坊っちゃん
まだ読んでなかった文学作品を読もうシリーズ。
「親譲りの無鉄砲で・・・」の書き出しは、テストでもおなじみですね。
作品名と著者は自信を持って答えられるけど、中身に足を踏み入れたことはありませんでした。
夏目漱石の作品では、『こゝろ』に続いて気になっていた『坊ちゃん』。どこか影がつきまといながら進んだ『こゝろ』とは対照的に、ずっと太陽の下にいて堂々と歩き続けたような感覚。
おもしろかったです。
まっすぐな性格で、常に前進。ぶつかったらその時に考える。その勢いは、気持ちよさも感じます。
堂々と振る舞いながら、心の中は、納得いかないことにグチだらけ。堂々と生きていきたいから、納得できないことにぶつかるのかもしれません。
グチの相手は、おもしろい登場人物たち。
知識や立場を羽織って、上から目線で接してくるイヤミな上司。
そこにゴマをすって調子よくついていく、手下みたいな存在。
悪いことはしていないのに、悲しい目に遭ってしまう、気弱なお人よし。
そんな周りの人たちに、心の中であだ名をつけて、バカにしたり怒ったり見直したり、時には実際に行動に移したり。
明治の作品だけど、そんな人が身近にいるのは、ずっと昔の時代から現代までそんなに変わらなくて、考えることもほとんど同じ。
だから楽しく読めるんだと思ったし、そこを見事につかまえる才能があったからこそ、歴史に名を残したんだと思いました。
一緒にいたときにはちょっとめんどくさいと感じていたお手伝いさんに対して、離れてみてそのありがたさが分かる。そして、大切に想う気持ちが強くなり、帰って真っ先に会いに行く坊ちゃんには、こちらも気持ちがやさしくなります。
やんちゃな若者をずっと見守ってくれる女性は、理想的な母親像を描いたものかもしれません。
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読書のきろく 2020年36冊目
「坊ちゃん」
#夏目漱石
#角川文庫