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親から見たN中等部・N高等学校②

2022年4月10日、N高等学校入学式が行われた。
我が家の長男も、いっぱしの新入学生としてスタートを切った。
「親から見たN中等部・N高等学校①」はこちら

この年の入学者数は6000人以上らしい。
N高等学校・S高等学校(2021年開校)・N中等部の合同入学式という形で開催。『メタバース入学式』と題して行われた。

前年に、長男がN高への入学を決めた後、2022年度からメタバース空間で学ぶコースが新設されることを、個別の電話などでかなりPRされたことを思い出した。

コロナ禍で注目されたメタバース技術。
近い将来、街中をヘッドセットをつけて歩くような未来になるようなことになるのか⁉ のような感覚もあり、興味を持って入学式に参加した。

さて、そのメタバース空間で開催される入学式。
登壇者もアバターで登場しつつ、時折リアル動画に切り替えるなど、メタバース空間とリアル空間、アバターと実物のハイブリッド形式の開催となっている。

N・S高の本校、沖縄・つくばにもバーチャル空間からひとっ飛びで行けるのは当然として、そこからの中継はリアル画像、といったように、見る側の興味に合わせた演出も工夫されていた。
前年のN中等部の入学式は、会場からの中継のみ、というところからのパワーアップ度合いがとにかくすごかった。

※2022年度アーカイブはこちら
 なお2023年度はメタバースDX入学式、2024年度はAI入学式と題されて実施されている。

メタバース入学式の様子①
メタバース入学式の様子②

さて我が家の長男、N高の数あるコースの中から、オンライン通学コース(週3回)を選択した。
N高等学校(S高等学校も)のコース選択は、必須とオプションの2種がある。

必須は「ネットコース」。高卒資格取得のための土台になる部分である。
これを通常の高校で当てはめると、
【日々の授業に出席する】  
 →オンラインでのレポート提出と、年間に数日間のリアル参加授業への出席(スクーリング)
【担任との面談】
 →メンターとの定期的なオンライン面談
【中間、期末試験】  
 →1月ごろの学期末試験。この結果で単位が認定され、進級や卒業が判定。

という関係になる。
これ以外のサポート的な位置づけで、補習であったり、N予備校などのサポート、メンターをサポートするTA(ティーチング・アシスタント)と呼ばれる大学生などの存在も心強いところ。こうした部分も生かしながら、しっかり、きちんと取り組むことで、高卒資格を得ることが出来る仕組みになっている。

そして、もう片方、オプションの中に、「通学コース」「通学プログラミングコース」「オンライン通学コース」が設定されている。
「通学」がオプション、というところがN高等学校のミソ、というか、N高等学校の制度を理解するには近道だろう。
これらは卒業資格に直接関係しない課外活動の位置づけであり、校内での部活動や生徒会、友人との交流機会に近い。
さらに、3つのコースとも、週何日といった選択肢がその先にあり、それぞれ時間割・カリキュラムは設定されている。

長男が選択した、オンライン通学コース(週3回)では、N中等部でも行われていた"21世紀型スキル学習"と呼ばれるプロジェクト型学習、グループトーク・ディスカッション、プログラミング学習、英語授業が実施される。
加えて、Nラウンジと呼ばれる場所が、月~金の朝から夕方まで開設されている。ここでは、生徒はもちろん、メンターやTAさんも常駐しており、リアルでいえばカフェテリアやラウンジで気軽に声をかけたり、質問をしたりする場として活用されている。
さらに、オンライン通学コースの生徒対象のリアル交流の機会の設定もある。参加は任意で、長男は、東京大学の見学やUSJでのイベントに参加した。
ネットコースだけでは広がりの少ない、生徒同士との交流の場が格段に多く設定されることがメリットだろう。


さて、ここからは、親から見たN高3年間の印象的な出来事と感想を。

<スクーリング>
通信制高校でも、体育など卒業に必要な必修科目でリモートでは実現できないものがあり、年間出席日数が学校ごとに決まっている。
通学日数が少ないことを特徴にしている学校もあれば、合宿機会で設定し交流機会の充実を特徴にしている学校もある。

N高のスクーリングの特徴は、多くの方が書いている通り、2年次の本校スクーリングだろう。
N高の本部は沖縄県うるま市にあり、長男も2年生の春に4泊5日の日程で参加した。
大阪伊丹空港から初めて一人で飛行機に乗り、那覇空港でみんなと合流後、バスで宿泊ホテルへ。
ホテルでは「初めまして」の生徒さん達と相部屋で過ごし、バスで毎日学校とホテルを往復する。

実は、何か月も前から、連日連夜「行きたくない」発言を繰り返していたが、帰ってきたら何のことはない、大いに楽しめた5日間だったらしい。

N/S/R高校の違いは、この本校スクーリングの場所だけ、といってよい。
N高の沖縄では、海でのアクティビティや観光体験、S高のつくばでは、サイエンス関係の体験、新設されるR高の桐生では富岡製糸場見学などが予定されているようだ。

