
“歴史の証人”となった週末~SpaceX社のStarship 5号機打上げ/帰還を現地で観た!~
とある日、いつものように『X』を見ていたら「お気に入り」登録しているSpaceX社のアカウントで
“Starship 5号機の打上げが10月13日(日)の午前7:00~7:30の間で行われるかも。ただし打ち上げの許可が下りれば。”
という内容の記事を発見。
以前は11月下旬ころになるかも、という情報だったため、
“まだ先か~サンクスギビング(感謝祭)がある週は子供の学校が休みだからドライブがてら、行ってみるか。”
と計画していたが、突然10月の三連休の中日で打ち上ることにびっくり。
ただ、引っ掛かったのが
“打ち上げの許可が下りれば。”(”pending regulatory approval”)
という一言。
要するに許可が出なければロケットは打ち上らない。
打上げが行われる場所は米国テキサス州南部の“ボカチカ”というメキシコに接する場所にあるSpaceX社の『Starbase』(スターベース)で、自分が住んでいるヒューストンから車で約6時間ちょっとで600キロ強の場所。
飛行機でも行けるが打ち上らなかったら飛行機代が高くつくし、そもそも飛行機も飛ばない可能性があるため、行くとしたら車で行こうと思っていた。(それに移動中に打上げが行われないことがわかればそのまま引き返せるし。)
そして打上げ予定前日の10月12日(土)。
時間を見つけてはSpaceX社のサイト、『X』を確認。
午前中の時点ではまだ“Pending regulatory approval”という表現があり、打上げの許可が下りていない状況が続いていた。
今回の旅、せっかくなので我々(自分と息子)以外にお世話になっている先輩と行こうと思っていたこともあり、ダメ元で片道6時間ちょっと掛けていくかどうか、先輩と連絡を取り合いながら悩む…
そして午後、更新が無いか再び調べてみるとSpaceX社のサイトから“Pending regulatory approval”の文字は消え、”targeting launch on 10/13 07:00“という文字のみに!
“これはもう行くしかない!”と思い先輩に連絡。
ということで世界初、世紀の瞬間を見るため、現地へ行くことを決定。
ロケットの打上げなので、直接ボカチカへ行っても観ることができないであろうことから地図で見られそうな場所を調べる。
結果、South Padre Island(サウス・パドレ・アイランド)の最南端がStarbaseの対岸にあることがわかり、とりあえずそこを目指すことにする。
家を22時に出発。
ガソリンを満タンにし、先輩を22時15分に迎えに行き、そこから一路South Padre Islandに向けて600キロの旅をスタート!
アメリカの夜のロードトリップの特徴は高速道路(フリーウェイ)を走っていて町がある場所には街灯があって道路が見やすいが、郊外へ行くにつれて街灯はなくなり、闇の中をひたすら走る。
そして、高速道路の両脇は森や林があり、フェンスが無いため、夜行性の動物が高速道路を横断することもしばしば。
実際に鹿が路肩にいてちょっとヒヤリしました…(郊外の制限速度が時速約120キロなのでもし撥ねたらお互い大惨事…)
運転中に日付も変わり、打上げ予定当日の10月13日(日)。
途中、眠気覚ましのコーヒーを買い、ガソリンを入れ無事South Padre Islandへ午前5時前に到着。
ただ、ここでの問題は“どこへ行けばロケットが戻ってくるところが見られるかわからない”ということ。
とりあえず近くまで行けば何か手がかりがあるだろう、とSouth Padre Islandへ続く橋を渡り始めたらある方向へ向かう多数のテールランプを発見。
“恐らくみんな見に来ている人たちだろう”
とその車列の後ろに続く。
しばらく走ると料金所に到着。(あとでそこがIsla Blanca Parkという公園の駐車場だと知る。)
料金所のおじさんに“ここって打上げ観られる場所?”と確認すると“Yes!”と一言。
駐車料金(12ドル)を払いおじさんの“Enjoy the launch!”の一言を聞きながら駐車場へ。
打上げ約2時間前の駐車場はほぼ満車。
駐車ができたのはもっともよく見える海岸から徒歩10分程度の場所にあった。
ということで荷物を持って暗闇の中、遊歩道を歩きたくさんの人が集まっている場所を目指し、まずは場所を確保。(暗闇の中でしたが、多くの人がすでに待っているのがわかりました。)
今回、息子にとって初めてのロケット打ち上げを見る機会。
そしてまだ世界で一度も成功していない大型ロケットの発射台への帰還。
どうしてもロケットが発射台に戻ってきて“お箸”で掴まれる瞬間を撮影したい、と思っていたので、海岸の岩場の一番前の位置へ移動し、三脚(2本)とスマホ(2台:1台は縦撮影、もう1台は横撮影)を発射台が映るようにセット。さらにもう一台は手持ち。(スマホ合計3台)
準備をしてから打上げまでの間、岩場の上で波の音や星空、そして遠くに見える発射台を見ながら待機。(そしてたまに岩の上でうたた寝。)
6時30分。もし打上げが7時00分ならばSpaceXのライブ中継が始まっているはずだが始まらない…“もしかして打上げ中止か?”ということが頭をよぎり、すぐにSpaceX社の公式サイトや『X』を調べる。
幸いにも打上げ中止に関する情報は無く、代わりに打上げが7時25分となったことを確認。
この頃には東の空から日が昇り始め、あたりも明るくなり、遠くにこれから打上げられるStarship 5号機があるのが確認できた。

