。これは何としてもカメラにおさめたいと、張りきる猫田。
竹茂村は辺鄙な山奥にあり、人々は荘子の思想に基づき、素朴な生活を営んでいました。そんな村で、かつて起こった凄惨な事件。謎が多い人間関係。そしてついに、新たな事件が……。
↑この部分はいつも自分で書いているのですが、ミステリーを読み慣れていないため、今回はかなり自信がありません💧 温かい目で見ていただければうれしいです😅
鳶山は猫田から「トビさん」と呼ばれており、もしかして、著者ご本人がモデルなのかな……? と思いました😁
竹林の情景描写は、とても幻想的です。
濃淡あざやかな緑のコントラストをひきしめるべく、林床には無数の枯れ葉が敷きつめられ、差し込む午後の陽光に黄金色に染まっている。
竹に関する蘊蓄が豊富で、植物好きにはうれしい設定でした。
俗世間から離れ、自然とともに生きる竹茂村の人々の生活は、一見平和に見え、少し憧れてしまうほどでしたが、
そこにはドロドロした人間関係があり、突如、清々しい竹林の空気を一変させる事件が勃発します。
(ネタバレしないようにご紹介するのが難しいですね……)
竹茂村は架空の村ですが、登場人物は鹿児島の方言を話し、何となく、民話のような雰囲気を醸し出しています。
また、猫田や鳶山のキャラクターが魅力的で、ミステリーでありながら、どこか軽やかで、ミステリー初心者の私にも、読みやすい作品でした。
殺人シーンは、私にとってはちょっとグロく感じるものでしたが、はっきりしていて、ある意味わかりやすい? 表現でした。
トリックなどミステリーとしての面白さについては、私にはうまく語れないのですが、
作品の空気感に没頭することができ、どんでん返しもあり、とても楽しく読むことができました。