【詩的散文】魂のインフレーション
圧倒するような光と溶け合い
恍惚とした全能感や
自尊心をくすぐる
甘い囁きが聴こえたとしたら
それは魔境かもしれない
瞑想においてわたしたちは
何を行っているのだろう
それはオートマティックな
心の働きを意識的に
止滅させること
「注意の焦点を変えること」
と言い換えることもできる
するとわたしたちの無意識は
イメージを活性化させる
心の奥に眠っていた
原型的なイメージは
生命力を吹き込まれて
様々の感情や
ヴィジョンを纏って顕れる
魂のインフレーション
これらのヴィジョンは力を得て
低位の自我を操ろうとする
わたしたちは
自らの意識下に眠っていた
イメージに憑依される
魔境とは
不快な妄想とは限らない
魔の顔をしたものたちは
それとわかりやすいのだが
聖人の顔をしたものが
甘言を弄することもある
悟りを得た
偉大なものと繋がった
特別な力を得た
そのような感覚はすでに
危険な領域に足を踏み入れている
諍いや迫害
犯罪など負の人類史は
生命力を宿した原型や
コンプレックスが関与している
生ける神の手に堕ちることは
恐ろしいことなのだ
「瞑想の途中で
仏陀や如来が出てきたら
イメージの槍で突き刺せ」
と先達は言った
なかなかに激しい言葉だが
魔境の中にいる者が
それと気付くのは容易ではない
一足飛びに悟りを得ようとせず
自らの状態を俯瞰すること
気の滞りを流し
日頃の浄化を心がけ
下丹田を意識すること
それでもなお
精神や体調に異変を感じたら
瞑想から離れる
という決断もありうる
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