「好きなものをゲームにする方法note版3」アイデアを具体化させる
「好きなものをゲームにする方法note版」は、創作の基本的な原理と流れを、実戦形式で体験する講座をテキスト化したものです。
池袋コミュニティ・カレッジで開催された全6回のワークショップ「米光一成のゲームづくり道場」(2018年4月~9月)をベースに再構築しています。
今回はステップ3。
以前の回はこちら↓
では、ステップ3「アイデアを具体化させる」です。
■小さく作って大きくしていく
ここからは、具体的なものにしていく段階です。
でね。
まあ、最初はやる気あるじゃん(笑)。
カードに落とし込むときにやりがちなのが、いきなり80枚とかすごい枚数を、凝ったデザインで作り出すこと。
ーーああああーーーー(笑)。
で、やってみると面白くなーいっていうね。そこで諦めちゃう、みたいなことが起こるので、最初は枚数少なく作ったほうがいいです。
80枚作るので、力尽きちゃう。
力尽きなくても、面白くなかったときに、これをまた修正するのか、うぐぐってなっちゃう。
ぼくは、最初は20枚以内って決めてます。
20枚以内はほとんどゲームにならないから、最終的には32枚、36枚になったりするんだけど、まずは20枚以内から。
気楽に作れるのがいいところです。あと、20枚だと、どうしても無理があるから、削りに削って本質の部分しか作れない。そこが、またいい。本質しかないから、どこがまずいとか、どこを伸ばせばいいかがわかりやすいです。
大学でゲームづくりを教えてるとね、いきなりね、コンピューターゲームで、3Dで、ファイナルファンタジーみたいなの作りたいですって人がすごい多くて。やめろと(笑)。1年間でそんな大作れたら天才だからね。自分がすごい天才だと思うならやれって言ってる。でもやるんだよなあ〜(笑)。
小さく作って大きくしていくのがベストです。アナログゲームはいくらでも改善できるしね。
■カード枚数が少なくても面白いゲーム
というわけで、カードの枚数が少なくてもゲームはできるよっていう例として、いくつか紹介します。
たとえば、タンサンファブリークさんの『ディビジョンズポーカー』。たった4枚で遊べる、じゃんけんの複雑版みたいなゲームです。
4枚でもゲームとしてちゃんと成り立つわけですな。
これはGOTTA2さんの『GET9』。戦略性の高い2人ゲームです。1人9枚、計18枚のカードを使います。
あと、有名なのは、カナイセイジさんデザインの傑作『ラブレター』。ゲームカードは16枚です。他に、追加カード6枚と、遊び慣れた人用のテキストレスゲームカード22枚、トークン12個も入って、豪華パッケージになっていますが、本質的には16枚で遊べる。
大塚健吾さんのカイジみたいな心理戦が楽しめる2人用ゲーム『シノミリア』は23枚。
他にも枚数が少ないゲームはたくさんあります。
逆に、枚数が多いゲームも持ってこようと思ったんだけど、カバンに入らなくてあまり持ってこれなかった(笑)。これは『レッツキル! 』っていって、カードが110枚入ってる。
殺す方法が書かれたカードがたくさん入ってる。こういうのって、ゲームそのものの面白さよりも、殺し方をたくさん考えて絵にするっていう方向に創作の情熱が向けられてる。
持ってこれなかった『Cards Against Humanity』は、ボックスに、何枚ぐらいだろう、300枚ぐらいのカードが入ってます。倫理に反した質問の書かれた黒カードと、それに対する答えの白カードがあって、その答えを見て面白がるっていうゲームです。パッケージに書かれていた具体例を挙げると、「セックス中に何を考えますか?」という質問があって、答えカードにいろいろよくないことが書いてある。まあ、これは、20枚でも成立するゲームで、それが凄い枚数あって、えんえんと深夜の雑談みたいにドロドロやっていくのが楽しいんだと思う。
こういうゲームもありますが、今回我々はそんなに枚数を多くしないほうがいいと思います。
というのも、パッケージを統一する予定だからです。
アイデアを具体化させる
■完成予想図シート作成
プロトタイプを作ってきている人やら、まだ作ってない人やら、バラバラだと思いますが、作ってない人はここで即座に作ろう。
ーーえー?
