「言葉探し」は、「視点を持つこと」

たとえば、私にとって言葉とは、視点を持つことそものでもあります。

化粧室から見えた磨りガラスの光、水面に反射する淡い陽光、雨の日、濡れたアスファルトに映り込む信号の赤。私は光が好きで、それは直接的なものではなく、反射したり、映ったり、なにかを媒介している、淡かったり歪んでいたり、曲がっていたりする光です。

それらを眼差すたびに、目の当たりにした光景を彩る言葉たちが、感覚を形容してくれる。言葉を探すことはとても難しいけれど、感覚や感情にぴたりとハマるひとかけらのピースを探すように言葉を見つけることは、私にとって、とても楽しいことです。まるでたからもの探しのように、ワクワクと心躍ります。

古典文学では『影』が『光』という意味で使われていることを知った時、とてもしっくりときました。自分の見たものや感じたことを言語化すると、それは言葉というものを介して、思考や感情ありのままとはまた違ったひかりを放つような感覚を抱いていたからです。

伝える手段、いわばコミュニケーションの道具として存在する言語を、ただひたすらに考え、好き勝手に紡ぐ時間が好き。

この言葉もまた、思考や感情とは姿形を変えた、私の影です。きっと、見る場所や瞳の色によって、明るさも暗さも、影の長さも、ひかりのつよさも違ってみえる。とっても不思議で愛しいことだと、そう思いながら、私は言葉を書いています。

言葉を通して眼差す視点に、また新たな言葉をみつける。飽き足らず今日も、言葉探しの渦中から。



2020年1月27日の下書きより。

2022年10月17日、加筆修正・公開



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川
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