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映画のキャッチコピーの極意は人間観察だった

みなさん、映画は好きですか?よく観ますか?
今は動画配信サービスが充実しているので、映画館だけでなく家のテレビや通勤中にスマホで映画を楽しむ人も多いはず。

最近、仕事で映画ポスターのキャッチコピーを考えました。公開前の作品のストーリーや世界観を伝えるための重要なコピーです。

名作映画のコピーを参考にしたり、上司からコピーに対するフィードバックをもらうなかで、広告にはない映画独特のコピーの付け方があることに気づきました。 「映画のキャッチは深くて普遍でなきゃいけない」そのことについて今回はお話しします。


「よし、観よう!」と思わせるキャッチコピーって?

案出しの参考にいろんな映画のキャッチコピーを見ました。そのなかで映画のコピーならではの切り口だなと感じたのは【匂わせで好奇心を刺激する】【感情に訴えかける】もの。

【匂わせで好奇心を刺激する】

コピーだけ切り取ると想像以上に「何それ?」となるものが多い。例えば『怪物』と『LIFE!』のキャッチコピー。

だーれだ

これは”怪物”のセリフなのか、”怪物”なのは「だーれだ」の意味なのか。

この映画には「!」がある。

「!」が示しているのは驚き?気づき?感動?それとも…

これらのように、作品の世界を明確にせず、匂わせるコピーは映画のポスターや小説の帯に書かれていることが多いなと思います。
『紅の豚』のコピーも印象的です。

カッコイイとは、こういうことさ。

これがもし化粧品のコピーだったら。かっこいいモデルのビジュアルと商品が並んでいても、あまり刺さらないはず。

たくさんある化粧品の中で手に取ってもらうには、雰囲気を匂わせても効果はありません。使用感や仕上がりなどその商品の特徴をはっきりと理解してから買いたいですよね。商品コピーと匂わせの相性はイマイチです。

しかし、これが映画のポスターとなると、ビジュアルのダンディな豚がどういったかっこよさを見せてくれるんだろうか、はたまたこのダンディな豚以外の何者かが見せてくれるんだろうかと気になりませんか?

あえて内容には触れず、「何それ?」となる一言で匂わす。「食べればわかる」「使えばわかる」は簡単には通用しないのに、「観ればわかる」は観客の好奇心を刺激します。ポスターを見た人が作品の展開を予想したり、「結末が知りたい!」と思わせる効果的な手法です。

【感情に訴えかける】

感情に訴えかけるメッセージが多いのも映画ならでは。
わたしがいいなと思ったのは『キングダム』『キリエのうた』『アフターサン』のキャッチコピー。

夢があるから、高く翔べる

作品の勢いを表現しつつ、こちらの心も揺さぶる熱い一行。

「家はありません。歌しか、うたえません。」

切なさの中にある「歌」という希望に胸がきゅっとなる。

太陽が見えたらたとえ離れ離れでも一緒にいるのと同じ。

まるで子どものころ誰かと口にしたような表現がどこか懐かしくて、淡い気持ちにさせます。

人間の形容しがたいさまざまな心情をうまく言葉にしていたり、ちょっとダサいけどわかるんだよなというものがあったり。自分宛ての手紙のメッセージのようにぐっと心を動かされるパワーがあります。

「映画のキャッチは深くて普遍でなきゃいけない」

わたしが考えたコピーを上司に見せた時に言われたこの一言が印象的でした。ここでいう「普遍」とは「広く行きわたること」。

わたしがこれまで仕事で扱ってきたような商品のコピーと、映画のコピーは考え方の根本から違っていたのです。

商品のコピーは、たくさん売るために明確なターゲットを想定して、彼らが興味を持ちそうな内容を書きます。それがターゲットに刺されば成功です。

一方で、映画は年齢など大まかなターゲットはありますが、できればターゲット関係なく、興味を持ってほしいし観てほしいものです。
そのためには多くの人に理解してもらったり、おもしろそうと思わせる必要がある。

つまり、みんなの共感を得ることがコピーが一番機能するということ。

でも、誰がいつ見ても「なんだかいいな」「そうだよな」と思わせるのは実はかなり難しい。
”普通”はつまらないけど、”普遍”でなきゃいけない。紙一重の言葉選びだなと思います。

映画のキャッチコピーは人間観察から生まれる

映画は娯楽産業でありカタチを持ちません。だからこそ、作品の何に焦点を当ててキャッチコピーにするのかが難しく、わたしはいくつ書いてもあまりピンときませんでした。

『仁義なき戦い』『あなたへ』など東映作品のキャッチコピーの多くを手掛ける映画惹句師・関根忠郎さんは人間をよく見ることが重要だといいます。

1本の映画のコピーを考える時、その1本だけにとらわれないことが大事かと。人間社会を透視することが重要です。よく外国映画は「世界が泣いた!」「今世紀最大の傑作」とかつけますが、そういうものを僕は自分に禁じています。それよりも、劇中の人間ドラマを引き出すというのが僕の役目です。

コピーを書く場合、まずは自分の周囲でもいいから人間を観察することです。僕のコピーはだいたい人間を題材にしていますから。とにかく人間をよく見なさいということです。

映画のコピー“惹句”の極意とは?唯一無二の映画惹句師・関根忠郎さんに聞くより

観るのはもちろん人だし、多くの作品の中で描かれているのも「人間」の世界。
作品の内容だけに向き合うのではなく、「人間社会」という大きく広い眼で捉えて書く。さすが映画惹句界の巨匠です。

上司が言っていた「深くて普遍」なキャッチコピーも、人間をよく見ていなければ書けないなと感じました。

みなさんもぜひ、映画館に足を運ぶついでに、気になるキャッチコピーを見つけてみてください。


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文:マキ

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