【エッセイ】わたしの弟は良いやつだ
たまに思い出す、弟と遊んだ昔を。
弟はわたしのふたつ下で、末っ子長男。姉ふたりに虐げられたこともあったが、その辺にいる男よりはよっぽど気遣いができるし良いやつに育った。
悪いことだってしないし真面目で責任感もある。中高のころはよく熱を出して学校を休んでいたけれど、会社に勤めてからはそんなのなくなった。
幼いころよく弟と遊んだ。
夏休みは朝早くに起きて自転車に乗り山をひとつ越えた山と川に遊びに行ったりしたし、その際弟はすすんでボロい自転車に跨り、乗りやすいきれいなほうをわたしに譲ってくれた。良いやつなのだ。
いっしょにモンハンもした。
よくわたしに「いっしょにモンハンしようよ~」とせがんできた。わたしは気分がのったときしか付き合わなったけれど、いっしょにプレイすると弟は効率なんて無視して楽しむことを最優先にして遊んでくれた。ゲームが上手い弟とゲームが下手くそなわたしだから、当然わたしはすぐ死んでしまう。弟はそんなわたしを責めたことなど一度もない。良いやつなのだ。
あぶない遊びもした。
高1の夏休み、近所が雨で水浸しになったとき、少し離れた山の中に小さな池を見つけた。わたしと弟は嬉々として家にあったゴムボートを膨らませ運んで、池に浮かべて乗り込んだ。絶対してはいけない遊びだということはわかっていたから、お母さんには内緒ねと約束して泥んこのままゴムボートを抱えて帰った。たまに悪いやつなのだ。
ブラコンというわけでもないが、わたしは弟が好きだ。
姉目線の贔屓目だと言われてしまえばそれまでだけれども、けっこうな優良物件だと思う。
そうだ、前に家族で山梨へ旅行に行ったとき、たまたまわたしと弟のふたりだけで並んで歩く機会があった。身長差が26センチほどあるので歩幅も歩くスピードも全くちがうわけなのだが、弟はわたしに合わせてゆっくりゆっくり歩いてくれるのだ。そしてあろうことかこちらをちらちら見てくる。ちゃんとわたしが着いてきてるか確認しているように見えた。やっぱり良いやつなのだ。
そんな弟が今年の2月、家に彼女を連れてきた。
実はそのときのことは記事にしている。
まぁ薄々彼女がいるんだろうなということは気づいていたが……。だって部屋からゲームしながら通話してる声聞こえてきてたし。相手の声女の子だったし。
1ミリくらい残念だった。もうコイツはわたしとゲームしてアホみたいに笑い合ってくれないんだと思って。
でも彼女っていう大切な人ができたことは喜ばしい。ひとりの人間として、家族として、姉として。彼女ちゃんもすごくいい子だったもんね。
お似合いだったもんね。
たまにおまえそれ人間としてどうなの?って思うこともあった。そんなの誰にだってある、人間だから。気遣いができるったってやっぱり男だから。
でも良いやつなんだ、ほんとうに。
弟はこないだ彼女と同棲し始めて、もう家にはいない。
べつに寂しくないしひとりっ子気分で両親に甘えられるし最高なんだけど。
けど、やっぱりたまに、いっしょにゲームしたこととか遊んだこととか思い出す。センチメンタルなのかな。
あのころは良かったなんて言うつもりはないけれど、あのころも良かったよね。
良い思い出だよ。
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