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西尾維新「鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説」一言感想文
西尾維新(にしおいしん)版「吾輩は猫である」である。むろん、語り手は猫ではないのだが、それでも夏目漱石の代表作を彷彿とさせる流れ途切れることのない文体から、そう捉えてしまうのも無理はないだろう。多くの読者が数ページで挫折するのではないか。この語法のまま最後まで行くのかという恐怖に耐えられず、本を閉じた人は多いはずだ。それでも読み進めて行くと、今度は本を閉じることが難しくなってくる。絶えず流れ続ける言葉と思考の濁流の中で、息つく間もなく取り込まれていく。西尾維新のこれまでの作品に慣れている読者にとってはある程度免疫のある語法も、ここまで徹底されると抗えず、こちらの思考や意識をもって読むことを難しくし、ただ音楽のように、瞼のない耳のように、受容していくしかない。読み終えて呆然として表紙を見れば、ヒグチユウコの印象的なデザインが生き生きとしてくる。何が始まるのかもわからなかった最初とは違う。なんともとんでもない作品を、西尾維新は産み出したものだと思う。
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