N高校本部の所在地。
那覇空港から2時間くらいの距離。

<テスト・進級>
高校である以上、進級・卒業のためのテストは存在している。
N高では学期末にリアル校でテストを受け、合格点に達していない場合、追試を受けることになる。
追試は、次しくじると進級できない、というプレッシャーを感じる言葉だが、追試はオンライン受験となるため、教科書などの持ち込みも暗黙、ということなのだろうか。
ということで、長男も追試になった教科は、楽々突破となる。

<進路指導>
いろいろな特徴が多いN高で個人的に最も秀逸と感じたのは、進路指導。
1学年6000人もいれば、それこそ多様な進路指導が必要になる。
その多様性に対応できるだけの経験が、既に備わっていることを強く感じた。
生徒の希望・能力と、大学・専門学校・就職といった進路先の特徴や情報とをマッチングさせ、進路指導の場でアドバイスしていく、という流れ。
長男の話から、数多ある進路先の引き出し(情報数)を相当持っているであろう様子が、会話の中から伝わってきた。

進学校であれば、大学の情報には精通していても、就職の情報はほぼないと想像する。
この多様な時代、1学年6000人の生徒の進路指導をしっかりやれるだけの情報を持っている、ということは、親からしたら、本当に心強い。

長男は、1年次にメンターとの対話の中で、鉄道系の専門学校の選択肢を示された。
そして自分で学校を調べ、時に私と一緒に見学に行き、自分の進む道をしっかりと見定めることに繋がった。
生徒が自走できるように手助けする、
まさに「コーチング型」の進路指導だろう。

そして、来春の卒業まであと半年となった長男は今、
AO入試で、希望する専門学校への進学が無事に決まった。
専門学校1年次の秋冬から就職活動が始まることを思うと、1年後には就職に向き合うことになる。
親としては、ここからの1年、
ここでしかできない経験を、自分の意思で行動することで、しっかりと積んでいってほしいと願うばかりである。

最後に、
ネットでの学校は、当然、人に直接会うわけではないので、当初は「本当に大丈夫なのか?」という気持ちもあったのだか、
振り返ってみて、むしろメリットだったと実感している。

長男が通ったフリースクールや公立小学校というのは、リアルな場所で接する人数も限られていた。
あの延長だと、狭い人間関係の中で生きていくことになったであろう。

例えば、イジメや人間関係がうまくいかないなどネガティブなシーンにおいて、
リアルな場所では、狭い空間(教室・学校という建物)や傍目からの逃げ場がなく、本人はもちろん親も、安心安全感覚の中で過ごしにくい。

ネットの学校では同じ事象が生じても、リアルな空間で同じ息を吸う必要がなく、この差はメンタル面で大きいのではないだろうか。

また、友人や人間関係を築くという点でも、接する人数が、フリースクール時代・小学校時代からは格段に増えたことも、長男にとって大きなメリットとなったと思う。
限られた人数の中で友人関係を築く場合、どうしても自分が我慢して合わせないといけないシーンは多いだろう。
これがネットでの繋がりだと、自分が無理して付き合う必要性が薄れ、本当の意味で趣味が合う仲間を見つけやすい。
リアルな友達はまだ少なくとも、時折カメラ持って鉄道写真を撮りに行く仲間はできたようで、不登校の時に引きこもっていたことを思えば、格段の変化だ。

多様性の時代と言われて久しく、
会社でも、「過去を壊すことから進化が始まるんだ!」という掛け声もある。
しかし、実際のところは、あまり変えられていないやり方がまだまだ多い、というのが現実であろう。

一方でN高は、これまでの通信制高校の仕組みを今の時代にアップデートすることで、
全日制高校で学ぶ方法と、通信制高校で学ぶ方法という異なる選択肢があることを、世の中に提示できたことが本当に素晴らしいことで、多様性の具体化という点では、これ以上ないモデルケースだろう。

2024年8月時点でのN・S高在籍生徒数は、なんと3万人を超えているそうだ。
通信制高校全体では、29万人。
2024年度の学校基本調査では、
全国の高校生は290万人となっているので、通信制高校に通う生徒が10%、そのうちN・S高校在籍者は、全高校生の1%を超えてきている。

まさに、この学校が、現代のニーズにより変化してきていることを実感できた3年間であったし、
これからの時代の変化にも柔軟に対応していく、進化し続ける学校であり続けるのだろうと想像している。

我が家では、次男が来春から高校生になる。
N高等学校への出願を無事に終えた。
きっと次男にとっても、人生にとって大切で充実した3年間になるだろうと確信している。

【イベント告知】
2024年10月26日(土)に我が家の長男によるN中等部・N高校のリアル、をお伝えします。

詳しくはこちらをご覧ください→
【イベント告知】オンライン開催/現役N高生に聞いてみよう! N中等部・N高等学校ってどんなところ?

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