プロトを作って、後半はチームを組んで、回らないかもーっていうのもふくめて、ひとまずプロトをやってみる。
やってみるといろんなことがわかるので、そこを改善する。
という流れです。
その前に。
配ってあるシートを見てください。
作る前に、完成予想図を作っておいたほうがいいです。
それがマイルストーンになります。
ぼくは、最初のころはゲームを作るのに時間がかかってたんだけど、そのときは完成図は頭のなかにだけあったの。
作ってみても、すぐには完成図にはたどりつかない。で、ルール足してみて、完成図と違う方向で面白くなっても、そっちを作りたくなっちゃう。しかもそのあとにゲーム会とかで別の面白いゲームをやると、こういう要素も欲しいとかってまた足す。そうやって、目標の山に登らずに隣の山ちょっと登ってまた降りて、また隣の山ちょっと登ってっていうのを繰り返していた。
これはまずい、
完成図をいっこ作って、そこを目指してひとまず作ろう。隣の山は後日登ろう。最初の目的地からなるべく外れないほうが、変な迷路にはまらなくてすむ。もちろん捨てる勇気もときには必要だけどね。
というわけで、うろちょろ迷わないためにも、完成図をシートに書く、ということをやっておきます。
この完成図というのはゲームのルールの完成図じゃなくて、最終的な、遊んでいる雰囲気の完成図です。ルールは入れなくていい。ルールは試してみたら成立しなかったってことが、実際に作ってみるとよくあるので。
そうじゃなくて、遊んだときこんな感じになったらいいなーっていうイメージだけはブレないようにする。そのほうが作りやすいと思うので、イメージを固めるためにもシートに書き込んでもらいます。
もうすでにプロトを作ってきた人は、そのプロトがいちばんうまく回ったときはこんなかんじになればいいなーって想像して、シートを埋めてみてね。
まず、シートのいちばん左上に「作品タイトル」を書いてください。
その隣に「プレイ人数」。何人から何人まで可能か。てきとうでいいです。
「目的」。これは勝利条件のこと。勝利条件って言うと狭めすぎなので目的にしてみました。
たとえば、ぼくいま、「走るメロス」ってゲームを考えてて。あ、タイトルはね、「走れメロス」をそのまんま使うのに抵抗感があって、ちょっともじってみた(笑)。
それは、いろんなメロスカードがあるの。走るメロスに泣くメロス、怒るメロスとかある。せーのでプレイヤーがカードを出すんだけど、そのときそれぞれが違うメロスを出すのが目的。
「アクション」。プレイしている人がどういう動きをするか。たとえば手札を出して1枚引くとか。手札をどんどん出していってゼロにするとか。
「手段」。目的を達成するためにどういう手段があるのか。
ぼくは「手札を見て考えて、えいやーって出す」と書きました。ってこれ、ぜんぜん伝わんないかもしれないけど、自分ではわかってるのでだいじょうぶ。
「順番」。ゲームの流れです。ゲームには、親から右回りに一人ずつやっていくものもあるし、せーのどん! で一斉にやるものもあるし、トランプのスピードみたいに、出せる人がどんどん出すものもある。どういう流れなのかをざっくり書いてください。
次、「序盤、中盤、終盤」って項目があります。
これは、序盤、中盤、終盤にプレイヤーがどういうふうにわくわくしているか。いま、ぼくが書いてるのは、序盤「てきとうに出す」、中盤「悩んで出す」、終盤「これしかないなーって出す」。この程度でいいっていう例ね(笑)。
「逆転」。こんなかんじで逆転するっていうのを書く。
たとえば、「カードを集めすぎると負け」とか。
そういう逆転する感覚みたいなのがあったら、そこを書くといいです。
だいたいのゲームには逆転の要素があります。特にプレイ時間が長いゲームは、逆転の要素がないと面白くない。前半にあの人が勝つって思って、最終的にその人が勝つパタンばかりだったら、後半やってる意味が薄くなる。
いま考えている「走るメロス」はすぐ終わるから逆転する要素があんまりないです。だから「すぐ終わるからない」って書いてある(案の定、だいぶ違うゲームとして完成します)。
「奇跡」。
プレイしているときに「わー奇跡おこったー」って盛り上がる瞬間があるとしたらどんなシーンか、書いてみてください。
たとえばすごろくで、6が出たらぴったりあがりってときに6が出るとかね。
ぼくの場合は、「全種類のメロスがかぶらずに出ることで、うわーってなる」。そういう予定です(笑)。
シートには、吹き出しが何個かあります。ここに書くのは、プレイが盛り上がっているときにプレイヤーがどんな感想を声に出すか。
「かぶったー!」「これはだいじょうぶ!」「これでかぶるかー」「全種類出たー」「これはラストに取っておこうかな」「それ出ちゃうかー」「やばい、出すのない」とかね。
そのプレイヤーの感情が動いたときの心の叫び、もしくは、思わず口に出しちゃう言葉。
どういうかんじで面白いのか、イメージしてないと書けないので、それを書くためにプレイしている様子をイメージしてください。
吹き出しに囲まれた真ん中の四角は、こう、プレイしてる様子のイラストとか、カードがどういう状態になるのか、みたいなイメージを描いてね。
で、最後、「キャッチコピー」。宣伝文句を書く。
ぜんぶ埋めると、プレイイメージが1枚のシートにまとまります。
■質疑応答
じゃあ、書いてみますか。いきなりやってだいじょうぶ?
わかんないことがあったら聞いてください。
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