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バカになって本質をつかむ方法「好きなものをゲームにする方法note版2」

「好きなものをゲームにする方法note版」は、創作の基本的な原理と流れを、実戦形式で体験する講座をテキスト化したものです。

池袋コミュニティ・カレッジで開催された全6回のワークショップ「米光一成のゲームづくり道場」(2018年4月~9月)をベースに再構築しています。

今回はステップ2。全部で6回の予定。また講義全体をまとめた別バージョンを電子書籍(Kindle)で6月リリース予定です。

6月リリース電書版か、他の記事も読める「表現道場マガジン」をオススメ。


第2回目。
ゲーム化する過程で、いちばんのキーとなる「バカになって本質をつかむ方法」を実践しています。このメソッドができるようになると、バカになるだけでいろいろつかめちゃうのでぜひ!

ステップ1はこちら↓

それではステップ2「作品からアイデアを膨らませる」です。

■作品決め

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今回は、だいたいどういうゲームにするか決めますよ。どの文学作品をゲームにするかを選んできてくれてると思うので、どういうゲームにするか決めていきます。決めたらプロトタイプを作って、それで次回、みんなで作ってきたのを遊びましょう。

ーーええ? 展開が早い!

でしょ(笑)。プロトタイプを作るのはテンポよくやるのがコツです。だいじょうぶですよ。ちゃんとそこまで、今日やるんだよ。


というわけで、シートを配っているのでそれを見てください。

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作品からゲームをイメージする

右上に、ゲーム化してみたい文学作品のタイトルを書いてください。まだ決めてない人がいたら、いま、テキトーに自分のいちばん好きな作品を書けばいいよ。かぶったらかぶったでいいかもね。ゲーム文学全集第1巻・走れメロス、第2巻・走れメロス、第3巻・走れメロス、みたいな(笑)。そのへんは随時決めていきましょう。

では、いまから、こんなゲームになるといいなあ、というイメージを作ってみる、というワークショップをやります。

■つまんないアイデアで止まる原因3つ

作品を選んだ時点ですでに、イメージを決めている人もいると思いますが、それはいったん、引き出しにしまいましょう。

アイデア出しで、つまんないアイデアを出すコツが3つあるのね(笑)。ひとつ。「いいの出たー」って思うとダメです。思いがちなんだけど、これは失敗の元です。「このアイデア、いい!」って思ったら、そこで止まっちゃうんですよ。どんどん出して、出揃ってからこれいいねって判断したほうがいい。

もういっこ。正解だと思っちゃうのも危険です。たとえば「走れメロス」=日没までに走って戻るゲーム。これが正解だと思っちゃうと、他のアイデアが出なくなります。ゲームってエンターテイメントだから、新鮮さは大事です。「うわ、こんなのあるんだ!?」、「こんなことやったことなかった!」っていう体験には喜びがあるよね。凡庸なものはつまんない。正解じゃないほうが、えてして面白いです。

あともういっこ。できないと思うこと。自分の好きな作品、これゲームになんないわーって思っちゃうと、そこで止まっちゃう。あのね、できないわーと思ったものができたときのほうが、絶対面白いっす。不可能だと思ったものができてるってことは、新鮮なものができてるってことだから。

なので、この3つ「いいのが出たと思う」「正解を探す」「できないと思う」をやらないようにすること。

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■ワーク1 作品の要素分解をする

作品のタイトルはもう書いた?
では、書いたやつの要素分解をします。

シートの15マス3列、合計45の空欄に、作品に出てくる要素を書き出していくの。
手元にテキストないからわかんないよーって人も、曖昧な記憶で、オッケーよ。
たとえば、「走れメロス」だったら、「メロス」「走る」「邪智暴虐の王」。この邪智暴虐って言葉がカッコいいんだよね! あとは「セリヌンティウス」。なんであいつは何ヶ月も会ってない友達の依頼で人質になっちゃうんだろう。まあ、これも調べるといろいろあるんですけど。それからキーワード、「竹馬の友」とかね。王の名前「ディオニッソス」とか、「孤独」、「3日目の日暮れまで」、「妹」「結婚式」。妹もかわいそうなんだよなー。お兄ちゃんのせいで、急に結婚式しろって言われて。「宴会」、あとシーン的には、橋が崩れるんだっけ。「橋が崩れる」。あと、王の手下の悪いやつが襲うんだっけ。「悪いやつ」。あと、寝転がってて、もう疲れたーでもがんばるーみたいなシーンあんだよね、たしか。みたいなかんじで、キーワードを書きます。

こんな人いたな、こんな言葉あったな、こんなシーンあったな、テーマこれだなとか、なんでもいいです。書きたいだけ書いていく。制限時間を決めて一気に。もう書いてる間、呼吸しない勢いでね(笑)。とりあえず5分で。

ーー作品が決まってないときは、要素がたくさん出てきやすい作品のほうがいいですか?

