【詩】ひそやかな探究
わたしの裡に入り
灯りを消して
物質的な恍惚と喧騒から
静かに離脱する
心はしんと静まり
ただわたしと古い隠者との
対話がはじまる
隠者のことばは
とても小さな声で語られるため
深く潜心して
耳をそば立てていないと
沈黙にさえかき消されてしまう
隠者は暗闇のことばと
恋愛のことばとを
分け隔てなく扱った
ふたつのまったくかけ離れた
領域のことばを
一方は死に限りなく近く
もう一方は生命の燃え立つところ
相反する世界に属することばを
ひとつの事象の両面であるかのように
やかましい音や
目の粗いことばでは
決して捕まえることのできない
ある種の事柄について
秘密の場所で
秘密のやり方で
語りかけるのだった
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