クラウドファンディングによる被災地支援~法人の場合~
Q1. 「寄附型」のクラウドファンディングとは何ですか?
A. クラウドファンディングには、主に
購入型(返礼品やサービスを受け取る)
寄附型(返礼品がない、もしくは対価性がない)
の2つの形態があります。
「寄附型」は、寄附に対して対価性のある返礼品が存在しないため、法人税法上は“寄附金”として扱われます。今回は、この「寄附型」を前提にしています。
Q2. 法人が「資金提供者」となり、寄附を行う場合の取扱いはどうなりますか?
A. 法人(普通法人など)が他者に対して寄附を行うとき、その支出先の区分に応じて、損金算入できる額(損金算入限度額)が異なります。
国等に対する寄附金および指定寄附金
全額を損金に算入できます。
特定公益増進法人・認定NPO法人等に対する寄附金
特別損金算入限度額が定められ、その範囲内で損金算入可能です。
上記1・2以外の一般の寄附金
一般寄附金損金算入限度額が定められ、その範囲内で損金算入可能です。
Q3. 「特定公益増進法人等への寄附金」の特別損金算入限度額は、どのように計算しますか?
A. 事業年度が12か月の場合、以下の計算式を用います(※12か月以外の場合は、「資本金等の額」を「× 事業年度の月数 / 12」で補正)。
{(資本金等の額×0.00375)+(所得金額×0.0625)}×1/2
Q4. 「一般の寄附金」の損金算入限度額は、どのように計算しますか?
A. 事業年度が12か月の場合、以下の計算式となります(※12か月以外の場合は、「資本金等の額」を「× 事業年度の月数 / 12」で補正)。
{(資本金等の額×0.0025)+(所得金額×0.025)}×1/4
Q5. 「支出先」ごとに、具体的にはどのように区分されますか?
A. 主な例は次のとおりです。
特定公益増進法人等への寄附金
公益社団法人、公益財団法人、認定NPO法人、社会福祉協議会など。
一般の寄附金
個人、個人事業者、一般社団法人、一般財団法人、宗教法人など(上記に該当しない先)。
クラウドファンディングは、不特定多数の支援を募る性質上、事業関連性のない相手に寄附することが多い点にも注意が必要です。
Q6. 一方で、法人が「資金調達者」として寄附金を受け取る場合、どのような処理が必要ですか?
A. 受け取った寄附金は、通常、寄附金収益として受領日の属する事業年度の益金に算入します。
被災者本人(普通法人)として寄附を受け取る場合
その寄附を受け取った日の属する事業年度の益金に算入します。
被災者以外の第三者法人が寄附を受け取り、そこから被災地へ物資を送るような場合
受領した金銭は「受贈益金」に該当し、同様に寄附金収益として益金算入します。
Q7. 公益法人等が寄附金を受領した場合はどうなりますか?
A. 公益法人等(公益社団法人・公益財団法人、非営利型一般社団・一般財団法人、認定NPO法人、宗教法人等)は、収益事業以外の所得には法人税が課されません。そのため、
収益事業に関連する寄附金として受け取る場合
その寄附金額は益金算入され、課税対象になります。
非収益事業(公益目的事業)に関連する寄附金として受け取る場合
法人税が課されません。
Q8. 最後に、寄附型クラウドファンディングによる被災地支援のポイントは何ですか?
A. 大きく次の3点が重要です。
寄附金を支出する側(法人)は、
支出先を「国等」「特定公益増進法人等」「その他一般」に区分し、適切な損金算入限度額を計算すること。
寄附金を受領する側(法人)は、
通常は受領事業年度の益金として計上(課税対象)。
ただし、公益法人等は「収益事業」か「非収益事業」かで課税の可否が変わる。
寄附型と購入型の区別
返礼品などがある場合は、売買とみなされる可能性があり、「寄附型」とは異なる取り扱いとなる点に要注意。
※必要に応じて、税理士や専門家のアドバイスを受け、正確な処理を行うようご留意ください。