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ちょっと頑張る
【頑張らないこと】を一度やめてみようと思う。
ここ数年「頑張らないことを頑張る」をテーマに頑張ってきた。結局のところ、頑張ってきた。
そのおかげで随分生きやすくなったし、ひと付き合いがかなり楽になった。
昔に比べたらはるかに、ひとの話を聴けるようにもなったし、客観的にその場にいられるようにもなった。
だけど、頑張らないことに限界を迎えた気がする。
頑張らないことが“ただただエネルギーが低い”ということに繋がるようになってしまった気がしたのだ。
以前のぼくは無理やり頑張らないと他者に認められない気がして、他者と深く交わることを捨て、ひたすらに浅いところで、相手にただ笑われるというところで関わろうとしてきた。
しかしその関わり方の虚しさを知っている。
そしてその関わり方の限界を迎えたときに演出家の鄭義信さんに出会い、舞台上のぼくに対して何度も何度も「よしお、頑張らない」ということばをかけてくれた。
舞台上で頑張らないようにするには日常から頑張らないということをしなければ何も変わらない。
きっと舞台上では【頑張らない】を続ければ良いのだ。
一方で、日常では今までよりも少し頑張る。
きっかけはもちろんある。
偶然、元AV監督の方のお話を伺う機会があった。
仕事上、多くの女優さんと話をしなければならず、その中でコミュニケーションスキルが磨かれていったそうだ。
その方の笑顔はとても柔らかく、誰でも受け入れてくれるような物腰を持っていた。
どんな時でも笑顔でいる。
皆が疲れていても、自分はエネルギーを分け与えられるようにする。
三箇条を授けてくれたのだが、最後の一つを失念してしまった。改めてメモを読み直そうと思う。
ただ覚えている二箇条が今の自分にとって、必要なことだと思ったからこそ覚えていたのだと思う。
頑張っていないとき、どこかムスっとしている感覚が我ながらあった。
別に怒っているわけではないのだが、もしかしたら怒っていると見られてもおかしくはない。
そしてぼくは疲れているときほど、頑張らないことを意識していた。
そんな時は他者との関わりすら遮断して、とにかく独りになっていたことを思い出す。
今回、ぼくが授けられたことは少し頑張らないと上手く回っていかない気がしている。
頑張らないを捨てるわけじゃない、やめるだけ。
いつもより大きな笑顔をしていると思ったら
「あ、よしおは頑張っているんだな」
と思って、柔らかく受け入れてください。