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「THINK AGAIN」を読んで

非常に面白い、久しぶりに出会った良書。
私たちが一般的に「優秀」と捉えている頭の良さ、お勉強ができる・できないということではなく、「THNIK AGAIN(再考する)」の重要さを説いた書籍。
変化の激しい時代、これまでの既定路線がすぐにアップデートされる世の中になり、これまでの常識を疑う力の重要性を認識できた。

また、そのアプローチは「私たち自身」だけではなく、相手に再考を促したり、再考することを組織に根付かせることについても解説されている。

全体的に、ビジネスにとどまらない事例や心理学の実験などのファクトも十分含んで解説されているため、かなり納得感のある内容となっている。

ビジネスパーソン、特に今後組織をけん引する立場の人は一度読んでいただくことをオススメする。

以下読書メモとなる。

0.プロローグ

• 変化の激しい時代を生きるために、考えること・学ぶこと以上に貴重な認知スキルとは、考え直す・学びほぐす能力である。
• 私たちは、一度自分が出した答えを再考することを躊躇う傾向がある。この問題の一端は、思考の怠惰にある。
• 私たちが既存の考え方に執着することが多いのは、その方が考え直すよりもずっと楽だから。
• 再考すべきかもしれないと自問することで、目の前の世界が予測不可能になってしまう。それはアイデンティティを脅かされることに近い。
• 私たちは日々、持ち物をどうするかといった生活の一部では再考を重ねている。一方、知識や見解となると話は違い、人はそう簡単に信念を変えることができない。
• ほとんどの場合、物事を考え直すプロセスに特別なスキルが必要ない。
• 私たちの思考の中には、なかなか捨てられない思考のツール(概念・知識、憶測・思い込み、見解)が存在しており、これが自我の一部となっている。

パート1 自分の考えを再考する方法

チャプター1 今、自分の「思考モード」を見直せ

• ブラックベリーの凋落は、ラザリディスが固定観念に囚われて考え直すことができず、組織の活力が失われ、創意力も事実上枯渇したことが要因とも言える。
• 揺るぎない信念を持つことで報われる世界ではなく、現在は目まぐるしく変化する社会。人は考えることと同じくらいの時間を、再考にも費やす必要がある。
• 再考する対象とは、能力や技能であると同時に、ものの見方や心構えでもある。時折私たちはそれを倉庫から取り出して、それらの錆を落とす必要がある。
• 情報技術の進化により、私たちが触れる情報量は爆発的に増えている。社会の変化の速度に伴い、私たちはより頻繁に、それまで当たり前だと思っていたことを疑問視する必要がある。
• 私たちは、他人の見解であれば、再考の必要性を指摘することが容易にできる。ただ、自分の考えとなると、正しいか、ではなくフィーリングを物差しにしがちになる。
• 私たちの思考様式には、三つの職業の思考モードがある。それが牧師・検察官・政治家の3つ。
• 信念に関しては牧師、他者の推論に関しては検察官、多くの人を味方につけたい時は政治家、といった形で使い分けている。これは危険であり、自分の見解が間違っているかもしれないなどと再考しなくなってしまう。
• 真実を追求するとき、私たちは科学者の思考モードに入る。仮説と検証をするために実験を行い、新しい知識を獲得する。
• 脳の処理速度が速いからといって、柔軟な思考の持ち主であるとは限らない。むしろ頭の回転が速いほど、信念を改めることに苦労することが示唆されている。
• 人間は「確証バイアス(自分が予期するものを見る)」と「望ましさバイアス(自分が見たいものを見る)」にとらわれがち。科学者のように考えるとは、単に偏見なく物事を見るだけではなく、能動的に偏見を持たないことを言う。科学者モードでは、考えを改めることは知的誠実さを表す。
• つまるところ、私たが学ぶのは、自分の信念を肯定するためではない。学びの目的は、信念を進化させることである。
• 偉大な大統領にする要素は知的好奇心と寛容さであった。

• 再考のプロセスとはループで循環するもの。
謙虚(無知を自覚する)→懐疑(自分の前提知識を疑う)→好奇心→発見
といった流れ。
• 一方、過信サイクルの場合は自尊心が高く、そこから思い込みの確信、そして確証バイアスや望ましさバイアスに囚われてしまう。
• なお、この再考のプロセスを成功させたのがアップル。iPhoneの開発は当初ジョブズは反対していたものの、周りのエンジニアが彼に再考を促し、発売に至った。
• 知識の欠点は、時として未知を受け入れたがらないこと。人は新しいことを受け入れる能力や積極的な意志があってこそ、良い判断ができる。

チャプター2 どうすれば「思考の盲点」に気づけるか

• 理屈の上では、自信に能力が加われば最強のように思える。しかし現実には両者は相いれないことが多い。
• たとえば、スポーツ観戦が好きな人の中に、あたかもフィールドの監督よりも知識があるかのように口をはさんだり、ゲームの流れを非難したりする人がおり、こうした人をアームチェア・クォーターバック症候群の傾向があるという。
• 逆に能力があるのに自信に欠ける人のことをインポスター症候群と呼ぶ。
• 自信は能力に対して最適なレベルを維持することが大事。
• 人は能力が欠如しているとき、自信過剰になる傾向がある。
• アームチェアクォーターバック症候群で厄介なのは、この思考回路に陥っている人は、再考しようとしないこと。
• 我々の傷つきやすい自我が、アームチェアクォーターバック症候群を悪化させる。自分を肯定的に見たいとき、自分を他の誰かよりも輝かしく見せたい時、人は自分の弱さを否定したがる。
• もうひとつ、人の目を曇らせる要因は、メタ認知の不足。メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に捉える能力のこと。
• 人が自信過剰になりやすいのは、ド素人からワンステップ進み、アマチュアになった時。ほんの少しの知識が危険になり得る。そのピークがマウント・ステューピッド(自信過剰のてっぺん)である。さらにそこから知識を蓄積するには、その状態から脱する必要がある。
• 元来謙虚さとは、しっかりした知識や能力、つまり自分の過ちや不確実さを認識する力を表している。
• 将来の目標に達するのに十分な能力が備わっていると自信を持ちながら、そのための正しい手段は何かと現在の自分に当謙虚さを持つことは可能。それが最適な自信レベルである。
• 自己の能力を信じながら、自分の解決方法が正しくない可能性、あるいは問題自体を正しく理解していない可能性を認めることが良い。
• 最も生産性が高く、革新的なアイディアを持ったチームを率いるのは、自信に満ち溢れたリーダーでも謙虚なリーダーでもなく、自信と謙虚さの両方を兼ね備えたリーダーだという。
• 不安を無視するより、不安を受け入れる方がメリットがあると考えるべき。
インポスター症候群のメリット
①自分はインポスターだと感じることで、人はさらに努力する傾向にある
②インポスターであるような劣等感は、能率的に仕事をこなそうというモチベーションを生む
③インポスターであるような感情は、学習能力を高める傾向にある
• バランスの取れた自信と謙虚さは補正レンズであり、弱点を克服する助けになる。

チャプター3 「自分の間違い」を発見する喜び

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