雇用統計:雇用者数(家計調査)から見る景気後退の兆し
非農業部門雇用者数(=事業所調査における雇用者数)は、鈍化してきているとはいえ、まだ雇用の伸びが続いているが、家計調査による雇用者数は、2023年8月161,500千人→2024年10月161,496千人と、1年以上横ばいが続いている。
※従来から雇用者数は、家計調査>事業所調査という関係であり、以下表からその差はほぼ一定であったことが分かるが、最近家計調査による雇用者数は数字が伸びず、その差が縮小してきている。(調査方法の違いから一定の差が出るのはやむを得ない。)
※それぞれの前月比が以下のグラフで、家計調査では既にマイナスを記録する月も多い。
この事業所調査と家計調査の雇用者数の差が縮小している一因は、複数の仕事をかけ持ちしている人が増えているからだと言われている。
一人が複数の仕事をかけ持ちしている場合、家計調査では雇用者数は1であるのに対し、事業所調査ではカウントが複数になるからである。(例えばAさんがX、Y、Zの3社で働いている場合、家計調査では雇用者数1人、事業所調査では雇用者数3人となる。)
よって、複数の仕事をかけ持ちしている人が増加すると、家計調査では数字が伸びず、事業所調査による雇用者数のみ数字が増えるため、家計調査と事業所調査における雇用者数の差が埋まる一因となっている。
家計が苦しいから、複数の職場で働いている人が多いと思われるため、しつこいインフレや金利の高止まりによる債務の膨張に悩む人も多いのだろう。
雇用統計でよく皆が注目する非農業部門雇用者数は事業所調査からの雇用者数である。すなわち一人が3つの仕事を掛け持ちしていれば3人とカウントされた数字を見ている。この統計手法は以前から変わっていないが、非農業部門雇用者数が前月比プラスだからといって、安心していると足元をすくわれることにもなりかねない。
なお、雇用者数(家計調査)が“前年比マイナス”に突入する前後で、リセッションになることが多い。※以下灰色部分はリセッション局面
そして、雇用者数(家計調査)が前年比マイナスを記録した場合、1948年以降のデータで基本的にすべて景気後退に関係している。(景気後退にからまない雇用者数(家計調査)前年比マイナスは1950年代に数えるほど存在しているだけで、あとはすべて景気後退前後に出ている。)