見出し画像

雪国【読書のきろく】の書き初め2022

銀世界よりも、鮮やかな風景が印象的だった

いつか読みたいと思って買っていた『雪国』。
手を付けないまま積ん読リスト入りしていたのを、今朝、連れ出しました。行先は、福岡の厄除けで有名な若八幡宮。去年、後厄の祈願で参拝したので、今年はそのお礼のお参り。「奉賽」と呼ぶそうです。

去年はそんなに待たずにすんなり参拝できたので、今日もそのつもりで出かけました。『雪国』は、参拝前の待合室でちょっと読むくらいの軽い気持ちでバッグに入れたのです。でも、結果的に、持って行ってよかった。

提携駐車場に車を停めて、神社の前に着いてみたら、去年と雰囲気が違います。門の前に、多くの人が並んでいるではないですか。待つのも仕方ないと思いながら門の前を横切り、敷地に沿って角を曲がったら、そこで一瞬、言葉にならない声が胸の中に生まれました。

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

有名な『雪国』の冒頭の一文にも負けない、別世界がそこにありました。

行列の終わりが見えません。
並んだ人の顔を見ながら緩やかな坂を下り、その先の角を曲がってもまだ人の列が続きます。やっと最後尾が見えたのは、3つ目の角のそのまた先でした。行列の最後に並んでいたのは、僕より先輩世代のご夫婦。「3時間くらいかなぁ」と話しているのが聞こえました。

その後ろに並んで、「めっちゃ並んでる」と妻にLINEを送ったら、そのままスマホを触っているのはもったいないような気がしてきます。こんな時こそ、せっかく持ってきたあれを読まないと。
年末にnoteの連続更新をやめたタイミングで、読書もおあずけにしていたから、約一カ月ぶりの小説です。タイトルと著者と冒頭はこれまでに何度も目にしたけど、中身を読むのは初めての『雪国』。期待が高まります。

都会から雪国に訪れた男性と、そこの温泉街で暮らす女性との物語。
乱暴にざっくりとまとめると、そうなるのでしょうか。山に囲まれたその地は、普段の生活と比べたら別世界で、日常と違う時間が流れています。登場するのが男女なので、当然、男と女の関係が生じる。ある意味、お互いに求め合っていたもの。
ただ、巻末の解説でも触れられていたけど、男女間の性的な描写はありません。その代わり、会話、しぐさ、主人公の男性から見た相手の雰囲気やそこに対して抱く感情によって、二人の関係性が描かれています。
そこを際立たせるためになのか、山や野の自然の風景、町の家々の様子、人の表情が丁寧に描写されていて、とても色鮮やかに迫ってくる感じが印象的でした。雪は白いし、雪に覆われた景色は銀色で表現されるけど、モノトーンな雰囲気ではなく、自然も、人も、鮮やかで、その鮮やかさが逆に切なく感じる。そんなイメージが残っています。

世界的に認められている作品だから当然と言えばそれまでだけど、風景の描写も、登場人物の会話も、とっても魅力的。僕は特に、酔っぱらって乱れた会話が、臨場感があって好きでした。

一回では味わいきれないほど美しい。
人生で一度は読んでおきたい。できれば、寒い季節に。

毎週テーマを決めて共同運営を続ける日刊マガジン『書くンジャーズ』。
今週のテーマは、【 書き初め2022 】でした。

まさか読み終わるとは思わずに持ち出した小説を読み終えた今日の参拝。
結局、行列の最後尾に並んでから参拝が終わるまで、3時間以上かかりました。
でも、おかげで『雪国』を読み終えたし、本を読むことをおあずけにしてたからしばらくは書けないだろうと思っていた【読書のきろく】の書き初めができたのは、土曜日担当の吉村伊織(よしむらいおり)です。

今日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。

メンバーたちの書き初めは、こちらでチェックお忘れなくー!

それでは、今年の書くンジャーズも、どうぞよろしくお願いします。

読書のきろく 2022年1冊目
『雪国』
#川端康成
#新潮文庫

#読書のきろく2022

いいなと思ったら応援しよう!

吉村伊織
最後まで読んでいただきありがとうございます!少しでもお役に立てたら嬉しいです(^-^) いただいたサポートは、他の誰かのお役に立てるよう使わせていただきます。 P.S. 「♡」←スキは、noteユーザーじゃなくても押せますよ(^-^)

この記事が参加している募集