「ふーん。で、それがどうしたの?」 基本のオートミールの食べ方のお話。
昔むかし、私がバックパッカーだったころの話。
海外をふらふらと一人旅をしていた。
ある日ユースホステルのキッチンの片隅で、
私は夕飯の準備をしていた。
私は16:30くらいに共用キッチンがガラガラなのを確認して、
空いているガス代の前で手早く夕飯を作っていた。
旅先でたまたま出会った日本人からもらった
貴重なレトルトの味噌汁を温める。
ニンジンやカブを手早く切って一緒に煮込む。
最後にオートミールを入れる。
その日は
”スープ(今回は味噌汁)とオートミールを煮込む”
割と基本的な食べ方をしようとしていた。
「よるもあ、それなに?
なんか酸っぱいにおいがする」
声をかけてきたのは、スイス・ローマ人のマニュエラだ。
数日前からお互い拙い英語で会話が出来るようになった。
優しそうなスイスのお嬢さんというお顔立ちだけど、
”歯に衣着せるスキルがゼロ!”
が特徴の素敵な女性だった。
「発酵食品だからねえ、みそっていうんだよ。
一口だけ飲む?」
マニュエラは、こう返す。
「えー、茶色いじゃん。
なんか怖いよ、匂いもやばいし。
飲むなんてできないよ!」
女子ふたりが、キャッキャ言う。
キッチンに笑い声が響いた。
そこに数日前にこのユースホステルに到着した
東洋人の男性が会話に入ってきた。
彼は自国では料理人なのだそう。
彼は腕を組んで言う。
「よるもあは食材の知識がないんだね。
もっとちゃんと教えてあげないと。
そもそも大豆っていう豆から…」
マニュエラはすぐ顔に出るタイプのお嬢さんだ。
フン!っていう息をついてこう言った。
「いま、よるもあと楽しい会話をしているの。
突然はいってこないでくれる?」
日本人の私は、空気を察知して
「まぁまぁ。私が説明不足だったんだし…」と
へらへら笑ってその場を和ませようとした。
料理人の男性は、
「こういう事を知っていた方が、
料理が楽しめるでしょ。
好意で教えてあげているんだよ。」
と平然と続けた。
マニュエラは言う。
「ふーん。それで、それがどうしたの?」
場の空気が一気に冷たくなった。
彼女はまだ続ける。
「料理ってさ、楽しく食べられる事がおいしさでしょ。
料理人のくせに、そんなこともわからないの?
今はよるもあと楽しい気持ちをシェアしていたの。
よるもあを知識不足といったことに、
まずあやまって。」
料理人はあやまらない。
そもそも日本人が嫌いだって公言してた人だし。
正直、私もあやまってほしくない。
『おおごとになりませんように』って
目線を合わさずに冷や汗かいてた。
なんか気まずい。
マニュエラはジェスチャーでシッシッと
料理人さんを追いやってしまった。
しばらくして、マニュエラは私の目を見て言った。
「やっぱり、一口たべてみる。」
私は、彼女のヘーゼルナッツチョコみたいな瞳を見返した。
「無理しなくていいんだよ。
吐かれても困るし。」
彼女は即答した。
「今たのしいし、気分がいいから。
よし、食べてみる。」
彼女は私をかばってくれたのかな。
そして、このキッチンでの時間が楽しかったなんて。
たった数語の会話で、胸がギュっとなった。
私がマニュエラから学んだ事。
ごはんは、楽しい仲間と、
食べたいっていう気持ちを添えて
食卓を囲むのがベスト。
例え技巧を学んだ料理人も、
和やかな空気を壊すのならば
キッチンからご退場いただくしかない。
心の中で
『かっこいいな、マニュエラ。』って思って
笑顔になってしまった。
この時、
「あんた、最高だねー!」って
咄嗟に英語が出てこない。
日本人気質な自分にモジモジしちゃったけど。
数分後。
マニュエラはみそ汁を一口食べて
「〇〇〇…!なんじゃこれ?」
ローマ語と英語で叫んだ。
盛大に咳き込んで、
ミネラルウォーターを250mlくらい
一気飲みしていた。
みそと自分の名誉のため言います。
日本人にとっては美味しく出来ました。
マニュエラにとっては
「なんていうか、混乱する味?」
だったそうです。
そんなわけで、
オートミールチャレンジの初回の方は
割と基本的な食べ方で挑んでいます。
よかったらブログに遊びに来てください。
オートミールチャレンジ1 和風だしオートミール
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