YOSHI

会社員兼個人投資家。米国株中心。アゴラ執筆メンバー(https://agora-web.jp/archives/author/masayoshi_inoue

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最近の記事

米国商業用不動産:止まらない延滞率の上昇と不良債権増加

米国商業用不動産の延滞率上昇と不良債権増加が止まらない。 銀行が保有する商業用不動産ローンの2024年Q2時点の延滞率は2.01%(オフィス部門の延滞率は7.2%)、不良債権比率は1.75%へ上昇し、2024年10月時点において、不良債権は1,000億ドルを超え、潜在的な不良債権も2,600億ドルを超えた。 今後も厳しい状況が続くだろう。主な理由として以下があげられる。 ・商業用不動産価格の下落から担保割れの物件も多いこと ・金利の高止まりにより、ローンの借換えが困難に

    • 米国経済の二極化:クレジットカード延滞率の急上昇が示唆するもの

      昨今、米国のクレジットカードや自動車ローンの延滞率が上昇し続けていることを危惧する論調も増えてきているが、実際はどうなのだろうか。先日、ニューヨーク連銀から発表された四半期報告書(2024Q3)から考察する。 米国の家計債務残高(2024年Q3)は17.94兆ドルで、住宅ローンが12.59兆ドル(70.2%)を占め、次いで自動車ローン1.64兆ドル(9.2%)、学生ローン1.61兆ドル(9.0%)、クレジットカード1.17兆ドル(6.5%)という順になっている。 家計債務

      • 増大する米国クレジットカードリスク

        2022年以降、急激に伸びが加速している以下の表は何か分かるだろうか。 答えは、米国のクレジットカードの金利だ(利息の平均支払金利)。 2024年8月現在、23.37%。24%超、28%超としているところもある。 いずれにせよ、なかなかの高金利である。 この年利は2024年9月以降、米国ではFRBによる利下げが始まっているため、今後は下落基調に転じていくことが期待できるが、期待通りに下がる保証はない。 なぜならば、クジレットカード金利は、基本的にフェデラルファンド金利(

        • 雇用統計:雇用者数(家計調査)から見る景気後退の兆し

          非農業部門雇用者数(=事業所調査における雇用者数)は、鈍化してきているとはいえ、まだ雇用の伸びが続いているが、家計調査による雇用者数は、2023年8月161,500千人→2024年10月161,496千人と、1年以上横ばいが続いている。 ※従来から雇用者数は、家計調査>事業所調査という関係であり、以下表からその差はほぼ一定であったことが分かるが、最近家計調査による雇用者数は数字が伸びず、その差が縮小してきている。(調査方法の違いから一定の差が出るのはやむを得ない。) ※そ

        • 米国商業用不動産:止まらない延滞率の上昇と不良債権増加

        • 米国経済の二極化:クレジットカード延滞率の急上昇が示唆するもの

        • 増大する米国クレジットカードリスク

        • 雇用統計:雇用者数(家計調査)から見る景気後退の兆し

          2024年10月雇用統計振り返り ~失業の質が悪化~

          2024年10月の雇用統計において、失業率4.1%、非農業部門雇用者数1.2万人増(前月比)と発表された。 最近の雇用統計では、今回も8月、9月分が計11.2万人下方修正されたように、下方修正が多く(2023年1月以降、上方修正4回・下方修正17回で、下方修正確率80%超)、今後仮に非農業部門雇用者数がマイナスに転じれば2020年12月以来となる。 今回の雇用統計は、ハリケーンやボーイングなどのストライキによる影響が大きく、それが一時的に非農業部門雇用者数の伸びの大幅な減

          2024年10月雇用統計振り返り ~失業の質が悪化~

          2024年10月雇用統計 市場予想の失業率4.1%は低過ぎる!?

          2024年10月雇用統計の市場予想は4.1%だそうだ。私の予想は4.3%である。 4.1%という数字は低過ぎるように思う。また市場予想には矛盾がある。 2024年9月の失業率は、2014年10月の市場予想4.1%と同じであるため、9月と10月のデータを比較し、市場予測4.1%の妥当性を探る。 *以下は2つの式を念頭に読んでください。 1. 失業率=失業者数÷労働力人口 2. 労働力人口=雇用者数+失業者数 ※1の失業率は、分子の失業者数と分母の労働力人口(=雇用者数+失業

          2024年10月雇用統計 市場予想の失業率4.1%は低過ぎる!?

