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風が強く吹いている【読書のきろく】

駅伝。
中学時代から高校1年まで、陸上部で長距離を走っていたので、思い入れのあるスポーツのひとつです。(ちなみに、小学生の頃と高校2年からは、サッカー部でした)

文庫本の表紙から、「駅伝」の物語であるのは分かりました。でも、どんな展開が待っているのか、読み進めて出会う驚きも楽しみたかったので、裏表紙のあらすじを見ずに読み始めました。箱根駅伝に挑む物語だったとは!

正月2日と3日の午前中は、テレビで箱根駅伝。親戚の家に正月のあいさつ回りに出かけるのは、どこかの区間のたすきリレーを見届けてから。そして、目的の家に着いたら、そこでも箱根駅伝の観戦中。続きを一緒に観ながら、正月のごあいさつ。毎年恒例の風景でした。

中学時代は、駅伝ではメンバー入りと補欠のギリギリライン。箱根駅伝は、遠い遠いところにある夢の舞台。1つ年上のキャプテンが、その舞台を走った時は、いつも以上に熱狂しながらテレビの前で声援を送っていました。

そんな思い出もあって、感動と興奮を味わいながら、すごく楽しめた小説でした。
箱根駅伝は、10人でたすきをつないで、東京ー箱根間を往復します。物語に登場するのは、部員10人で箱根駅伝に挑戦することになった男たち。その10人も、たまたまおんぼろアパートで一緒になった住人で、みんなが走ることが得意なわけではありません。周りがうらやむ才能を持つ主人公がいるけど、マンガおたくで運動音痴のメンバーもいます。個性豊かな仲間たちが、ケンカもしながら練習を重ね、少しずつ実力をつけていく。
まったくの初心者が、1年弱の練習でここまで走れるようになるわけないじゃないか・・・と、感じないわけじゃないけど、それは物語ですから。そんなことが気にならないくらい、引き込まれました。
走る時の身体の動きと心の動き、そして、箱根駅伝のコースや沿道を埋め尽くす観客の様子。ものすごく細かいところまで研究されたことが伝わってきます。物語の流れに、完全に身を委ねて読み進めることができました。650ページを超える長編だけど、ランナーズハイにでもなったかのように、あっという間。

箱根駅伝の本番が始まると、一人ひとりが走りながら、自分の心と向き合っています。駅伝は団体競技であり、独りの時間もたっぷりあります。その様子に伴走しながら、心の深い部分に寄り添うほど、感動も大きくなる。バスで移動しながらも読んだけど、涙がこぼれそうになって本を閉じることが何度かありました。

箱根駅伝を観る前に読んでおいたら、走りの駆け引きだけでなく、それぞれの選手が抱えている物語にも、想いを馳せたくなりそうです。

間もなく迎える2021年1月の箱根駅伝は、無観客開催が決まっているようです。公式サイトには、「応援したいから、応援にいかない。」の文字。小説でもたっぷり感動を味わえるように、その場に行けなくても感動は生まれるはず。また新しいドラマが生まれることでしょう。

読書のきろく 2020年71冊目
「風が強く吹いている」
#三浦しをん
#新潮文庫

#読書のきろく2020 #読書感想文

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吉村伊織
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