019『言花‐コトバナ‐』ショートショート(3786文字)
数日前、店で買い物をしていった資産家が死んだ。どうやら殺されたらしい。聞き込み捜査にやって来た刑事からそんな話を聞いた店主は、少なからずショックを受けていた。
「数日前、宝蔵寺さんが買い物に訪れたとき、とくに変わった様子はなかったですか?」
若い刑事――堂島善司巡査の質問に、店主は「はい」と答える。主は妙齢の美しい女性で、名前を石動綺佳といった。
「先代の頃からのお得意様で、やさしいおじ様でした。なのに、そんなことになってしまうなんて……」
「最後に買っていったものは?」