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旅行記

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19〜20歳の頃の旅の記録です。
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#旅

三輪車とマラッカの夕日 - 3

三輪車とマラッカの夕日 - 3

ジョンカーストリートの熱に浮かされた夜が明け、僕は朝からマラッカの町を散策していた。どこへ行くでもなく町をぶらつき、適当に入った土産物店でポストカードを買う。昼には名物のニョニャラクサを食べた。思っていたよりも辛くて汗をかいた。歩き疲れたらゲストハウスに戻って、本を読みながらのんびりと過ごす。しばらくしてまたブラブラと町を歩く。僕はすっかりこの町を気に入っていた。

ただこの居心地の良いマラッカに

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三輪車とマラッカの夕日 - 2

三輪車とマラッカの夕日 - 2

オレンジ色の町。
マラッカの第一印象を尋ねられたら僕は真っ先にこう答える。

ゲストハウスから町の中心部オランダ広場へは徒歩で5分ほど。道中から鮮やかな色の建物がチラホラ見えていたけれど、何よりもオランダ広場から見渡す景色は圧巻だった。

時計台、教会、寺院や倉庫に至るまで視界に映る建物すべてが鮮やかなオレンジに塗られていて目がチカチカする。正確には「赤茶色」と言うべきなのかもしれないけれど、その

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旅行記のまえがき

旅行記のまえがき

18歳の頃。僕は典型的な「やりたいことが見つからない若者」だった。心からこれが好きだ、と言えるようなものも、熱中して打ち込めるようなものもなく、毎日ぼんやりと中途半端に生きていた。「いつか何かデカいことがしたい」という曖昧この上ない目標を胸にそっと秘めたまま、流されるように大学生活を過ごしていたら、あっという間に時が過ぎた。歳を一つ重ねて19歳になった。

他人とは違うと思われたいくせに、自分をさ

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三輪車とマラッカの夕日 - 1

三輪車とマラッカの夕日 - 1

深夜に日本を発った飛行機は、翌朝静かにクアラルンプール国際空港の滑走路へと降り立った。2015年8月21日。旅の始まりはマレーシアからだった。慣れない入国審査を終えて到着ロビーへ。僕はとりあえず落ち着ける場所を探した。初めての海外一人旅。緊張した心を静めるための時間が必要だった。しばらく歩いて空いているベンチを見つけ、腰を下ろし一息つく。

クアラルンプール国際空港は、しばらく歩き回っても全貌を把

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