          失業率4.3%へ回帰 ~2024年10月米国雇用統計予測~

          米国労働省より2024年11月1日(金)に発表される発表される2024年10月の雇用統計は失業率が4.3%になると予測する。 細かく言うと、2024年8月2日(金)に発表された2024年7月の失業率は労働力人口と失業者数から計算すると4.25%(=4.3%)であったが、おそらく今回は4.3x%台(=4.3%)になり、7月と比べると僅かながら悪化するように思う。 2024年7月の雇用統計は、直前の日銀の利上げもあり、また失業率が4.3%に上昇し、サーム・ルールも点灯したこと

          失業率4.3%へ回帰 ~2024年10月米国雇用統計予測~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~最後に~

          Part7からの続きである。 商業用不動産は、米国市場において株式・居住用不動産・国債に続く市場であり、リーマン・ショックの震源地となった居住用不動産市場(56.4兆ドル)の約4割の規模であることから、決して無視できる市場規模ではないものの、経営危機に陥ると想定されるのは主に中小銀行であることから、これが原因で金融システム全体を大きく揺るがすような状況にはならない。また新しい問題ではなく、対策を練る期間が十分あったのも事実で、サプライズ性にも乏しい。 しかしながら、商業用

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~最後に~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part7~

          Part6からの続きである。 このような環境下において、商業用不動産ローンのLTV*(融資額÷担保価値)は既に高くなってきており、2023年末時点でオフィス向けが44.6%、商業用不動産全体では14.3%が既に担保割れになっているという。 *LTV(Loan to Value):例えば、融資額60億、担保価値100億で、LTVが60%(60億÷100億)の場合、不動産価格が4割下落すると、LTV100%(60億÷60億)となる。逆に言えば、不動産価格の4割下落までは耐えら

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part7~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part6~

          Part5からの続きである。 次は、商業用不動産の価格下落の影響度を確認したい。まず、商業用不動産の融資比率を資産規模別にみていこう。 上記「資産に占めるCREの割合」「資産に占めるCRE(オフィス)の割合」という列を見ると、商業用不動産に対する融資比率はオフィス向けを含めて大手銀行が低く、中小銀行が高い。これはリーマン・ショック以降、特に大手銀行に対しては規制が進み、融資に保守的になっている銀行が多いからだ。よって、FRBのストレステスト(2024)(P19)からも、過

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part6~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part5~

          Part4からの続きである。 さて、米国に話を戻し、現在の銀行における商業用不動産ローン延滞率をみていこう。 FREDのデータによると、2024Q2現在で1.42%と目を見張るような高さではないが、2022年Q3の0.63%を底に7四半期連続上昇中で、注意が必要だろう。参考までに、リーマン・ショック時は2006Q2の1.02%を底に、2010Q2の8.76%まで16四半期連続上昇した。不動産市場は失業率同様、一度トレンドが形成されると反転させるのは難しいように映る。 過

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part5~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part4~

          Part3からの続きである。 米国商業用不動産価格の中でも、特にオフィス向けの下落率が顕著である。 オフィス市場向け不動産価格の下落要因の一つが就業環境の変化を伴うものであることを考えると、今後も下落基調は続くだろう。 なお、参考までに、欧州の状況はよりひどい。 2024年9月現在の価格指数99.0は9年前の2015年7月の99.5をも下回る。すなわち、2015年7月以降に購入した物件をならせば、(直近の底である2023年11月以降、わずかながら上昇に転じた2024年

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part4~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part3~

          Part2からの続きである。 不動産価格は、価格下落が担保価値の下落に直結するため、非常に重要なデータで、注意深く観察をしていく必要がある。次は不動産価格を詳しく見ていこう。 以下は2024年8月のGreen Street CCPIデータであるが、既にピーク時より19%下落しているものの、2023年11月以降は下げ止まり、今年は上昇に転じ始めており、これは良い傾向である。仮にこの傾向が続けば、この問題は(オフィス向けなど一部セクターや、商業用不動産向けローンが多い中小銀行

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part3~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part2~

          Part1からの続きである。 成長率が下落を見せている商業用不動産の中でも、最も問題になっているのは、オフィス向け商業用不動産で、これは簡単に解決する問題ではない。 長期金利の上昇に伴う資産の相対的な魅力の低下から生じる商業用不動産価格の下落のみならず、在宅勤務の増加を主因とした需給構造の変化が絡んでいるためである。コロナ発生前の就業環境に戻ることはないと思われることから、上昇基調を見せているオフィス空室率が元に戻ることは難しく、5年・10年といった単位で解決に時間を要す

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part2~

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part1~

          米国商業用不動産問題が市場に一定の影響を及ぼすようになってから久しい。しかしながら、この問題がどこまで大きいのか、そして今後の市場にどのような影響を与えていくのか、いまだ不透明だ。市場規模や金融機関が保有する商業用不動産ローンはどの程度なのか、また足元の現状はどうなっているのかなどを把握し、今後の市場への影響を考察していく。 結論としては、商業用不動産問題がリーマン・ショックの時とは違い、景気後退の直接的な引き金にはならないが、景気後退を招く一因であり続ける。そして、ひとた

          米国商業用不動産が市場に与える影響を考察する ~Part1~