IBDP「日本語A(SSST)」の準備を始めよう!〜DPが始まる前に〜[211]
(2024.09更新)今年の9月から、再びIBDP日本語AのSSSTのチューターをさせていただくことになりました。
私がチューターをさせていただくその生徒は、"MYP4"の時から学校外で私の日本語のサポートを受けてくれていました。MYPでは日本語で学ぶ機会はないため、私の授業では日本語で論理的に考える力をつけるサポートを行っていました。これは国語としてのサポートではなく、時事問題や高校入試の小論文の過去問などを用いながら、日本語でのディスカッションや小論文の構成・執筆などを通して学んでもらいました。
そうすることで、日本語での思考力が高められ、英語で学んでいる学校の学習にも良い影響が出てくるのです。これについては以下の記事でまとめております。
新年度に向けての連絡が学校から生徒に
サポートをする生徒が、学校との面談を終え、新年度に向けての準備をするように連絡がきたと教えてくれました。そして、私も学校から出されたいくつかの指示に合わせて準備を進めることにしました。
かつて「日本語AのSSSTのチューターがいなくて困っている生徒がいた」「海外生活が長かった生徒で、学校から日本語Aを取るように強制され、チューターが最後まで見つからず、日本語Aが評価に至らないままDPを途中で辞めざるを得なかった」といったことを日本語教室の保護者の方から聞いたことがありました。これは不本意なことで、サポートが受けられない状況では勉強が不利になってしまいます。
そのため、今回はIBDP日本語AのSSSTのサポートで学習を始める前に行っておいた方が良いと思われることについてまとめていきます。そういった困った状況におられる生徒や保護者の方の役に立てば何よりです。
SSSTは他とは何が違うのか?
まずSSSTというセルフスタディを選択した場合、学校の授業で行われる言語Aとどういったところが異なるのかをまとめておきます。
・レベルがSL(標準)しか選べない
・最終試験「個人口述(IO)」は、15分間の発表となり先生との質疑応答は行われない
・学習する作品は全てPRLから選択しなければならない
SSSTは科目のレベルを選ぶことができません。そのため、他の科目でHL(ハイレベル)を選択しなければなりません。
また、最終試験の1つである「個人口述(IO)」も形式が少し異なります。試験のために準備することは一緒ですが、最後にある5分間の先生との質疑応答がありません。そのため、残り5分の時間も発表に充てることができますが、発表のポイントとして言いそびれた際の先生からのフォローが受けられない分、発表の準備を丁寧に進めておく必要があります。
最後に、学習に使う作品は全て"PRL"から選択しなければならないということがあります。"PRL"というのは"Prescribed Reading List"のことです。あらかじめIBが指定した作者の中から選択し、作品を決定しなければなりません。さらに、文学形式や時代や大陸などもバラつかせないといけません。しかし、この作品選択をSSSTの生徒は自分で行わなければならないため、これがかなり大変な作業になります。この作品の選定はあらかじめスケジュールに余裕のある時に取り組んでおくことをおすすめします。しかし、学校側から作品を指定されるケースもあるので、それがどうなるか分からない場合は、大体の目星をつけておくと良いと思います。
9月のスタートに向けてできること
DPを始める前の休みの期間は、自分のやりたかったことに没頭したり、頭や体を休めることも大切です。そういった時間もとりつつ、少しずつで良いので準備を進めておくと良いと思います。簡単にまとめると以下になります。
①学校がシェアした資料に目を通し、「最終試験や評価」などに関する項目を確認する
②「作品選定に関わるルール」を確認する
③PRLと照らし合わせながら、自分が興味のある作品をいくつかピックアップする
①の最終試験や評価をなぜ確認しておくのかというと、最終試験の内容や狙いを理解していないと、作品選定に支障を来す可能性があるからです。最終試験には、学習した作品で分析したことを使うものがあります。その時に、試験が求めているポイントをおさえることができていれば、作品の選定をする時も最終試験をイメージしながら考えることができるのです。
②に関しては、後ほど詳しく書きますが、このルールに従って作品を選ばなかったら、最悪の場合、日本語Aの評価をしてもらえない可能性があります。また、このルールは少し複雑で、PRLと見比べながら作業する必要があるので、比較的落ち着いていてまとまった時間がある時に取り組んでおくべきだと思います。
最後の③については、SSSTの場合、自分で作品を選ばなければなりません。PRLから選択しなければならないものの、その中で自分が読んでみたい作品があればそれを選ぶことができます。とはいっても、人気の現代小説などを読めるわけではありません。また、PRLに記載されている作者から自分の興味・関心にあった作品をいくつか抽出することで、学習に主体性が生まれて充実した分析ができます。全ての作品が自分の好きなもの、というのはいささか問題ですが、文学作品を選定するルールがあるため、ある程度ばらつきを持ってバランスよく学習することができます。
「日本語A」の作品はどうやって選べば良いのか?
日本語Aの作品を選ぶためのルールは、初めて学ぶ人にとっては非常に難しいと思います。そのため、最後に9月から学習がスタートできるように日本語Aの作品を選ぶ時のルールを確認しておきたいと思います。
・学習する作品は7作品(2024.08から9→7に変更)
そのうち、
日本語で原作が書かれた作品(最低3作品) "SSST-language"
翻訳作品(最低2作品) "translated"
を含む ※いずれもPRLにある作家から選択
・それぞれの探究領域で最低2つの作品を選ぶ
※探究領域とは?
「読者、作者、テクスト」"Readers, writers and texts"
「時間と空間」 "Time and space"
「テクスト間相互関連性:テクストをつなげる」
"Intertextuality / connecting texts"
・3つの文学形式、3つの時代(世紀)、最低2つの大陸に存在する3つの国または地域
※文学形式とは?
戯曲(drama)
詩(poetry)
散文:フィクション(prose:fiction)
散文:ノンフィクション(prose:non-fiction)
・同一作家は不可(他の言語Aの科目あるいは言語B)
学校によって授業の進め方は異なるようですが、SSSTの生徒が集まってそれぞれの言語で同じ翻訳作品を読んだり、学校の"English A"の作品を翻訳作品としてクラスの子たちと学ぶ時もあるそうです。
※"LanguageB"で学んでいるものと同じ作品は扱ってはいけません。
これらが作品選定をする時の決まりになります。おそらくこれだけの情報があれば、少しは安心して準備ができるのではないでしょうか。
セルフスタディで困っている生徒や保護者の方のお役に立てれば何よりです。今後もチューターとして学んだことや記録すべきことがあれば記事を書かせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。