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【読書のきろく】生きるとは、自分の物語をつくること

一度読んで、読み返して、これからも読み返したいと思う一冊。

■生きるとは、自分の物事をつくること(新潮文庫)
 小川洋子・河合隼雄 著 

作家の小川氏と、臨床心理学者である河合先生の対談本です。

ページ数は151ページで、文字が比較的大きめ。
なので、さらっと読めてしまう本。だけど、ゆっくりじっくり味わいたい。
ぽっかり時間があいてしまったとき、その時間を有効に使うために選びたい一冊です。

タイトルにあるように、「物語」が僕たちが生きる上でどんな意味を持っているのかを考えさせてくれます。
僕たちが避けられない一番大きな悩みごとになりえる「死」に触れながら、物語が持つ意味を解説された部分があるので、引用しておきます。

いくら自然科学が発達して、人間の死について論理的な説明ができるようになったとしても、私の死、私の親しい人の死、については何の解決にもならない。「なぜ死んだのか」と問われ、「出血多量です」と答えても無意味なのである。その恐怖や悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる。死に続く生、無の中の有を思い描くこと、つまり物語ることによってようやく、死の存在と折り合いをつけられる。

■2011年 新潮文庫
 小川洋子・河合隼雄 著
 『生きるとは、自分の物語をつくること』p.125より引用

言われてみると、『そりゃそうだ』と感じてしまうことかもしれません。

でも、とても深いことだし、そこに寄り添い続けることの大切さを教えてくれます。

僕はいつの頃からか、本を読む時に『あとがき』から読むことが多くなりました。本の中の大切な部分が、そこに凝縮されているように感じるからです。

この本も『あとがき』から読み、先ほどの引用部分はあとがきに書かれていました。
『二人のルート -少し長すぎるあとがき 小川洋子』
と書かれた、不思議なあとがきです。

なんとこの本は、映画にもなった小川さんの小説「博士の愛した数式」がきっかけで二人の対談が生まれ、その後2回目の対談をし、次はこんなテーマで話しましょう・・と語ったあとに河合先生が亡くなり、そして出版されたもの。
”対談その1”が第一部、”対談その2”が第二部になり、叶わなかった”対談その3”が『少し長すぎるあとがき』になった、という物語があるのです。

その物語が胸にぐっときたこともあり、僕にはとても印象深い一冊になりました。

また、カウンセラーとして人それぞれの物語に寄り添う姿勢も描かれているので、道しるべとして何度も読み返したいと思っています。


このnoteを使って、「受け取り方の違いを学ぶ事例集」を書きためていますが、そこにもそれぞれの物語があります。

振り返りながら書き、書いたものを振り返って、僕自身もたくさんの物語から学び続けたいと思います。


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