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正の強化を使った教育
Karen Pryor Academy ライブエピソード#4のゲストスピーカー、スーザン・フリードマン博士のお話「正の強化をどのように子供に使っていけばいいか」をまとめたものです。
スーザン・G・フリードマン博士は、現在、ユタ州立大学心理学科で教職に就いています。25年以上にわたり行動学者として活躍してきた彼女の専門分野は、学習と行動であり、特に子供の行動障害の研究に力を入れています。人間の学習者に効果的な応用行動分析学の分野における人道的な哲学と科学的に健全な教育技術を、動物に適用する取り組みの先駆者でもあります。
負の強化から正の強化へ
コロナ下で行動変容が起こっています。感染という恐怖から逃れるために手を洗う、マスクをする、距離を取る、といった行動が増えています。つまり、これは負の強化です。
避けるという負の強化子から正の強化子に移行する必要があります。行動が減るのではなく持続すること目指す必要があります。そのためには、全体像でみるのではなく、小さく分けられた行動に焦点を当て、迅速に短期的な強化子を見つけ実行することが先決となります。このコロナ下では、手を洗う、外出自粛、テイクアウトを利用するなどの行動です。
行動の仕組みを教える
親が子供の教育に携わる時に注意を払う事は、規則や権限を根底に教えるのではなく、行動がどうして起こるか、その仕組みを教えることです。つまり、合理的にどうやって問題を解決するかを説明するべきです。
技術的には、ブレインストームの手法や社会的強化の利用等を教えていきます。そして行動を分析する力も養っていくべきでしょう。これは年齢にかかわらず、たとえ幼児でも教えていくべきことです。
社会的強化子
子供たちに対しては、社会的強化も有効です。みんなが手を洗うから自分も洗う、のように社会の風習が強化子になり行動を強化します。
社会的強化子は一般的に子供にとってとても強力ではありますが、個々の子供をみてみると、必ずしも有効とは限りません。
概念としては確かに有効ですが、例えば、3歳の子供には笑顔と褒め言葉が強化子になっても14歳の子に同じものが使える訳ではありません。有能な教師は、一般的なガイドラインに沿いつつも、個々のニーズに合わせて必要な強化子を選択しています。
ラベルを剥がして事実を知る
コロナ下で授業がオンラインになり、やる気を無くしている学生をどのようにサポートできるがという質問にフリードマン博士は、まずはラベルを剥がすことを勧めています。ラベルを貼ったままでは事実も解決策も見えてこないからです。
「やる気をなくしている」は一つのラベルであって、実際に起こっていることは、強化子がほとんど管理できない状態か手に入れることができない訳で、行動を増やすことができない。ならば、強化子を探すところから始めるべきでしょう。
通常ならは強化子は至る所にあったでしょう。でも今コロナ下では隠れてしまっているので、積極的に探さなくてはなりません。もしかしたら、今みつからなくても近未来に存在するものかもしれません。たった今から、強化子を見るつける努力をしましょう。
本物(Authenticity)であること
強化子を使って行動を導こうとしても、行動を操作しようとしていると指摘された場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
そもそも操作されていると感じるのは、強化子が本物でないからでしょう。都合よく用意された、いかにもそれが大切かのように作られた強化子を与えられても、結果的に行動は強化されません。強化子は信憑性がとても大切になってきます。
評価ではなく知識を
フィードバックの内容も行動を強化していくのとても大切なものです。短絡的に良かった、悪かったの評価をフィードバックとして使いがちですが、なにがよかったのか、その内容にふれて言及する必要があります。
例えば、授業の終わりに、学生が教授に「今日の講義は素晴らしかったです。ありがとうございました。」と言って立ち去ろうとした時、教授は「何が素晴らしかったのですが?それを聞かないと、次回の講義にその素晴らしい内容を反映できません」と返しました、お分かりのように、評価を与えただけでは、行動を繰り返すことはないのです。行動を強化したいなら、必ず評価と一緒にどうしてその評価をつけたのかの情報(知識)も一緒に提示しなくてはなりません。
科学は説明をする道具
ここまで、セミナーでのフリードマン博士の発言を書き記してきましたが、大事なことは、ラベルを剥がして事実を観察し、信憑性のある強化子で行動を増やしていくこと。そしてその評価を説明し情報としてフィードバックすること。そして科学はその一連の作業を裏付ける道具なのです。