新人コピーライター、初めてネーミングの仕事をした話
私の所属するコピー部では、週に2回オンラインミーティングを行なっています。主な内容は、業務の進捗報告、情報共有。ごく普通のチームミーティングですが、最近新たな枠を設けました。
それは「最近気になったもの」です。
テーマや内容に関する制限はきっちり設けず、基本的には自由。毎回1人トーク担当者を決め、ほかは聞き手となります。
ただの雑談と言ってしまえばそれまでですが、クリエィティブの仕事をする上で必要な発想の引き出しを増やすことが目的です。
自分にない経験や知識を取り入れるにはやはり他人の話を聞くのがベスト。自らの経験や意見をまとめ、言語化し、分析するため、トーク担当者もアウトプットする力が磨かれます。
気負いすぎずに、みんなが普段どんなことに興味関心を抱いているのか見聞きする場に。
そんな感じでゆるく、やってみよう、と始まったのでした。
舞い降りた初めてのネーミングの仕事
始めてみると思いのほか盛り上がり、楽しい時間になりました。週末に観てきた展示会、Twitterで気になる人、日本語の絶妙な難しさ、洋画のタイトル、など様々なネタが挙がり、質問や感想も活発に飛び交います。
始まって3、4回目の頃、一人がふと呟きました。
「このコーナー名前がないよね」
そう、ゆるく始めたが故に特別な名を設けずにいました。
毎回、業務の進捗報告が終わると「じゃあ "アレ" 始めようか」「今日の "アレ" 担当誰だっけ」と "アレ" として切り出されるようになっていました。
担当者も「では、え〜…始めます」というように、呼び名がないので何を始めるとも言い切れずぬるりと口を切ります。
暗黙の了解で何をするかはわかるのですが、ひとつの取り組みとして呼び名があった方が便利。ということで新人である私がネーミングを考えることになりました。
初のネーミングのお仕事です。
しばらく頭を悩ませ3つのネーミングを考えました。
意味はこんな感じ。
みなさんだったらどれに投票しますか?
そしてコピー部で選ばれたのはどれだと予想しますか?
結果として採用されたのは
「こぴっくす」
でした。
自分が考えたにも関わらず拍子抜けしました。
何を隠そう5秒で思いついた案が全員一致で採用されてしまったから。ほか2つはちょっとかっこいい響きとか意味を求めて少なからず「こぴっくす」よりも考えたのに。
直感的な発想が良かったというよりも、じっくり考えたものがあまりにセンスがなかったのだなと、ヘコみかけの私。
しかし、先輩と上司に「こぴっくす」を選んだ理由を教えてもらい、そこにはネーミングに重要な3つの視点があると気づきました。
「こぴっくす」が選ばれた3つの視点
①呼びやすさ
文字数や語感は言葉の響きに影響します。
その点で「こぴっくす」は、圧倒的に呼びやすく、覚えやすい。「私の最近のこぴっくすは…」と切り口に使いやすい、と評価されました。
②わかりやすさ
ネーミングには意味や背景が必要です。
しかし、どんなに意味が巧みでも複雑すぎると伝わりません。
コピー部のトピックス、そのままだけどそのくらいシンプルな方が理解できる、という意見がありました。
ネーミングこそ、理解されて初めて、他人の印象に残ります。
かっこよさだとかおしゃれな意味づけを追求してしまっていたなと反省。
③相性のよさ
ネーミングがそのモノに合っているかどうか、親和性が大事です。ここがちぐはぐすると違和感に繋がります。
おしゃべりに近い和気あいあいとしたこのコーナーの雰囲気には、スマートな響きより、丸くポップな響きが合います。文字に関しては、ひらがなやカタカナがベター。
同じひらがな案の「しるしるみしる」ですが ”知って織って見る目を養う” には、有益かつ高尚さが求められるようでハードルが上がる、という意見がありました。
"使われる" ネーミングって?
まとめると、ネーミングを考える上で重要なのは
①呼びやすさ
②わかりやすさ
③相性のよさ
を意識すること。
それは難しいことではなく、ネーミングを使う人、つまりユーザーを思いやることで自然と意識されるということに気づきました。
使い勝手や印象を考慮することで、ユーザーに受け入れられる、"使われる" ネーミングとなるのです。
これまで、世の中の商品やサービスを見て「そのままじゃん」「単純すぎるけどいいのか」と思うことがしばしばありました。
でも今思えばそれらは全て "使われる" ことを考えたネーミングでした。
私(ユーザー)が「そのままじゃん」と目に留め、認知している時点で、ネーミングとして成功しているのかも。
私の考えた「こぴっくす」は使われるネーミングとして成功するのでしょうか。楽しみであり、心配でもあります。
新人コピーライター、初めてのネーミング仕事は先輩方の温かく的確なフィードバックのおかげで大事なキホンを吸収することができました。
今後に活かし、よきネーミングができるコピーライターを目指します。
【おまけ】
同期のデザイナーにロゴをデザインしてもらいました。
自分のネーミングがロゴとして形になったことに感動しました。わーい。嬉しい。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
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文:マキ