見出し画像

L:56 パン屋のクチコミに見る「評価」とは

2024.3.4

2024年は1週間7万歩、歩くことを目標にしている。今のところ、9週間すべて達成できている(誇らしげ)。散歩の楽しみの一つは、パン屋や和菓子屋を探して、そこをめがけて歩き、何かしら買って帰ることだ(カロリー的には黒字というか、歩いた以上のカロリーになっている)。

今日、書きたいことはそのことではなく、お店のクチコミ(評価)についてだ。私はお店探しをするときにgoogle mapを使っている。お店が載っている場合、「クチコミ」という項目があり、そこに星5つでの評価とともにその店で買った人(時々、買ってない人もいるが)が文章で感想なり評価なりを書いている。

パン屋、和菓子屋、洋菓子屋の評価を見るとき、知りたいことは、おいしいかどうかだと思う。あとは、値段に見合うかどうかあたりの情報を期待して見ている。

しかし、いろいろ読んでみるとパン、ケーキ、和菓子の味の評価、感想というのは、定型文に近い

  • 外はカリッとしていて、中はもちもち。

  • ふわふわのとろっとしたクリームが…

  • 小麦の香りが感じられて…

  • あんこは甘すぎず…

  • ぺろっと食べれちゃう

みたいな感じで、誰が、どの店について書いても同じような感想・評価になる。読んでいて目新しい文というのはほとんど見かけない

あとは、値段に見合うかというところで、コスパ、高い、安い、お手頃、大きい、小さい、みたいなことが書いてある。

よくよく読んでいると、特に長いものについて読んでいると、多いのが店員の話やサービスの話だ。しかも、どちらかと言えばネガティブな方が多い

  • 接客が悪い(無愛想、態度が悪い)

  • ポイントカードでもめた

  • うるさい、狭い

  • 店の中の匂いがどうのこうの

  • お店の人がとても親切でした(好印象)

みたいな感じで、お店での不快(快)な体験を長く書いてあるものがけっこう多い。
味はおいしいが…という感じで、味のこと以上に話が長い

例えば、レストランでは料理を含め、その場で時間を過ごすような場合、店の人間の態度は評価の一部になるというのは理解できるのだけど、持ち帰りの場合、せいぜい数分の話ではある。
語弊のないように言えばたとえ数分でも、それがそのお店での体験そのものに対する評価だということは理解できる。

問題は、こういった感想・評価を書くときに、私たちは「書きやすい(言語化しやすい)」ことを書いていて、なんとなくとか、言語化できない(感想・評価)部分は書かれていないということだ。

味の感想というのは、食べ物屋においてかなり重要なはずなのだけど、その表現(言語化)というのは、かなり限定されている。食レポが難しいのはそういう部分なのだろうし、「味の宝石箱や〜」みたいな表現も、正攻法ではどうしようもなくなって行き着いた表現に思える。

一方で、出来事ベースの嫌な体験というのは、一連の出来事の描写、そしてどう思ったかというのは、表現としてはかなり幅広く、オリジナリティを持って書ける部分が多い。おそらくネガティブな体験の方が、感情的な強度も強く、書きごたえがある。

本来なら、パン、ケーキ、饅頭の味の評価が本筋だとは思うのだけど、そこは感覚の部分で言語化が難しいのだ。おいしい!めっちゃおいしい!めちゃめちゃおしい!やばっおいしい!の中に言語化できない評価や感想が詰まっている。

今の社会は評価社会と聞いたりもするが、何をするにしても「評価」というものがついて回って、当然「評価が良い」ことは良いこととして扱われる。ただ、それは「言語化できる良い点がある」にすぎないということなのだ。

世の中には「言語化できない良い点がある物や人」というのがかなり多くあるのだと思う(むしろ、そちらの方が大きいのかもしれない)。同時に、そもそも私たちが「評価」できていると思ってるのは、運良く?言語化(数値化)できる「部分」で、それは「全体」ではないんだろうと思う。

人間は言葉を扱えるというのが他の動物に比べて独自で秀でていると言われるが、言葉が扱えるが故に、言葉で表現しない(できない)と、意味がないというふうに縛られているようにも感じる。

評価できる(言語化できる)部分を過大に見てしまう恐れがある。クチコミには、「ここのパンはなんとなくおいしいです」とは書かれないが、なんとなくおいしいってそれはパン屋として十分にすばらしい。

口コミを読むと、かなり先入観が入ってしまうし、ついつい評価4.0以上の店を選んでしまうが、評価に表現されない部分の価値も見ないと、評価軸がずいぶん偏ったものになる恐れがある。

それはパンやケーキだけでなく、人やサービスもそういうところが多分にある。「言語化できない良い点がある物や人」をおろそかにしたくないものだ。

*写真は和菓子屋になっちゃいました。ちなみに和菓子屋は、店主について評価が書かれることが多い印象。

いつもより、ちょっとよい茶葉や甘味をいただくのに使わせていただきます。よいインプットのおかげで、よいアウトプットができるはずです!