そんな中、前日より何も食べてこなかったところ、先輩が“3人分のおにぎり握って来た”と出してくれて、そのおにぎりを頬張りつつ、先輩が準備してくれた麦茶でのどを潤す。(考えてみたら前日の18時30分以降、何も食べていなかった(笑))
そして7時24分。打上げの瞬間を逃さないよう録画開始。

7時25分。
静寂な朝の空、SpaceX社のStarship 5号機がまばゆい光と共に晴天の青空に上がっていく姿を観る。



その数秒後、打ち上った瞬間の爆音。
それに続き、空気が揺れるのを肌で感じる。
発射台から約8キロ地点にいるにも関わらず、空気が振動していることを確実に感じられることに感動。
その間もStarship 5号機は朝日に照らされながらグングンと大空へ。
途中、見事な“ロケット・ロード”ができる。朝日に照らされてオレンジ色に染まっていることがとても印象的だった。

しばらくするとStarship 5号機は頭上を少し超えたあたりへ。
そこでStarshipとブースターが分離。
Starshipはインド洋に向けて飛行を続ける。

そしてここからが今回の“世界初”の試みが行われ、我々が“歴史の証人”となるイベントの始まり。
分離をしたブースターは姿勢を変え、発射台へと戻り始める。
しばらくするとブースターのエンジンを下に向けた状態で落ち始める。
まずは先ほどできた“ロケット・ロード”の裏を通過。
速度がどんどん上がっているのがわかる。

地上に近づくにつれ、自分の視野にブースターと発射台の位置関係が入る。

その時に思ったのは
“あれ?ブースターと発射台、離れてない?えっ、もしかして失敗???”
と思いながら見ているとブースターが着陸用のエンジンを点火。
横に滑るようにブースターが発射台に近づいていく。

