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短編小説 ◇◇◇ 市の中心にある城址に作られた公園は全国でも名高い桜の名所になっていて、シーズンになれば外周を囲むように巡らされたお堀の傍に、春を思わせる色遣いのぼんぼりが立ち並ぶ。 修介が公園に足を伸ばしたその日は、薄曇りの空に向かって伸び広がるソメイヨシノの枝を、充血したように膨らんだ蕾が紅色の点描となって飾り立てていた。朝方に降っていた雨のせいで空気も冷たく、明らかに花見を楽しむにはまだ早いはずなのに、堀割の南側に掛けられた古びた石橋の欄干に両肘をつき、流れて