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書くインタビュー②【読書のきろく】

小説を書く、物語を作る、表現する、の奥深さが凝縮された一冊

小説家が、小説を書くことにどのように取り組んでいるか、すごく気になるところです。長い年月をかけて温めてきた構想を文章にするものなのか、突然ひらめいて書けるものなのか、書きながら(あるいは、書き終えてからも)気になってしまうことはあるのか、などなど。
10人いたら10通りの回答がありそうで、教えてもらえるならぜひともお願いしたい。
そんな願望を、メールインタビューの形式で叶えてくれるのが、佐藤正午さんの『書くインタビュー』シリーズ。全3巻のうち、2作目を読みました。

この②は、おもに『鳩の撃退法』を裏側を追ったインタビューになっています。
※『鳩の撃退法』の読書のきろくはこちら

『鳩の撃退法』が執筆される直前から、執筆期間を経て、単行本出版後まで。執筆前は2週間に一度くらいのペースで往復していたメールの往復は、執筆中は3年と1ヶ月間休止されます。月刊誌への連載期間です。

小説の月刊誌。まだ手に取ったことはないのですが、その連載から単行本になるまでの流れは、個人的に興味深い話でした。連載原稿をただ重ねて本が出来上がり、ではなく、改めて読み直して手を加えて作り上げられていくそうです。連載の原稿も、出版に至るまでに、作家の見直しが何度も重ねられている。当然と言えば当然なんでしょうけど、読点ひとつとっても、つけたりはずしたりを繰り返して仕上げられています。つけて、はずして、またつけたら、見た目は最初と変わらないものだとしても、深みが違う。その作業に向き合い続ける様子が、インタビューの受け答えから浮かび上がってきます。そして、書き続けること、考え続けることの大切さを教えてくれます。

印象的だった部分をいくつか引用します。

考えはじめたらキリがないことを考えること、それも小説を書く手間のひとつかもしれません。というより、それが小説を書く手間かもしれません。
>p.38より
でもいつかは、考えることに「切り」をつけなければなりませんね。切って、終わりにしなければ、文章は1行も書けません。そうですよね?問題はその切り方です。切り方の、正しさ、正解ということです。いったいどれだけ時間をかけて考えれば、正解をつかむことができるのだろう?重要な問題です。
(中略)
おそらく消えません。これが正解、という切り方はできない。
>p.39より

これらに続いて、これがベストだと自分で思える選択をする際に頼りになるのは自分の勘で、勘を働かせるには負け続けることが必要だと語られます。

文章を書く時の負けの意味は、キリがないことを考え続ける、考えても正解をつかめないことを知っていながら考え続ける、それにまるごとかける時間のことです。いったん書いたものを読み直して考え直す、考え直して書き直す、また読み直して考え直す、でも正解にはたどり着けない、でもそれをやらないことには先へすすめない、そういう厄介な手間に耐える勇気がなければどんな文章も書けない、そのような結論になります。ものものしいです。
>p.41より

プロの小説家でも、そこまで向き合い続けているものなのに、僕はまだまだ甘いなと思いました。同時に、そこまでされているから、読み手の心をつかむことに納得しました。そして、そんなことまで語ってくれるこの本がありがたいな、と思いました。

『書くインタビュー①』と比べると、①の時はインタビュアーの質問に対するツッコミが多かった印象があるけど、そのツンツンした雰囲気が薄れて、②ではよりスムーズに内容の深掘りをしてくれたように感じます。
その違いを味わうのも、おもしろかったです。

読書のきろく 2021年35冊目
『書くインタビュー②』
#佐藤正午
#小学館文庫

#読書のきろく2021

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吉村伊織
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