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エーミールと探偵たち【読書のきろく】
ドイツの作家、エーリヒ・ケストナー。河合隼雄先生の著書『子どもの本を読む』で、知りました。
その時に紹介されていた作品は、『飛ぶ教室』。子どもの姿、子どもが大人をどう見てどう接しようとしているのか、そして、喜びだけでなく哀しみもその世界に存在していることが描かれています。大人になって、子どもの本の面白さを教えてくれました。これをきっかけに、児童文学も好んで読むようになっています。
今回の『エーミールと探偵たち』は、買ったけど読みかけのまま止まっていた作品。・・・だったことを、『一億三千万人のための小説教室(高橋源一郎 著)』で思い出しました。小説が生まれる瞬間を解説するために紹介されていて、どこかで読んだような気がすると思ったらこれでした。訳者が別の人だから表現が違うけど、この本そのもの。
まえがきにご本人が登場するスタイルは、ケストナー流なのかもしれません。
去年、『飛ぶ教室』を読み直したのは、実は高橋源一郎さんがきっかけ。その名をつけたラジオ番組があるから。
長い前置きになりましたね。そんなこんなで、河合隼雄先生、高橋源一郎さん、とつながって読んだ、『エーミールと探偵たち』。
こんなに感動するなんて!とっても、とっても、おもしろい。
主人公のエーミールを中心に、ひょんなことから始まった少年たちの探偵活動。田舎の町で母と2人で暮らす少年が、おばあちゃんに会いに行く物語。だったはずが、ハラハラ、ドキドキの、大冒険になってしまいます。どんな事件で、どんな冒険をするのかは、読んでのお楽しみということで。
子どもの母に対する健気な気持ち、母の子を心配する気持ち、子ども同士の友情、そんな心のつながりが織り込まれています。語り合ううちに素直になってしまう様子や、つい強がってしまう仕草にも、心がほっこり。「そこにもちゃんと光を当ててくれたんだ」と、涙腺が崩壊しそうになる場面もありました。すごく印象に残っています。
ジェントルマンな新聞記者も、いい役割を演じています。
作者が、子どもに対して、とてもやさしいまなざしを注いでいるのが、作品全体から伝わってきました。大人に対して、子どものことをもっと信じてくれと訴えているかのようです。
物語が生まれる瞬間にも立ち会えて、感動と興奮を味わえる作品。紹介者の影響を受けていますが、小説の教科書としても読み込みたい作品です。素敵な作品を生み出してくれて、ありがとうと言いたい。
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読書のきろく 2021年13冊目
「エーミールと探偵たち」
#エーリヒ・ケストナー
#池田香代子 訳
#岩波少年文庫
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