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鑑賞レビュー:国立西洋美術館 「内藤コレクション 写本ーいとも優雅なる西洋の小宇宙」

7月12日金曜日 東京都台東区 上野恩賜公園にある国立西洋美術館をたずね、開催中の展覧会「写本ーいとも優雅なる中世の小宇宙 (会期 2024 6/11~ 8/25)を鑑賞しました。

当日は、梅雨らしいぐずつく天気でしたが、日差しのキビシさよりも体調にはやさしい日和でした。金曜日であったので、夜間開館として20時までにゆっくりみられるので、お昼ご飯に東京純豆腐でノンスパイス純豆腐をいただき、おなかを満たしてゆっくり出かけました。

すてきな入り口です。わくわくしました

今回の展示は、ヨーロッパ中世時代のキリスト教における祈祷書や詩文を美しい装飾図版とカリグラフィーによって写されたとしてつくられた聖典や祈祷書などのコレクション。


一つ一つがものがたりのワンシーン
写真に指がはいっちゃったけど、これくらいちっちゃい絵だってわかるので、そのままに。
小さくても、表情のおもしろさも楽しいです

支持体はほとんどが獣皮紙であり、零葉(一葉の作品)として存在しているものも多く見られました。

もともとが書物であるために小さな作品が多く、近くでじっくりみる作品群ですので、一点一点を細かく見てまわりました。

同じように見える祈祷書でも、つぶさに見比べてみると作者や時代、地域により少しずつ違いがあり、図像や書体の意匠の個性、作品全体の印象や色彩のテイストの違いなどを見ることができ、実物をみることの大切さを実感しました。

色彩の鮮やかさが印象的な作品が多くありましたが、それは、絵の具の種類が限定的な時代に如何に少ない色で鮮やかな効果を出すかを考えて工夫されたとの説明があり、選択肢の多い、恵まれた時代であることが豊かな表現を生み出す条件ではないのかもしれません。

豪華な金のドラゴン。この書体はちょっとめずらしいです。
右端の2人、なにしてるんだろ?
珍しく、ちょっと写実的な表現です
金色の背景に心惹かれます
これ、何の昆虫?G(;^ω^)
この表情、ちょっと、赤塚不二夫っぽくないか?

その時代、自分たちにとってもっとも大切なことを伝えるために多くの宗教者が労力を惜しまず作った聖典の祈祷書たち。テンペラという手順の多い技法は制作のために作家に多くの熱量を強いる技法ではありますが、画材の耐性の強さが制作当時の鮮やかさを残しているので、時空を超え、書かれた文字が読めない私たちにも彼らのスピリットを伝えてくれました。

夜間開館の美術館でゆったりと流れる時間は、私にとって何よりも贅沢な時間。

夕暮れの内庭、カフェの光が美しい
薄曇りの夕暮れ。国立西洋にこんな静かな時間があるなんて…

夏の夕暮れの国立西洋美術館で過ごす時間は、コルビジェによってつくられた優美な空間の中で、中世ヨーロッパに思いを馳せて作品と対話をするように歩くことのできる、エレガントな散歩のような鑑賞時間でした。





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