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コミカンソウを育ててみた。
以前お庭のコミカンソウを生けて、お部屋に飾ったことをnoteに書きました。
その時に回収したこぼれ種たち。
育ててみたくてビニールの袋に入れて、机の引出しの中にしまっていました。
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そして去年、
「コミカンソウを種から育てたらどうなるのかな?」
という素朴な疑問を解消するべく、植木鉢にコミカンソウの種を蒔いて、その様子を観察しました!
今回はその観察記録です。
2024年6月12日
植木鉢に土を入れて、コミカンソウの種を蒔きました。
蒔いた数は適当ですが、結構たくさんです。ざざっと遠慮なく蒔きました。
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土はもともとコミカンソウが生えていた、お庭の土を持ってきました。
乾燥していたら発芽しないかな?と思い、土の表面が湿る程度に水をやりました。
2024年6月16日
芽が出てきました!
可愛い双葉です。
植物の芽が出るの、なんでこんなに嬉しいんだろう。
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種を蒔いた後は、土の表面が乾いたら適宜水をやっていました。
2024年6月24日
数日後、別の芽が出てきました。
でも、最初に出てきた双葉とは明らかに見た目が違います。
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どちらかはもともと土に混ざっていた、別の種類の芽なんだろうな。
どっちがコミカンソウなのかは、大きくなってからのお楽しみです。
2024年6月26日
2番目に出てきた芽の葉っぱが大きくなってきました。
コミカンソウの葉っぱとは形が全然違います。
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2024年6月28日
1番目に出てきた芽も大きくなってきました。
ただ、なんとなくこれもコミカンソウっぽくない気がする…。
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そしてもう1つ気になるのが、たくさん種を蒔いた割には出てくる芽が少ないこと。
保存の仕方が悪くて、種が死んでしまっていたのではないか?と少し不安になってきました。
2024年7月4日
その後他の芽が出ることなく、2つの芽がすくすく育っていきます。
2番目に出てきた芽は、カタバミだなと分かるようになってきました。
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2024年7月15日
1番目に出てきた芽も明らかにコミカンソウではない風貌になってきました。
マメ科のシロツメクサ系の植物でしょうか?
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手元にある図鑑などで調べてみたのですが、種類が分かりませんでした。
ちなみに、カタバミは夜になると葉を閉じていました。
これを就眠運動というそうです。
はっきりした理由はよく分かっていないようですが、水分や熱の余計な損失を防ぐためと言われています。
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2024年7月31日
コミカンソウではない植物たちがどんどん大きくなっていきます。
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カタバミに萎んだ花がついていました!
けれど、道端で見かけるような綺麗なお花は咲かず。
よーく見たら、花がある!くらいの小さな小さな可愛いお花。
窓が北側で、光合成が十分にできなかったのか?
はたまた土の中の養分が少なかったのか?
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2024年8月5日
カタバミに種ができていました!
あんな小さな花でも、種がちゃんとできていることに驚き!!
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2024年8月7日
いつの間にか果実が弾けて、落っこちていました。
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2024年8月20日
カタバミがこんなに大きくなりました。
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シロツメクサはカタバミの勢いに圧倒されて、弱々しいまま枯れてしまいそうです。
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2024年9月25日
カタバミが枯れてしまいました。
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そして、なんと!
コミカンソウを飾っていた窓枠の下、サボテン鉢に謎の芽生えが2つ!!!
これはもしかすると、もしかするかもしれないので、そのまま観察を続けます。
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サボテンの鉢は、ホームセンターで買ったサボテン用の水捌けの良い土を使っています。
さらに、水やりも月に1度程度しかしていません。
そんなカラカラの状態で生えてくるとは、なんて命しらずな!と思いますが、
当の本人は元気そうです。
不思議!!!
2024年10月1日
葉っぱが1枚増えました。
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水をやる回数は増やしていないので土は依然カラカラですが、枯れることなく生きています。
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2024年10月8日
少しづつ葉っぱが増えていきます。
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2024年10月15日
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2024年11月13日
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まだ芽のような姿のまま、中心に花っぽい器官ができ始めました。
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2024年12月4日
花が咲きました!!!
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植物の姿形は全然コミカンソウらしくありませんが、花はまさしくコミカンソウ。
よく見ると、ちゃんと雄花も雌花もついています。
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コミカンソウを飾っていた時に、サボテンの鉢にこぼれ落ちた種が発芽したようです!
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こっちも可愛い。
2024年12月24日
果実ができました!
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そもそもの植物が小さいままなので、実も道端に生えているコミカンソウのものよりもかなり小さいです。
でもちゃんとミカンの形!すごい!
