きしよしき

ショートショート100作挑戦中! (目標を下方修正しました)

きしよしき

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最近の記事

021『人魚の断末魔』ショートショート(1,371文字)

 海賊たちは人魚を捕まえたので、食べることにした。人魚の肉には不老不死をもたらす効能があるという。みんなで分け合い、不死の海賊団になるのだ。 「美人なのに、もったいねぇ」 「美人つったって、半分魚だろう」  台の上に拘束された人魚は、確かに上半身が人間、下半身が魚という言い伝え通りの姿をしていた。自分を囲む海賊たちに向かって何かを喚いているが、人間の言葉ではないのでなんと言っているのか分からない。けれどその顔には、はっきりと敵意が現れていた。 「しめるのは俺様にまかせろ」  

    • 020『ガンタイプライター』ショートショート(532文字)

       あやしげなリサイクルショップで買ったタイプライター風キーボード。これはやばい。打鍵音がめちゃくちゃうるさい。打つたびに銃撃みたいな音がするんだ。タイピングしていると、まるで戦場にでもいるみたいな気分になってくる。  けれどそれが俺には合っているのか、ほどよい緊張感をもって作業をすることができていた。少なくとも、途中で眠くなるようなことはない。  さらに、このキーボードで執筆した記事は閲覧数も多くて収入も増えた。書き方や記事の題材を変えたつもりはないのに、これはどうしたことだ

      • ショートショート リンク集

        もっと皆様の目に止まってもらえるように、2024年から公開している ショートショートのリンク集を作ってみました。 下にいくほど古いものになります。 021『人魚の断末魔』 020『ガンタイプライター』 019『言花‐コトバナ‐』 018『炎上と野次馬』 017『ケムリパフォーマー』 016『はなでんわ』 015『郵袋類』 014『きれいな外来種』 013『かべのしみ』 012『雌雄異株』

        • 019『言花‐コトバナ‐』ショートショート(3786文字)

           数日前、店で買い物をしていった資産家が死んだ。どうやら殺されたらしい。聞き込み捜査にやって来た刑事からそんな話を聞いた店主は、少なからずショックを受けていた。 「数日前、宝蔵寺さんが買い物に訪れたとき、とくに変わった様子はなかったですか?」  若い刑事――堂島善司巡査の質問に、店主は「はい」と答える。主は妙齢の美しい女性で、名前を石動綺佳といった。 「先代の頃からのお得意様で、やさしいおじ様でした。なのに、そんなことになってしまうなんて……」 「最後に買っていったものは?」

          018『炎上と野次馬』ショートショート(383文字)

           休憩中。氷室がスマホを覗き込むと、炎上はまだ収まっていなかった。炎上しているのは彼ではない。とある配信者だ。不必要な発言をしたせいで、昨日の夜から誹謗中傷や、反対に擁護するコメントが殺到し、SNSのアカウントは真っ赤に燃え上がっている。  目で追いながら、氷室はニヤニヤしていた。しかし、この騒ぎに彼は何一つ関わっていない。コメントもしないし、拡散すらしていない。ただ眺めてほくそ笑み、眺めて楽しんでいるだけだった。しいていえば、炎上している配信者を好きではないというだけ。  

          018『炎上と野次馬』ショートショート(383文字)

          017『ケムリパフォーマー』ショートショート(525文字)

           不思議な光景だった。その人が手を動かすと、空気中にたゆたっていたケムリが、自然ではありえない、まるで命を吹き込まれたかのようにうごめきだし、みるみるうちに犬の形に変わった。 「わあ、すごい!」  僕といっしょに見ていた娘が声を上げる。意外に大きな声だったので、私はびっくりしてしまった。 「ねぇねぇ、ネコちゃんもできる?」 「もちろんだよ」  パフォーマーはニッコリと、人あたりの良い笑顔を浮かべて、矢継ぎ早に繰り出される娘のリクエストに応えていく。ネコ、イルカ、ペンギン、ソフ

          017『ケムリパフォーマー』ショートショート(525文字)

          016『はなでんわ』ショートショート(392文字)

           祖母のスマホが鳴っていた。しばらく放っておいたが、祖母は困ったように、「ねぇ、どこを押すんだっけ?」と聞いてきた。僕はヤレヤレと、スピーカー通話にしてテーブルの上に置いてあげた。  電話の相手は若い女性だった。今年の春、祖母から花の種を貰っていた人だ。彼女はさめざめと泣きながら、「お父さんと話せました。本当にありがとうございます」とお礼を言っていた。 「そう。それはよかったわ」と、祖母も涙目になりながら笑った  祖母が育てているのは、オハナシバナという花だ。縁側から見える庭

          016『はなでんわ』ショートショート(392文字)

          015『郵袋類』ショートショート(393文字)

           呼び鈴に応じて玄関を開けると、一匹のカンガルーが佇んでいた。彼(彼女?)は郵便局員の帽子とベストを着用しており、どこか使命感にあふれた、キリリとした表情をしていた。 「え、っと……」  呆気にとられていると、カンガルーはお腹の袋からゴソゴソと封筒を取り出し、こちらに差し出してくる。「どうも」と反射的に受け取ると、受領のサインを求められた。手渡されたペンで書くが、緊張からかぐにゃぐにゃになってしまう。受け取ったカンガルーは丁寧に帽子を取ってお辞儀をし、ぴょんぴょんと、ちょっと

          015『郵袋類』ショートショート(393文字)

