子どもの日本語学習が「やらなければならないもの」から「やりたいもの」になるまで - ある生徒の成長記録③【Aflevering.203】
これまで私が日本語の学習サポートをしているAさんの心の成長についてまとめてきました。
今回の記事では、その成長について私が日本語講師として感じたことをまとめておきたいと思います。
子どもの成長に必要なことは?
子どもがもつ「生きる力」を信じること
私は保護者の方の子どもへの関わりや授業での先生の様子を見て考えることがあります。それは、「子どもたちを信じているのか」どうかです。
声のかけ方や子どもへの優しさ・厳しさはそれぞれにあって良いと思うのですが、その根底にある「子どもを信じているかどうか」をよく観察しています。私も親として至らない部分こそたくさんありますが、「子どもが持つ力を信じる」ということはこれまでに一度も揺らいだことはありません。
つまり親としての役割と共に、子どもの1人の人格を持つ人間として見ているかどうかです。子を思うが故に「自分が教えてあげなくては、やってあげなくては」という思いばかりが強くなり、子どもに選択させる機会を知らず知らずに奪ってしまうことで、その選択の結果によって得られたものについて考えてみたり何かを学んだりする機会が失われていることがあります。
子どもは親が知らないところで良いことも悪いこともたくさんの経験して常に考え学んでいます。子どもとの距離が近すぎる場合は、少し離れるという意識も大切なのかもしれません。
大人から見た時に「これはうまくいかないだろうな」と思うことも、本人に任せてみると途中で気づいて軌道修正ができたり、そもそもの選択を変えた方が良かったのではと考えることができます。そうやって、最終的には親元から離れて自立していくためのトレーニングをたくさん積んでいく必要があります。
子どものうちにたくさんのトライアンドエラーを繰り返すことで、そこから「考える力」が生まれて、それが子ども自身を自立させる力になると信じています。
私が日本語の授業をしている時も、「そのやり方だと、、、」と言ってしまいそうな時も一度踏みとどまるようにしています。子どもが自ら選択してその結果を受け止めることをたくさん経験してほしいからです。もちろん取り返しのつかないようなことは、見守っている大人として加わっていかなければなりませんが、幼い頃の選択は取り返しがつくことがほとんどです。
また、「時間がない、忙しい時」は子どもに委ねる余裕がなくなってしまいます。まさに日本でがむしゃらに働いている時の私もそうでした。当時、娘を起こして保育園に送っていっていた朝の時のことを思い出すと娘に心から謝りたくなることばかりです、、、その反省を今は活かしています。
大人の力でその子を変えることはできない
子どもを信頼することと同じですが、自分の力で何かをさせようとすると必ず上手くいかない時がきます。それは、これまで子育てをされてきた先輩の保護者の方々からお話を伺ってきて分かったことです。周囲の大人ができることといえば、選択する時の「情報集めを一緒にする」かせいぜい自分の考えを伝えて「促す」程度ぐらいなのかもしれません。
間違いや失敗を認める雰囲気づくり
まずは「間違いや失敗」という言葉の捉え方について考えておきたいと思います。これら自体は決して悪いことではありません。間違いや失敗を経験するからこそ、次どうすれば良いのかを考えることができ、その後の行動次第で新しい考えや学びが生まれることがたくさんあります。仮に自分が選択した行動が、途中で間違いであったと気づいて他の選択をしたことも「これは上手く行かない」という大切な気づきです。次に別の行動ができたのなら、その間違いとされる選択にも意味があったということになります。そして、そのためには周囲の大人がそれを待てるだけの忍耐力も求められるのです。「ほら、だから言ったのに」という禁句だと思っています。この言葉は自分もついつい口にしてしまう時があり、その都度反省しています。
私は日本の学校で学んでいる時、授業では正解を求められ、定期テストや入試でも求められた正解を出すことで次のステージに進んできました。だから、未だに「失敗はいけない」「間違えた発言をしてはいけない」という意識はかなり強く残っています。しかし大切なのはその後で、自分が何か行動を起こした時にそのフィードバックを行い、次どうするかを考えながら行動し続けるということです。
深く考えず途中で投げ出してしまったり、他の人のせいにして自分の行動を省みることができないことが「本当の失敗」だと私は思っています。そこには次に活かせる学びがないからです。そうならないように、子どもたちへの声かけには十分気をつけています。
私の教室の生徒は間違えることに怯えることはありません。なぜなら、日頃から「チャレンジして常に考えることが何より大切」と伝えているからです。初めは「間違えた答えを言ったらどうしよう」という雰囲気を持つ子もいますが、どんな失敗も一生懸命受け止める姿勢を見せます。考えた結果選んだことなのであれば、まず自分で考えることができたこと自体を褒め、チャレンジしたことを讃えます。それに対して、いい加減な答えに対しては厳しく対処します。「一生懸命考えるという事実そのもの」が子どもたちの成長を促すのです。
例えば、日本語の勉強法についてその子に考えがあればそれを試してもらいます。そして、途中でフィードバックを入れながら本当にこの方法で良いのかどうかも考えてもらいます。
Aさんとも勉強の進め方に関しては、かなり細かく確認をしてきました。Aさんの意見を聞き、私の考えを伝えて2人でAさんの学習法について常に考えながら進めています。要は2人と保護者も合わせてチームのようなものです。
以上がAさんの最近の成長を通して学んだことになります。
これからも学習サポートとして関われる子どもたちの健やかな成長を支えるために自分ができることを実践していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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