業務理解をより深める:観察、体験によるアプローチ
この記事は freee Designers Advent Calendar の14日目です。
みなさん、こんにちは
freee株式会社でデザイナーをしているyoshikiです。
今回は、ユーザーの業務をより深く理解し、価値を最大化するためのアプローチについて語りたいと思います。
業務アプリケーションを作っている僕たちにとって、ユーザーの業務を理解することは非常に重要なプロセスであり、その解像度が高いほど、提供するサービスの品質も向上すると思います。
通常、僕たちはユーザーインタビューやアンケート調査を通して理解を深める活動をしていますが、それだけでは
「本当に思ってることを聞き出すのが難しい」
「結構なコストや時間がかかる」
「とにかくいっぱいやったはいいものの、有用なインサイトが引き出せたかわからない」
などの課題感があるな〜と思っていました。そこで、私が最近試し始めた業務理解の新たなアプローチについてシェアしたいと思います。
自分で業務を体験する
僕が普段開発しているfreee人事労務というプロダクトでは、勤怠管理や給与計算といった業務を扱います。しかし一方で、自分自身これらの業務自体を経験したことはありませんでした。
そこで、僕は実際に労務担当者になり、その業務をやってみることにしました。
具体的には最近freeeが立ち上げた透明書店という書店の労務担当者として業務をやってみることをしました。
ちょうどオープンと同時に店長さんを雇うことになっていたので、店長さんの入社手続き、勤怠管理、給与計算などをまるっとやることに。
この体験型のアプローチは、大切な情報を発見するための新たな機会を提供します。自分自身がユーザーになり、直面している課題や問題を体験することで、より深い理解を得ることができます。
実際の業務での気づき
実際に業務を担当しながら、僕はいくつかの学びを得ることができました。今回はその中から特に印象的だった二つをピックアップします。
1. そもそも何をやればいいかがわからない
僕は普段、労務ソフトを作っているので普通の人よりは知識がある方だとは思うのですが、実際にやってみると「まず何から始めればいいかわからない…」ということに気づきました。
スプシでタスクリストを作り、やらないといけないことを列挙していったのですが、入社時にやらないといけないことは大小含めて50個ほどあって「これは本当にやらないといけないことなのか」「いつまでにやればいいのか」「先にやっておかないといけないことはないか」など考えることがありすぎてこれ自体がとても大変な作業だということに気づきました。
2. 勤怠管理の複雑さ
今回はfreee勤怠管理plusというソフトで店長さんに打刻をしてもらって勤怠管理をしていく方針をとっていました。
が、お休みのはずなところに打刻が入ってたり、逆に出勤日のはずなところに打刻が入っていなかったりとうまく管理ができてない状態でした…(後々ちゃんと調整しました)
当初はソフトに入力して行ってもらうだけだから簡単でしょと思っていたのですが、実際は色々な業務がある中で打刻するという作業が漏れがちなことだったり、ちゃんと労務・従業員・経営者間で労働時間についての認識を合わせておかないと大変なことになることを学ぶことができました。
労務体験記の内容は下記の透明書店でのnoteで詳しく書かれているのでよければご覧ください。
こうした経験から実際に質問に答えていくことで雇用時に必要なやることリストが作れるサービスが生まれたりもしました。
社内のユーザーを巻き込み業務理解を深める
社外の方にインタビューなどを行うには、リクルーティング、謝礼の準備、日程調整などなど結構なコストと時間をかける必要があるので、なかなかライトに話を聞くことが難しかったりします。
そこで僕がやったのが、社内のユーザーを巻き込みながら開発することです。
具体的には、私が最近関わった「情報システム部向けの新機能開発」を例に挙げると、社内の情報システム部に協力してもらいながら以下のようなアプローチを試してみました。
1. Slackチャンネルでカジュアルなコミュニケーションを図る:ユーザーとの距離を縮め、リアルタイムに情報交換を行うための場を設ける
2. 実際の業務を行っている現場に出向き、観察する:実際の業務を直接観察し、課題や改善点を発見する
3. 雑プロトタイプを素早く作り、その価値を検証する:初期段階でユーザーに関わってもらい、迅速なフィードバックと修正をする
実際の業務の観察
"百聞は一見に如かず"とはよく言ったもので、直接現場に足を運び、業務を肌で感じることは非常に有用です。
オンラインインタビューだけではわからないユーザーの実際の業務をその場で見せてもらうことでより質の高い一次情報を得ることができます。
この観察を通じて、僕たちは実際の業務の流れや課題を正確に理解することができました。
さらに、観察結果をまとめたドキュメントをそのまま共有し、コメントをもらったりもしていて、これも社内だからこその特権だと思います。
プロトタイプでの価値検証
観察した結果をもとに作成したプロトタイプを通じて、そのソリューションの価値を検証しました。(観察から3日後には検証)
この時も、私たちは現場に足を運び、実際の業務の流れに合わせてプロトタイプの説明を行うことで、よりリアルな体験を感じてもらうことができました。
これにより、僕たちはユーザーの即時の反応を見ることができ、ソリューションの有効性を確認することができました。
このプロジェクトは現在進行形で開発が進んでいます!
さいごに
これらのアプローチを活用することで、僕たちは業務理解を深め、自信を持ってソリューションの作成と実装を進めていくことができています。そして、これがより価値のあるサービスをつくる上でとても有用だと思います。
もちろん今述べたアプローチが全てのケースにおいて有用ではないかもですが、こんなやり方もあるよ〜ぐらいの気持ちで捉えてもらえればなと思います。
僕はこれらのアプローチを通して、グッと業務理解が深まり、自信を持ってソリューションの検討やデザインをできるようになりました。
いいサービスを作っていく上で、いかに質の高い一次情報に触れられるかがすごく大事なことであると学びました。これからも意識していきたいです!
明日は、フィリピン赴任中のタコスパイセンのshotaさんの記事です。フィリピンに行ってるはずなのに結構な頻度で日本に帰ってくるかわいい先輩です!明日もお楽しみに!