初めて作家を見た日【エッセイ】
村上春樹『風の歌を聴け』の中で、主人公に鼠が、なぜ本を読むのか、と訊ねる場面がある。この後に続く会話は印象的だ。「生きてる作家の本は読まない?」と訊ねる鼠に、主人公はこう答えるのだ。
「生きてる作家になんてなんの価値もないよ。」
私は十八歳のときに村上春樹の小説に出会うが、それまで、作家の価値について考えたこともなければ、作家を生きているか死んでいるかで分類したこともなかった。スタイリッシュな作風の『風の歌を聴け』を読み進めていく中で、当時の私が最初に衝撃を受けたのは、