通信社記者がツイッターで発信を始めて分かったこと
普段は主に新聞向けに記事を書いたり、編集したりしています。
ITやメディア分野を中心に取材した4年間のニューヨーク勤務を経て、この1年間、東京でメディア分野を集中的に取材し、連載企画や特集記事を書いてきました。
若い世代の紙媒体離れが進む中、普及が進んだのがSNSです。インタビュー取材でもメディアの先駆者の方々から、いろいろとお話を伺いました。ネットメディアの理解を深める必要性を感じ、勤め先から許可をもらって、ツイッターとnoteを使った発信を7月下旬に始めました。
プライベート限定だったSNS
これまでのSNS経験です。
2010年にフェイスブックとツイッターのアカウントを開設しました。フェイスブックは遊びに行った場所などプライベートな内容を中心に投稿してきました。ただ、閲覧範囲を信頼できる友だちや知人に限定にしていて、公開していません。
一方で、ツイッターはこれまで備忘録として使っていました。気になる記事や著名人のツイートをリツイートしていましたが、私的なツイートはしていませんでした。
ツイッターは一度に投稿できる字数が限られることもあって言葉足らずで、炎上問題がよく起きています。
通信社の配信記事は、さまざまな新聞やネットメディアで掲載されます。自分が書いた記事がツイッター上で拡散され、話題になったこともありました。
報道機関に所属する記者はわざわざリスクのあるSNSで情報を発信しなくてもいいのでは、とも思っていました。
ただ、この1年のメディア取材を通じて、こうした考えは変わってきました。
報道機関に所属するジャーナリストの個人発信の意義は?
情報があふれるインターネット時代、報道機関の丁寧な取材に基づく信頼できるニュースの価値や必要性は一段と高まっています。
同時に、誰もが情報を発信できる個の時代です。組織に所属しているかどうかにかかわらず、記事を書いた個人への関心も高まっています。
note利用者も新聞記事などを読んだ際、「書いた人はどんな人なんだろう」と思った経験はないでしょうか。私は、記事に独自性があると感じると、書いた記者を知りたくなります。その分野を深く取材している記者だと分かると、記事の信頼度が高まるような気がします。
例えば、米ニューヨーク・タイムズは、各記事の末尾で執筆者を紹介していて、記者のツイッターのアカウントも記載しています。
ジャーナリストが質の高い情報を発信することで、所属する報道機関のブランド価値の向上につながるとみられます。読者がツイートなどを通じて、そのジャーナリストに親しみを持てば、所属するメディアの愛読者になるかもしれません。ジャーナリストにとっても、読者の反応が直接分かることは勉強になりますし、やりがいも感じます。そもそも、社会的に影響力のある情報を発信するジャーナリストは、読者ともっと向き合う必要があります。もちろん「炎上」リスクは怖いのですが、今の時代、コントロールする力が求められている、という考え方もあります。
ツイートへの反応の違いに驚き
発信を始めて約1カ月。この間、分かったことがあります。既に利用されている方にとっては当たり前のことかもしれませんが、新鮮な驚きを忘れないうちに書き残しておきたいと思います。
ツイッターではニュースに関する投稿をさまざまな形で試しています。あらためて認識したことは、投稿によって反応がかなり違うことです。
ツイッターの利用者は、自分の投稿に関してインプレッション数(表示数)、エンゲージメント数(ユーザーがツイートに反応した合計回数)、エンゲージメント数の内訳(詳細のクリック数や新しいフォロワー数、プロフィールへのアクセス数)が分かるようになっています。
①マーケットニュース💰📈の需要大きく
この1カ月で最もインプレッション(表示数)が多かったのは、私の経験談を踏まえたこちらのツイートでした。20人超のフォロワーにもかかわらず、表示数は660件超でした(以下、「日経平均のツイート」)。数千人のフォロワーを持つ方から♡やリツイート(転載)をしていただいたことも影響しているとみられます。
早起きして、投資家らに注目されている米IT大手5社の2022年4〜6月期決算の発表内容をツイートしてみました。♡がつかなくても、米IT大手決算の表示数は相対的に高い水準でした。ただ、速報性は非常に大事で、GAFAMの中でややツイートのタイミングが遅れたアマゾン決算の表示数は、最も多かったメタの半分程度にとどまりました。マーケット関連のツイートは需要が高い一方で、多くのツイートがあり、競争の激しさを実感しました。
他にも、当然のことながら、消費者の関心の高い話題(米ディズニー関連やセリーナ・ウィリアムズ選手の引退、米マクドナルドがウクライナで営業再開)はインプレッション(表示数)が伸びました。
米IT大手について、決算の話題は人気があったのですが、テクニカルな話題(米IT企業の製品やサービス)は表示数が低調でした。ツイッターを始める前は、多くのツイッター利用者=テクノロジーに関心あり、との先入観がありました。
②写真や動画、インフォグラフィック付きのツイートは、エンゲージメント率が高かった
何となく予想はしていたのですが、顕著な差が確認できました。表示数が最多だった「日経平均のツイート」はエンゲージメント率が3%。これに対して、アメリカ野球殿堂博物館の写真付きの投稿は、インプレッション数(表示数)は「日経平均のツイート」の半分程度でしたが、エンゲージメント率は3倍超の11%でした。
シャンパンタワーの動画付きの投稿は、表示数が「日経平均のツイート」の3分の1程度にもかかわらず、エンゲージメント率は5倍超の16%に上りました。
動画はどこまで再生されていたのかも分かります。投稿した動画は約50秒と、それほど長いものではありませんでしたが、最後まで視聴していただけた割合は14%にとどまりました。TikTok(ティックトック)などの短尺動画が人気である理由も実感しました。
インフォグラフィックのリンク先を付けた投稿もエンゲージメント率は高く、IT大手決算の投稿は3倍超の11%でした。インフォグラフィックによる記事の新しい表現方法の可能性も感じました。
表示数最多の「日経平均のツイート」は、関連記事を添付していないテキストだけのツイートでしたが、経験の披露でした。ツイッター上で需要のあるコンテンツとは、独自性のあるコンテンツではないか、と考えています。
一方で、報道機関の記事リンクを付けて、ちょっとしたコメント(感想)を載せたツイートのエンゲージメント率は10%未満にとどまるものがほとんどでした。記事のリンクを付けても、その記事に飛ぶ割合は少ないことも分かりました。ツイッターは、画面を高速でスクロールしながら利用するのが主流で、そこから別のサイトにはよほどのことがなければ行かないようです。
③note記事の紹介ツイートはエンゲージメント率が一段と高かった
note記事を紹介するツイートは、エンゲージメント率がかなり高くなる可能性があることも分かりました。こちらのツイートのエンゲージメント率は42%にもなりました。
また、下記のツイートは「ローマの休日」のツイートほどではありませんでしたが、エンゲージメント率は14%に上りました。noteが物珍しいのか、それとも、筆者が自ら紹介しているからなのか分かりませんが、ツイッターとnoteの相性は良さそうです。
noteは♡が本当にうれしい。
最後に、noteを始めて感じたのは、読者の方から♡をいただくことの難しさです。友人限定のフェイスブックより「いいね」は桁違いに少ない。。。。アウェーの洗礼かもしれません。その分、一つ一つの♡が本当にうれしい。もっと精進しなければ、と記者歴20年超ながら思っています。
以上、私の1カ月の分析はいかがでしょうか。
まだまだフォロワー数が少なく、コメントも付いていないので、不十分だと思います。
これからも試行錯誤を続けながら、もっと質の高いツイートと記事を目指します。
今後ともよろしくお願いします🖋