年明けに実を割って中を見てみたのですが、種はできていませんでした。
確認するのが早かったのかもしれません。
【嬉しかったこと】
雑草はどんなに綺麗に除草しても、またすぐに生えてきて、お庭を草むらに変えてしまいます。
そのため、簡単に生えると思ってしまいがちですが意外とそうでもないのです。
雑草が生きていく場所は、頻繁に人によって邪魔がはいる場所です。
踏まれたり、刈られたり、除草剤を撒かれたり、結構過酷です。
そのため、雑草の多くは「人によって邪魔されること」に適応した共通の特徴を持っています。
その一つが、「簡単に発芽しない」ということです。
園芸品種やお野菜など、人が育てるために品種改良した植物は、わりと簡単に一斉に発芽します。
その方が育てる側にとって都合が良いですし、発芽したらちゃんと人に育ててもらえます。
一方で雑草は、みんな一斉に簡単に発芽してしまったら、全滅する危険性があります。
気候の安定しない野外でのサバイバル、しかも人によって根こそぎ除草されてしまう確率が非常に高い。
そのため、発芽タイミングを慎重に見計らいます。
さまざまな気象条件が揃わないと発芽しない上に、一斉に発芽せずダラダラと発芽してリスク分散をします。
むやみやたらに発芽しない賢さ、すごく好きです。
「雑草は育ってほしくないところでは良く育つわりに、育てようと思うと全然育たない」ということを耳にしますが、実際に育ててみてそんな雑草のツンデレな部分が垣間見れてなんだか嬉しかったです。
ほんとにそうなんだ〜〜!!
と思いました。
そしてもう一つ、雑草の特徴は
「環境条件によって成長度を変化させる柔軟性」
です。今回、カタバミもコミカンソウも野外で見るほど立派な花や多くの種を残しませんでしたが、小さくてもきちんと花を咲かせ結実していました。
彼らが生育していた私の部屋は、太陽の光が少なく、養分もかなり限られた、生育の条件としては悪い場所。
ここで無理に大きくなろうとしたり、たくさん種をつけようとして頑張った場合、養分が足りずに種をつける前に死んでしまう恐れがあります。
これでは本末転倒です。
彼らの最大の目的は、次世代を残すこと。
つまり種をつけることです。
それならば、十分な成長は望めなくても、数は少なくても、とりあえず種をつけた方がいいのです。
もちろん条件が良ければより大きく成長して、たくさんの種をつけます。
ここでも自分の置かれた状況を冷静に判断して、無理はせず、目的を見誤らずに、行動する雑草の賢さや柔軟さが垣間見れます。
【不思議に思ったこと】
先ほど、雑草はさまざまな気象条件が揃わないと発芽しないと書いたのですが、この条件は種によって異なります。
コミカンソウがどんな条件で発芽するかは分からないのですが、なぜたくさん蒔いた植木鉢ではなくサボテンのほうで発芽したのでしょうか?
可能性のある理由を考えてみます。
①種子の保存の仕方が悪く、死んでしまっていたから?
種子の一般的な保存方法は、低温・乾燥・暗所保存だそうです。
なるべく種子の呼吸や代謝を抑えることで、寿命を伸ばすことができます。
今回、私は種子をビニール袋に入れて引出しの中に保管していました。
日中は部屋にいないことが多いですが、夜は冷暖房を入れて過ごしています。
そのため、温度や湿度の変化が大きい環境と言えるかもしれません。
でも、それなら引出しの中よりも、窓辺のサボテン鉢の中のほうが環境の変化はより大きいように思います。
また引出しの中のほうが圧倒的に暗いので、保管には向いていそうです。
この可能性は低いのかな?と思ったりします。
それに、ビニール袋に入れていた種子を虫眼鏡でよく観察しても、表面がカビたりしている様子はありませんでした。
試しに余ったビニール袋保管種子を、もう一度サボテンと同じ土の観葉植物鉢に蒔いてみました。
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これで無事に発芽したら種は生きていることになります。
②発芽にはある程度長い間、光にあたる必要があるから?
引出しの中と鉢の中の大きな違いは、光が当たるかどうかです。
もしコミカンソウの種子が発芽する条件が
「ある一定の期間光が当たり続ける」
だった場合、引出しの中だとその条件が満たせなかったのかもしれません。
自然の中では、「長期間暗い環境=地中深い場所」と考えられるので、そんな場所では簡単に発芽しないようになっていると推測できます。
③乾燥した条件でないと発芽しないから?
植木鉢とサボテン鉢で異なっていた条件は、水分条件です。
今回、植木鉢は表面が乾燥したら適宜水をやるようにしていました。
一方でサボテン鉢は、水やりは月に一度程度、土もかなり水捌けがいいものでした。
ある程度成長した植物ならばまだしも、発芽したての双葉がそんなカラカラな場所で生きていけるとは思えません。
実際、植木鉢のほうで育てたカタバミは、ある程度大きくなってからでも土の表面が渇くと葉が萎れていました。
が、サボテン鉢のコミカンソウは枯れることなく実をつけました。
どういう仕組みかは分かりませんが、コミカンソウはかなり乾燥に強いと考えられます。
これは大きな長所です。
他の植物ならばすぐに枯れてしまう環境でも生きていけるのであれば、その長所を活かさない手はありません。
逆にカラカラに乾燥した場所で積極的に発芽して、光や養分などの競争相手がいない場所で生きていこうとしている可能性があります。
野外でコミカンソウを見ていると、真夏のアスファルトなどでも元気に生きている様子が観察できます。
【最後に】
想像していたコミカンソウ栽培と違っていて、とても面白かったです。
上で書いたことは全部推測で、あまり根拠がないのですが...。
もしコミカンソウの発芽について調べている文献などあれば、とても嬉しいです。
出典:身近な雑草の生物学/根本正之・冨永達