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【背伸びして~】乱反射する光、飛んでいく私。:1

また違うひとつの恋愛を綴っていこうと思う。
始まる事も終わる事も無かった。好きもさよならも愛してるも言わなかった。19歳の私が8歳年上の人に恋をした話。


「よるちゃん!琵琶湖行こう!」

新しく働き始めたアルバイト先の社員さんにそう誘われた。なんでも社員さんの先輩達が琵琶湖でジェットスキーをするらしく、アルバイトの子数名に声をかけていた。予定も無いし、行ってみるか。

そう。この日、彼と出会った。彼をTとしよう。社員さんも割と出るのSとする。

Sに連れられてアルバイトの子3人で琵琶湖に向かった。Sが道すがら、

「Tって俺の先輩がいるんやけど、
めっちゃ怖いし気を付けてな。
あ、でもいい人やから!」

なぜそれを最初に言わない。まぁ関わらなければいい。愛想良くその場を受け流す術は心得ている。フロントガラスの向こうに琵琶湖が見え始めた。海みたい。初めて見る琵琶湖はキラキラと光が乱反射していて、これから絶対楽しい事があるぞという期待を膨らませるには十分だった。

到着したら既に先輩グループは来ていてジェットスキーを楽しんでいた。車から降りると1人の長身の男性が近付いてきた。Sが声をかける。

「Tさんお久しぶりです!」

なるほど。この人がTか。近寄らんとこ。そう決意した数十分後、私はTの運転するジェットスキーに乗らされていた。ジーザス。もちろんアクティビティだ。私は振り回され湖面にスコーンと飛んでいく。身体が痛い。ジーザス。でも、面白すぎる!!!アルバイト仲間がどんどんリタイアする中、私はTにもっかい!もっかい!とせがんで、乗せては飛ばされ2人でゲラゲラ笑う。それを繰り返していた。気付けば普通に笑って話していた。聞いてた話と違うぞ。そう思いながら、さすがに疲れてアルバイト仲間と休憩がてらプールでジュース片手におしゃべりをした。しばらくするとTがこっちに歩いてきた。

「よるはもうジェット乗らへんか?」

え、私?名前で呼ばれてる?ん???頭にハテナがいくつも浮かんだが、まだ乗りたかった私はTの元に駆け出した。今思うと、この時に私の気持ちも一緒に駆け出したのかもしれない。何かが始まる時のワクワク感。それは確かに感じていた。

一通り遊び終わると、帰ってからTと合流してご飯に行く事になった。

「なんでTさんが来るの?」
「なんか行きたいって言ってきた」

Sは不思議そうにそう答えた。お店に着いて個室に案内される。しばらくするとTが到着した。そしてなぜか私の隣に座る。それからだ。とにかくTと私は気が合った。会話がどんどん進む。ツッコミあいながらゲラゲラ笑う。周りからは漫才してるの?と言われるくらい会話のテンポが合うのだ。誰だよ怖いって言ったの。気が付けばTさんと呼んでいたのがTちゃんと呼んでいた。

「初対面でTちゃんは馴れ馴れしすぎるぞ」
「いやそっちが呼び捨て早かったやろ」

そんなしょーもない事を言い合うのも楽しかった。こんな年上の男性と仲良くなるのは初めてで、少し大人の世界に足を踏み入れたような不思議な高揚感もあった。

そのままSに家まで送って貰い帰宅した。
...メアド聞いたら良かった。お喋りが楽しすぎて夢中でそんな事すら頭に浮かばなかった。まぁまたいつか会えるかな。そんな事を考えながらクタクタの身体をベッドにダイブさせた。湖面に何度も打ち付けられた身体が痛かった。ジーザス。


日焼けした火照りなのか、Tが気になる火照りなのか。まだ前の苦しい微熱も引いていないのに。でも、本当に楽しかった。出会いとは突然なんだな。また縁があれば会う事になるだろう。そんな事を考えながら眠りについた。



次のお話はこちら。


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