          014『きれいな外来種』ショートショート(533文字)

           通りかかった土手に、きれいな花が咲いていた。赤ちゃんが一生懸命ひらいたお手々みたいな、小さくてかわいい花だった。ふと思い立って一輪摘んで、食卓に飾った。それだけで心が華やぎ、日々のストレスや疲労が少し和らいだ気になった。  けれどその花はすぐに枯れてしまった。  それが悲しくて、事あるごとに花を摘んでくるようになった。  会社で嫌なことがあったり、人間関係で面倒なことがあったり、支えが欲しくなると花を求めた。あの土手にはいつも色とりどりの花が咲いていて、元気がほしいときは

          014『きれいな外来種』ショートショート(533文字)

          013『かべのしみ』ショートショート(1495文字)

           春から住んでいるアパートの壁に、大きなシミがあることに気づいた。内見のときには気づかなかったものだ。まあ家賃も安いのでそんなこともあるだろうと気にしないようにしていたが、日に日にシミが大きくなっていき、そして人の形になっていくのを見ては黙ってられん。僕は不動産屋の担当者に連絡し、問い詰めてみた。 「実は……」  彼は歯切れ悪く白状した。思った通り、ここは事故物件だったのだ。 「とにかく一度、見に来てください」  そう呼びつけると、担当はすぐにやって来た。まだ二十代そこそこの

          013『かべのしみ』ショートショート(1495文字)

          012『雌雄異株』ショートショート(393文字)

           新たに発見されたその花は、ヤマコウバシのように単為生殖で種を作る。数は決まってひとつだけ。その後枯れてしまうので、さながら転生を繰り返しているようだった。そして、どんなに探しても雌花しか見つけることができなかった。  もうひとつの特徴として、月下美人のように夜にのみ大きな花を咲かせた。そして研究者たちは、その花が宇宙からのシグナルを受信していることを突き止めた。  研究は進み、花がシグナルを受信したときに細胞内で生成される化学物質を電気信号に変換し、スピーカーを通して音声に

          012『雌雄異株』ショートショート(393文字)

          011『迷途町案内』ショートショート(2417文字)

           迷途町駅前には、案内屋の屋台が軒を連ねていた。取引先へ行くにはここで「案内」を買う必要があるが、さて、どれにしたものか。  案内人、案内小町、案内犬、案内猫。生き物もいれば、案内提灯、案内杖、案内手毬など道具もある。さすが不思議の町だ。  しかし一番興味が惹かれたのは、案内鯛焼という暖簾だった。鯛焼って、あのタイヤキだよな。少し離れて観察していると、常連と思しき男がひとつ買っていった。正真正銘、アンコの詰まったあのタイヤキだ。それに糸が括り付けられていて、なんと、宙を泳いで

          011『迷途町案内』ショートショート(2417文字)

          2月の所感

          今月投稿したショートショートまとめ えッ、少ない!!!!!!!!! 年内にショートショート100作を目標として掲げている身ですが、早くも2月でやっちまいましたね。 1年は約52週間。つまり1週間に2作書けば届く計算でしたが、ええと……今……9週目……18作できてないとおかしいねぇ……。 でも待ってください。今月はいろいろあったんです。 雪が降ったり、家族が急に入院したり、仕事でいろいろあったり。 そしてなにより、崩壊スターレイルを始めちゃったり……。 家族は無事に退院し

          010『ドレスさんの見繕い』ショートショート(2858文字)

           午前零時になっても、商店街の表通りには酔っ払いや学生の集まりなどまばらに人の往来があった。そこから外れて裏道に入れば、シンと静まり返った純粋な真夜中が現れる。  噂では最近、この裏道に「ドレスさん」が出たという。  その怪異に会うために、私は意を決して奥へ進んだ。  ほどなくして、行き止まりに突き当たる。途中の曲がり道まで戻ろうと振り返ると、反射的に「ひっ」と喉を鳴らしてしまった。  今の今までなかったはずだ。道の真ん中に置かれていたのは、私の身長よりずっと高い、漆黒のクロ

          010『ドレスさんの見繕い』ショートショート(2858文字)

          009『天使の羽根ペン』ショートショート(402文字)

           ふらりと立ち寄った骨董屋で、とてもキレイな純白の羽根ペンを見つけた。店主に聞けば、天使が落とした羽根から作られたもので、これを使って願い事を書くと必ず叶うという。  さすがにそれは眉唾だろうが、物自体は見逃せない。多少値は張ったが、私はその場で購入を決めた。  家に帰ると、檻の中の天使が虚ろな目で私を見た。彼女のボロボロの翼は真っ黒に汚れていて、頭の上の輪もヘドロのような汚れにまみれている。いわゆる堕天使だ。 「こんな檻に閉じ込めてすまない」  堕天使は時として人間を害す

          009『天使の羽根ペン』ショートショート(402文字)

          1月の所感

          進捗 現在、SSは8作目まで投稿完了しています。 12ヶ月で100作を達成するには、ざっくりと月に8.33作。ちょっと足りないけどまぁまぁ……? もっとざっくりすると、1年間は約52週なので1週間に2作書けば届く計算です。今5週目だけどね……。 変わってきた…かも? 具体的な数字を設定して立てた目標ですが、実は、こういう目標を立てるとか、計画を立てるということが大の苦手です。嫌いといってもいい。 でも不思議なことに、小説のことを考える時間が目に見えて増えました。 そも