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今日は農業を学んだ日

今日は一日、農業を学ぶ。14時からは、美幌町の一戸さんが主催する農業研修。夕方18時からは、北海道中小企業家同友会オホーツク支部主催の農業水産部うまいるオホーツクオープン新年例会に参加する。

盛り沢山。

まずは、14時からの農業研修。島本微生物工業の研究農場長の黒木さんがゲストとしていらしていた。

島本微生物工業さんは、微生物を用いて土作りに取り組む滋賀県の企業だ。その考えのコアは土を十分な腐食があって、ふかふかな状態を保つことにありそうだ。

多様な有機物を使いやすい状態、十分に発酵させた堆肥の状態で畑に投入することにより、それを餌とすることで土壌の微生物が多様化し、腐食が増えていく。さらに多様な微生物叢は植物の病原菌の過剰な増殖を抑えることにもつながるという。

たしかに、さまざまな菌が競合している状態だったら作物の病原菌だけが圧倒的に増えていくのは難しそうだ。その考え方でいくと、畑に投入するものが成分が決まった化成肥料と作物の残渣だけというのを繰り返していると、その作物に悪影響を及ぼす微生物だけが増えていきそうだ。

微生物の多様化、腐食の増加に向けて、島本微生物工業さんがおすすめしているのは木質を発酵させた堆肥とのこと。堆肥を作るための微生物資材も販売している。すごく興味はあるけれど、ぼくらの現在の装備だとすぐ実行するのは難しそうだ。ただ、黒木さんに相談したところ、緑肥を混ぜた輪作体系でも微生物の多様化に効果はありそうだった。ぼくらの場合はまずは緑肥かなぁ。

「ふむふむ、やっぱり土作りかぁ」
そう思いながら、車で次の会場がある北見に移動する。ちょっと遅刻で新年例会へ。

こちらでは、バイオシードテクノロジーズの広瀬さんとうけがわファーム DEN-ENの請川さんのお話だ。

まずは広瀬さん。広瀬さんの話も土についてだった。興味深いトピックは2つ。1つは土の酸化還元電位、もう1つは汚泥肥料だ。

酸化還元電位(Eh)は土の状態の指標として重要視されるようになってきているらしい。具体的には酸化還元電位が200mV以下、つまりFeが三価ではなく二価で存在する状態だと、作物に病気をもたらす菌の生育が鈍るそうだ。

酸素に触れない水田作では酸化還元電位は自ずと低くなるが、そうではない畑では高くなるのが通常とのこと。ただ、作物の根の近傍、根圏の酸化還元電位は低くすることが可能で、それを実現するのが根が発する根酸。その根酸を多くするために発根を良くする、おすすめ資材がビール酵母資材だ、という話だった。

ビール酵母資材を植物にかけると、ビール酵母由来の細胞壁が植物にとって真菌に感染したのと同様のストレス応答を促し、それが発根につながるらしい。その他にもアイアンガードという資材も紹介してくれた。

広瀬さんの話も、黒木さんの話と同様で最終的には土壌微生物の話につながっていた。やはり微生物のバランスが重要という考え方のようだ。

もう一つのトピックが汚泥肥料。化成肥料が高くなっていくなか、代替となる肥料分として、下水汚泥を利用した肥料を使うという話だった。すでに野菜で実績もあるらしい。肥料の大半を輸入に頼っている中、下水汚泥を肥料として使えるというのは興味深い。

そして、最後は請川さん。請川さんの話は、これまでの2人とは異なり、農業経営についてだった。

うけがわファームは旭川にある米、小麦、大豆、そばを生産する農家さんだ。農業だけにとどまらず、カレー屋の「農珈屋」を農場と旭川空港の2店舗、さらに今年の3月にはパン屋の「米麦屋」をオープンする予定らしい。

すごい。

その根底にあるのは「自社のものは自社で消費者の口まで届ける」という考えだそうだ。そうすることで、価格決定権を持つこともできるし、消費者の反応を直に感じることもできる。

ものすごく共感できる。

会社では現在正社員を9名、そのうち農業部門は3名抱えているらしい。将来的には農業と飲食が売上的にも並び立つくらいを想定しているとのこと。今後、輸出もやってみることを考えているようで、その際にもただ農産物を送るだけでなく飲食も絡めてやることを検討しているとのこと。

農家をやってて楽しいようにしていく、農家の強みを生かしていくという考えのもと、失敗することもあったらしいが、どんどん発展している。

本当に、すごい。

さいこうファームでも、農産物を自分たちで直接消費者に届けつつ、農業を生かして他の事業もやっていくことを考えている。請川さんは偉大すぎるし、方向性もぼくらとは少し違うかもしれないけど、こういう先輩に出会えてとても励みになった。

今日はとても濃密な一日だった。
少し興奮しながら、せっかく北見に来たのでケンタッキーを食べて帰るのでした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。東京から北海道オホーツクの美幌町に新規就農した4人と1匹家族の農業、子育て、おすすめスポットなどをほぼ毎日更新しています。もしよろしければ「スキ」「フォロー」をお願いします!
(登場人物)
ぼく:東京大学で農学博士取得後、ベンチャーで8年勤務。その後、北海道で新規就農。
幸枝さん:ぼくの妻。北海道大学で生命科学修士、ぼくと同じベンチャーで同期入社。2015年に結婚。
つむぎ:3歳の長男。北海道で元気いっぱいに成長中。電車、働く車、飛行機など乗り物大好き。
スピカ:2歳の猫。女の子。網走の病院で保護されていたところからぼくの家にやってくる。
櫂:0歳の次男。長男が騒ぎ回る横で、どっしりと寝ている大物感を漂わせる。

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吉田拓実|さいこうファーム OKHOTSK BIHORO
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