見出し画像

自分らしく生きるためのセルフコミュニケーション分析と改善のヒント#14「思っているだけ」と「考える」の違い

これまでの人生、周りに振り回されてばかりの「他人軸」のしんどい毎日を送っていたとしても、心の中の自己対話(セルフコミュニケーション)を見直すことで自分軸に軌道修正できるということをコンセプトに、シリーズでお届けする記事の14回目です。

何かで思い悩んでいるとき、思い悩んでいる当の本人としては頭の中で「悩み」のことをずっと思ってますから、自分の頭で考えているという確かな実感を持つかと思います。

わたしたちは自分の頭の中で何かを思っていれば、それを当然のように「自分の頭で考えている」と認識するようです。

でも本当に自分の頭で考えているのかというと実はかなり疑わしいのではないか……。だから悩みの解決策を導き出せなくて現実が変わらないのでは……。

ということで、今回は前回の記事#13「脳内の翻訳アプリの設定チェックと変更のヒント」に続いて「思う」ことと「自分の頭で考える」ということについて前回とは違った切り口から考えてみたいと思います。


頭の中のノイズ


わたしたちがなにかを考える(=思い悩む)とき、そこには
・体験の記憶
・信念、価値観
・自己認識
ヒューリスティック(≒先入観や経験則からの直感的な答え)
認知バイアス(≒思い込み)
など、様々な無自覚の思考ノイズ(思考の前提となるフィルター)が渦巻いています。

これらのノイズはある意味わたしたちの「個性」を形作っているベースの一つとも言えるのですが、とはいえそれらのノイズに気づかずにいくらウンウン考えていても本当の意味で自分の頭で考えていることにはならないと思ってます。

例えば「わたしは人付き合いが苦手だ」という自己認識を持っている人が就活を始めようとする場合。

人付き合いが苦手な自分を何とかしたいと「自己変革の覚悟」が固まっていなければ、ノイズが就活先を客観的に考えることを邪魔し、人付き合いが多いと想定される仕事ははじめから選択肢から除外し、それ以外で就活先を考えるのではないでしょうか。

たとえ、これまで身近にいた人たちがたまたま身勝手で傲慢な人たちばかりだったり、たまたまコミュニケーションが下手な人たちばかりだったせいで、人付き合いが苦手に感じるようになっただけで、本当は人付き合いが好きだし案外得意だったとしても……。
それまでの人間関係に関する体験の記憶や「人付き合いが苦手」という自己認識が、就活先を考える上での無意識のフィルターになって、あたかも自動的に就活先の選択肢を狭くしてしまう……。

考える前段階で選択肢が狭められているわけですから、これは十分に考えているとは言えないと思うのです。

ですが冒頭でも話したように、わたしたちは自分の頭の中で何かを思っているだけで、それを「自分で考えている」と確かな実感を持ってしまうため、まさか自分が就活に本当は有効な選択肢をはじめから排除してしまっているとはゆめゆめ気づかない。

そして思っているだけで考えていませんから、もちろん答えも出せっこない。

答えが出せないから結果として他者が出した答えに寄りかかるようになり、それが習慣化してしまうと自分で考えることもやめてしまう。

自分らしくウェルビーイングに生きるという観点から見ると、こうしたサイクルはかなりよろしくない状態といえるのではないでしょうか。

人は最後の瞬間になにを後悔するのか


もしも残りの人生があと一週間しかないと知ったら、あなたなら自分の人生をどんなふうに振り返りますか?

ブロニー・ウェアの名著「死ぬ瞬間の5つの後悔」の中に登場する人たちが述べる「最期の言葉」は、「もっと働いて出世したかった」「もっとお金を稼げばよかった」「豪邸に住みたかった」「もっと名声を得たかった」といった、資本主義社会で「勝ち組」と評価されるようなものとは全く真逆でした。

それは……

「他人の期待に応えるのではなく自分に正直な人生を生きればよかった」
「働きすぎなければよかった」
「思い切って自分の気持ちを伝えればよかった」
「友人と連絡を取り続ければよかった」
「幸せをあきらめなければよかった」

死ぬ瞬間の5つの後悔

というもの。

こうした後悔は、自分の頭で考え納得した答えを出してこなかった結果と言えるでしょう。

ちなみに5つの後悔の中で僕が一番刺さったのは「他人の期待に応えるのではなく自分に正直な人生を生きればよかった」というもの。

自分の人生を生きてきたつもりでいるのに、死ぬ間際になって自分に正直に生きることができなかったと後悔を感じたら、自分だったらきっと絶望的なダメージを受けると思います。

では自分に正直な人生を生きるには、どうすればいいのでしょうか?

それはなにはともあれ、まずは自分の正直な気持ちを知ること。その上で知り得た正直な気持ちを丸っと受け入れ、気持ちに素直になって行動を起こして初めて実現できると言えます。

とはいえ、

「自分の頭で考えているだけでは、自分に都合のいいような自己中な考えしかできないのではないか? それでは独善的な考えになってしまうのではないか?」

そんな疑問を持つ方もいるかもしれません。

自分の頭で考えることと自己中(独善的)な考えの違い


もしもそうした疑問や不安を感じた方は、それは考えた先にあるものが「自分に正直な人生を生きること」ではなく、「他人に自己主張すること」とか「他人から評価されること」といった別な欲求、別な目的があるからなのかもしれません。

そもそもわたしたちはなんのために自分の頭で考えるのかといったら、その一番大きな目的は「自分にとっての正解を知りたいから」かと思います。

ここで言っている「正解」とは、たとえば「得をしたい」というものや、「損をしたくない」という利害に関するものだけでなく、「好き」「嫌い」や、「面白そう」「つまらなそう」といった嗜好に関する個人的感覚も含めて、自分にとって「正しいと思えるもの」を指してます。