いえ、要素がたくさん出にくい作品でもいいです。

ーー出にくい作品のほうがいいですか?

いえ、出やすい作品でもいいです。好きな作品でいいよ。45個ぐらいの要素はあるから。逆に要素がそんなにない作品があったら、めっけもんです。

5分だと、45マスあるから8秒に1個書くぐらいのスピードで、ばんばん書く。間違ってもいいから書く。そもそも間違いとかないからね。よーいスタート。

ーー調べてもいいですか?

もちろんオッケーです。別にあのー、国語のテストではないからね。

(5分経過)

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同じレイヤーのものを探す

はい。5分でござるー。
書けた? では、書き出した項目のうち、同じレイヤーにまとめられるものを見つけて、丸をつけていってほしいんですよ。
たとえばね、「走れメロス」だったら、「盗賊」「橋壊れる」「濁流」「寝坊」、これらはすべて「妨害」というレイヤーでまとめられるものだよね。「走れメロス」の物語の構造として、メロスは友達を人質にして日没までに戻るぞーと言うのだが、途中、妨害がある。その妨害は複数個ある。つまり妨害というレイヤーにまとめられるわけです。

作品のなかでコレクションされているものがあるか探す

もしくは、作品のなかで、コレクションできるものがあればそれでもいいです。たとえば『桜の森の満開の下』は、盗賊が惚れてかどわかしてきた女の人が「首を狩ってきてー」って言うんだっけ? で、盗賊はいろんな人の首を狩ってコレクションする。そういうコレクションできるもの、もしくは、作品のなかで同じレベルだけど違う言葉でたくさん書けるものに丸をつけてください。

これ、伝わったでしょうか。抽象度が高くてわかりづらいかな。
カードゲームにするときに、複数個あるものはカードに書きやすいので。それをピックアップしよう、という段階です。

レベルがあるものを探す

もうひとつ、同じもので違うレベルのものもあったら、それもピックアップしてみよう。たとえば「走れメロス」で「友情」って書いてたら、ここでは友情レベルが問われてるわけじゃん。友情レベル1、友情レベル2、友情レベル3っていうふうに。それも多数あるものとして考える。

どういうふうにカテゴリー分けするかは人それぞれの考え方によるので、好きにやっていいです。「走れメロス」の「妹」はたくさんいないから丸をつけないって考えてもいいし、キャラクターというカテゴリーの複数のキャラの一人と捉えて丸をつけることもできます。

次の段階に進むときの引っ掛かりにする、というだけなので。なんとなく考えて丸をつけてみてください。よーいスタート。

ーーレイヤーがいくつかある場合は、印を変えたほうがいいですか?

はい、変えてみてください。好きなつけかたでいいです。

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■ワーク3 一回バカになって考える


(時間経過)

丸つけた? では、ここからじょじょに、どんなかんじのゲームになるといいかなーって考える段階に移っていきます。

どんなふうにしても失敗しないと思うんだけど、失敗する唯一の道筋は、ぜんぶをちゃんと表現しようとすること。無理だから諦めてください。
たとえば「人間失格」の話そのものをひとつのゲームのなかで表現するのは無理です。

つまり、作品のどこをピックアップしてゲーム化するかがポイントになってきます。そのために、みなさんには一回バカになってもらいます。

とはいえ、みなさん賢いですからね。いきなりバカになれと言われても難しいだろうと思って、5つのバカを挙げてみました。

・一番のメインしか覚えていないバカ

(「走れメロス」の例)メロスめっちゃ走る

・最後しか覚えてないバカ

(例)メロスが全裸

・一番どうでもいいことを覚えてるバカ

(例)邪智暴虐って言葉がかっこいい

・欲望が激しく動くところしか覚えてないバカ

(例)寝転がって「起きたくねー」

・国語や道徳の点数は高いバカ

(例)友を信じる力は尊い

それぞれのバカになってもらって、作品について一言で説明してください。「メロスめっちゃ走る」ぐらい簡潔にね。これも5分くらいでいけるよね。よーいスタート。

ぜんぶ書けた人は、他のさまざまなバカになってみて、付け足してもいいですよ。

作品からゲームをイメージする
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■情報共有

はい。書けたでしょうか。では、4人チームになって、見せ合って雑談してみますか。

(時間経過)

けっこう予想外な状況でびっくりなんだけど、かぶってるのは1作品だけでした。「注文の多い料理店」です。意外だねー。


■ワーク4 失敗と成功を書き出す

では、進めます。いま、バカになって書いてもらったのは、国語の授業でいうところの「作品の本質をつかむ」ってことをやったわけです。いろんな人がいろんな方法でまとめてみた。これをゲーム化するいちばん簡単な方法は、その作品の本質から、成功と失敗を導き出すことです。勝ち負けと言ってもいい。たとえば「メロスめっちゃ走る」だったら、成功と失敗は、日没までに間に合う、間に合わない。「メロスが全裸」だったら……、あれ、なんで全裸なんだっけ?

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