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【運動療法×機能解剖】慢性腰痛患者の隠れた代償メカニズム ~背筋持久力テストが明かす筋活動の真実~

腰痛って辛いですよね。
慢性化するとより辛くなります。

人は痛みを感じるとなんとか逃れようと逃避的な動き方や姿勢をとりますよね?

それを代償動作といいますが、慢性腰痛の方にはある特定の代償メカニズムが起こるようです。

今回はその代償メカニズムについて学べる研究を紹介します。

これを読むと、慢性腰痛の方の特徴と、慢性腰痛へのアプローチ方法を考える事ができるようになるでしょう。

タイトル
“Assessment of neuromuscular and haemodynamic activity in individuals with and without chronic low back pain”

日本語訳
「慢性腰痛患者および非腰痛者における神経筋および血行動態活動の評価」
となります。

では、要約です。


1.【研究目的】

本研究の目的は、Biering-Sørenson筋持久力テスト(BSME)を用いて、慢性腰痛(LBP)患者と健康者の脊柱起立筋、ハムストリングス(大腿二頭筋)、大臀筋の神経筋および血行動態活動を比較することである。特に、LBP患者は健康者と比較して、脊柱起立筋の疲労を補うために大腿二頭筋や大臀筋をより多く活用するのではないかという仮説を検証した。

2.【対象と方法】

対象:

• 健康者:17名(男性8名、女性9名)
• 慢性腰痛患者(LBP):46名(男性17名、女性29名)

方法:

筋持久力測定: Biering-Sørenson筋持久力テスト(BSME)を実施し、持続時間を記録。

筋電図(EMG)測定:
• 電極を脊柱起立筋(L3レベル)、大腿二頭筋、大臀筋に配置し、筋活動を測定。
• 各筋の**中央値周波数(MF)**の変化を分析し、筋疲労の指標とした。

近赤外分光法(NIRS)による血行動態評価:
• 脊柱起立筋および大腿二頭筋の**筋酸素飽和度(TOI)血液量変化(cHb)**を測定。

3.【主な結果】

a. BSMEの持続時間の比較

健康者群は慢性腰痛群より有意に長い持続時間を示した(健康者: 168.5秒、LBP群: 111.1秒, p ≤ 0.05)。
特に女性では、健康者群(212.6秒)とLBP群(106.5秒)の間で顕著な差が認められた(p = 0.001)。

b. 筋疲労(MFスロープ)の比較(EMG解析)

脊柱起立筋の疲労度(MFスロープの低下率)はLBP群で有意に緩やか(23%低下)であり、健康者群(42%低下)と比較して異なる筋活動パターンを示した(p ≤ 0.05)。
LBP群では、大腿二頭筋と大臀筋の筋活動が健康者よりも高かった。
健康者の男性は脊柱起立筋と大腿二頭筋の間に有意な差があり(p = 0.005)、健康者の女性は脊柱起立筋と大臀筋の間に有意な差を示した(p = 0.004)。


図:結果の1と2に関するグラフ

c. 血行動態の比較(NIRS解析)

脊柱起立筋と大腿二頭筋の筋酸素飽和度(TOI)および血液量変化(cHb)には、健康者群とLBP群の間に有意な差は認められなかった。

4.【臨床的意義】

慢性腰痛患者は、脊柱起立筋の疲労を補うために、大腿二頭筋や大臀筋をより多く活用している可能性がある。

• そのため、腰痛患者に対しては、単なる脊柱起立筋の持久力強化だけでなく、ハムストリングスや臀筋群との協調的な筋活動を意識したトレーニングが有効である。

• 例えば、大腿二頭筋や大臀筋の過剰な補助活動を抑えるために、股関節伸展や体幹伸展の適切な筋活動パターンを指導することが重要となる。

5.【まとめ】

いかがでしたか?

個人的には、慢性腰痛者は疲労を補う目的で大腿二頭筋や大殿筋を過用する可能性があるという点が学びになりました。

また、男性では大腿二頭筋を、女性では大殿筋を使用しやすいようですね。

確かに、脊柱管狭窄症と診断された方や腰椎椎間板症と診断された方はハムストリングスや大殿筋(特に上部線維)が短縮もしくは過活動を起こしやすいと感じていました。

過活動を起こしている筋だけを緩ませようとするのではなく、脊柱起立筋と協調的に使用できるようなパターンの修正が必要になりそうですね。

例えば、四つ這いにて一側股関節を伸展し下肢を空間上に挙上する運動や腹臥位で体幹の伸展と股関節の伸展を同時に行う運動などを組み込むといいかもしれません。

以上で紹介を終わります。

6.【参考文献】

McKeon, M. D., Albert, W. J., & Neary, J. P. (2006). Assessment of neuromuscular and haemodynamic activity in individuals with and without chronic low back pain. Dynamic Medicine, 5(6). https://doi.org/10.1186/1476-5918-5-6

また学びになる研究がありましたら紹介します。
よろしくお願いします。


ー腰痛や腰部、体幹トレーニングについてはこちらもどうぞー


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PT yoshi
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