いずれにしても「間違った答えを導きだし後悔したいから」「周りから間違っていると非難されたいから」「もっと損したり嫌な目に遭いたいから」といった理由で自分の頭で何かを考えることはしないかと思います。

そう考えれば、たとえ自分一人で考え答えを出したとしても、その答えにすぐに飛び付かずに「この答えは本当に自分にとっての正解なのだろうか?」と、メタ的な視点から自然と何度も考えてしまうはずです。

同じように誰かが主張する正解やノウハウなどを聞いたとしても、それを盲目的に鵜呑みにするのではなく「その人が考え出した答えは自分にとって本当に正解なんだろうか?」と自然と疑ってかかるはずです。

つまり。。。

独善的になっている人は、自分の頭で考えることをしないで思考停止状態になっているからで、自分の頭で考えている人は独善的にはならないと言えるかと思います。


蛇足ですが。。。

世の中には独善的な主張を一方的にしかけてくる人が少なからずいます。

こういう人の目的はただ相手を言い負かすこと。

そのため、自分が発信している意見が自分にとって本当に正しいことなのかは二の次、三の次になっているし、ましてや相手には相手の考えがあるとか、自分はなんらかの思考ノイズに囚われているのではとかは考えもしていない状態と言えます(これが独善的な人ですね)。

一方、「話せる人」と話していると、自分の考えなのか相手の考えなのかがわからなくなるというか、考えがシンクロしてくる一体感、躍動感や、自己拡張する高揚感を感じることができます。

こうした違いを意識しておくと、独善的になることへの不安も払拭できるのではないでしょうか。

考えを歪めるバイアスは悪者なのか?


さて、幸いなことにわたしたちは先人達の知恵のおかげで、人生の最後に先ほどのような後悔が待っていることを予見することができます。

ところが。。。

いくら先人の教えから人生最後の後悔を予見できたとしても、それを自分事として受け止め将来に備え考えを深めることが不得意なようです。それどころか「自分だけは後悔しないから大丈夫」などと思ったりします。いわゆる楽観バイアスです。

こうした意図せずに思考を歪めてしまう認知バイアスには、他にも次のようなものがあります。

損失回避バイアス:利得よりも損失を強く感じる心理傾向
現状維持バイアス:現状維持を好む心理傾向  
投影バイアス:現在の状況を将来に過度に投影し、未来を正しく予測できない心理傾向   
現在バイアス:将来の大きなメリットよりも目先のメリットを優先する心理傾向   
楽観性バイアス:「自分は大丈夫」と根拠なく楽観視する心理傾向   
正常性バイアス:予想外の事態でも、正常時と同様の判断をしてしまう心理傾向  
自信過剰バイアス:自分に関することを高く評価する心理傾向 
確証バイアス:自分に都合の良い情報ばかりを集め、反証する情報を軽視する心理傾向    
同調バイアス:他人と同じ行動をしたくなる心理傾向    
後知恵バイアス:結果を知った後に「自分は予測できていた」と考える心理傾向
先行刺激バイアス:最初に受けた刺激によってその後の行動が影響される心理傾向
ピークエンドバイアス:物事のピークと最後の印象を思い出す心理傾向

認知バイアスとナッジ

とはいえ、こうした認知バイアス(思考のフィルター)のおかげで、普段私たちは些細な事でいちいち考え過ぎて動けなくなったり悲観的になり過ぎることなく、「いつも通り」に生活ができているわけで、一方的にバイアスを悪者呼ばわりするつもりは毛頭ありません。

むしろ自分の認知バイアスの癖を把握し、バイアスと仲良く付き合っていく方法を模索した方が、認知エネルギーの省エネにもなっていいと思っています。

認知バイアスを利用するヒント


例えば「注目バイアス」と呼ばれるバイアスがあります。注目バイアスとは「一度気にしはじめると、その対象を頻繁に目にするようになるという認知バイアス」のことで、カラーバス効果とも呼ばれるものです。

たとえば、「真っ赤なポルシェ」のことが気になっていると、車を運転していても街を歩いていても「真っ赤なポルシェ」っぽいもの(笑)が目に飛び込んでくる機会が増えるという現象のことです。

これはなにもこの世界に「真っ赤なポルシェ」が物理的に突然増えた訳ではなく、わたしたちの脳がバイアスによって「真っ赤なポルシェ」の情報を優先的にキャッチする(裏返せば、それ以外の情報を削除している)ように機能してるせいです。

つまり、これから何かをしっかりと考えようとする際には、考えたいことを明確にすることで「注目バイアス」が発動し、考えたいと思っていることについて情報収集の効率を普段よりも格段に引き上げることで思考を深めることに役立てることができるのです。

はじめにお話ししたように、わたしたちは頭の中で何かを思っているだけで「自分で考えているつもり」になっていることがあります。また考えていたとしてもバイアスなどのさまざまなノイズが考えを歪めてしまっていることもあります。

ですがそうしたノイズの存在を自覚し、自分の思考におけるノイズの癖を把握することで、逆に自分の考えに役立つ方向に利用することもできます。

ということで、今回は「自分の頭で考える」ということについて、バイアスなどの思考ノイズについてお話ししました。
今回の記事が少しでも自己対話(セルフコミュニケーション)を見直すことのヒントに役立てば嬉しいです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

毒親・愛着問題・アダルトチルドレン・ミッドライフクライシス…
登録無料(全7回)強くてしなやかな心を育む無料メールセミナー 


いいなと思ったら応援しよう!