そして、その瞬間は来た。
ブースターは発射台の“お箸”に掴まれ、2回大きなソニックブームが続きエンジン燃焼を終了。


無事ミッションは成功。
この時、我々は初めて現地で“ロケットが「お箸」で掴まれる瞬間”を目撃した(恐らく)唯一の日本人になった。(『X』とか探しても特に他になかったので勝手ながらそうだと思う。)
打上げを見終えてから帰路に就く前に“せっかくだからSpaceX社のStar Baseに立ち寄ろう!”ということで、対岸に見えるStar Baseを目指す。(視覚的に近く見えましたが、渋滞もそうですが、思ったよりも遠回りせねばならず、現地まで約1時間程度。)
ただ、残念なことにStar Baseへ続く道にパトカーが止まっていて、Star Baseを見学できるか聞いたところ、“明日まで立入禁止”ということで断念…ヒューストンへ戻ることに。
高速に乗って2時間程度走ると渋滞に遭遇。
何があるのかと思ったら国境の検問(Border Control)だった。
アメリカ人ではないことを伝えると車を移動させるよう指示され、それに従う。(他の人たちはそのまま走行していったのでちょっとドキドキ。)
パスポートを見せ、問題無いことが確認され無事通過。(メキシコに近いことはわかるけど…100キロ以上離れたところに検問って?と思った。)
その後、さらにしばらく走るとちょうどヒューストンまでの中間地点に差し掛かる。
時間はお昼に近かったので途中、一旦高速道路を降りてGoogle Mapで評価4.7のバーベキューレストランへ。
立ち寄ったレストランの名前は“Butter‘s”(バターズ)と言って金曜日~土曜日の3日間のみ開店。
しかも閉店時間は“売り切れ次第”というなかなか期待させてくれるお店。
店内はとても落ち着いた雰囲気で地元の人たちに愛されているであろうことがわかる。
メニューは壁に貼られた文字のみのメニュー。(写真無し。ウェブサイトでもどれがなんだかわからない…)
とりあえず、前の人が注文しているものを見ながらだいたいどんなものがどういう風に提供されるか把握し、それぞれ“Two Meat Plate”という2種類のバーベキューと2種類のサイドディッシュを注文。
以下は自分が注文した『Marble Brisket』(マーブルブリスケット:脂身付きの部分)[写真左側]と日曜日限定の『Barbacoa』(バルバコーア:牛肉をじっくり煮込んだもの)[写真中央]。あとは『Elote』(エローテ:茹でトウモロコシをバターとサワークリームで和えたもの)と『Potato Salad』(ポテトサラダ)。

どれも満足する一品だった。
そして16時半頃、ヒューストンに到着。
先輩を家まで送り、帰宅。
興奮冷めやらぬ状況で3台のスマホで撮影した映像+息子がスマホに望遠レンズを取り付けた映像をチェックし、『X』にポスト。
今日(10/13)、テキサス南部にあるSpaceXからロケットを打ち上げて、戻ってくるブースターをハシ🥢のようなもので掴んで回収する、というイベントがあるのを知ってヒューストンから徹夜で運転して行ってみた。
— Yorozuya (@Yorozuy26347255) October 14, 2024
大変だったけど行った甲斐があった!
迫力がすごい! pic.twitter.com/l1WbXUQenZ
しばらくするとコメントが入り、うち1つは『めざまし8』(フジテレビ)から!
“もしかしてテレビで映像が使ってもらえるのか?!”と淡い期待を胸に担当の方とミーティング。
簡単な取材を受け、映像を提供。
10月15日(火)午前8時の『めざまし8』で取り上げられるかもしれない、ということを国内の知り合いに宣伝。
結果はどうだったか?
聞くところによれば同時刻、ちょうどドジャーズ(大谷選手)の試合もリアルタイムで行われていたものの、スタジオに『現地日本人も大興奮 米・スペースX 大型ロケット“初キャッチ”』というボードがスタジオにあって、9時32分、自分が撮影した映像と取材時の音声が流れたそうです!

ちなみにその後、YouTube動画を作ってみましたが、スマホアプリの限界なのか、テレビのようにズームするとちょっと画質が荒くなってしまいました…(^^;(ちょっと元動画をそのままアップすることで画質を維持した状態で観られるように早速アップしてみました。)
しかし…22時~16時の約18時間で約1300キロのドライブ。日本と違って渋滞が殆ど無いので苦にはなりませんでしたが、走行した距離だけで言えばこの時間で東京~岡山を往復したことになるのを知って“やっぱテキサス州、広いな~”と思いました!
また次の打上げがあったら是非行きたい!