おいしい歳時(12月、「おでん」)
おでん。
寒い日のおでん。
12月も半ばを過ぎて、一日中働いた後に寒くて風の強い外を自転車で走る。手はかじかみ全身が冷えて強張っている。なんとか家にたどり着き、ドアを開けてリビングに入るとダイニングテーブルの上には夕食の準備が。ガスコンロにかけられてテーブルの上でくつくつと煮えている、おでん。
さて、いま、あなたの脳を直接攻撃している。寒い日が続くなかこの言葉を聞くだけで頭の中にはぬくぬくとしたイメージが溢れたに違いない。
おでん。
昆布としょうゆの効いた黄金色の出汁、味がしゅんでる大根、各種練り物、ツルッとしたタマゴ。書いているだけでたまらない。すぐにおでんを食べたい。いまあいたいすぐあいたい砂漠の真ん中で。
個人的にはおでんを作るのは面倒だけれど、嫌いではない。作る過程のコツコツ感と鍋を開けた時のわぁッという達成感。でもあまり手の込んだことはしない。冷凍してある昆布を鍋の水につけておき、味付けは白だしめんつゆ酒で適当に。練り物は、ちくわ、ごぼてん、ひらてん。卵はゆで卵を6個ほど作っておく。あとは、ジャガイモは皮を剥いて一個丸々、大きめに切ったにんじんと一緒に鍋の底へおき、火が通りにくいから先にコトコト煮込む。火が通れば、他の具材を入れる。この時にチルドのシュウマイとアルトバイエルンを忘れずに。おでんのシュウマイとソーセージは最強だ。全体に一度火を通して冷めるまで置いておき、食べる前にもう一度温める。てまえみそになるが自分で作るおでんはかなり美味い。
それでも、やっぱりお店のおでんって美味しいですねぇ。京都に行きつけとは言わないまでも美味しいおでんのお店をいくつか知っているけれど、個人的ベストは京都市営地下鉄北大路駅から徒歩圏内の「つじい」。ここはもう、店の雰囲気が美味い。木のカウンターでおばちゃんがよそってくれるおでんは感動的であつあつであじしゅみで芥子をがばっと皿の縁に塗って出してくれる。(冒頭の画像はつじいのロールキャベツ!)特におすすめはシュウマイとロールキャベツと大根。すべての具材がたっぷり出汁を吸っていて齧るとジュワァ。そこにビールやハイボールや、熱燗や芋のお湯割りなんかをぐっと。寒い季節だから温かい酒もいいし、おでんが熱いから冷たい酒もいい。冬の時期は混みますので、早めに予約して是非北大路まで。
でも、「おでん」というと自分の中で1番思い出されるのは、大学時代だ。次の日は講義なのに夜11時に暇な友達と集まってドライブする。目的地はなく、ぶらぶらと京都まで走って山の中のしーんとしたコンビニに車を停める。そこで買う、おでん。大根と白滝とちくわをプラスチックの容器に入れて出汁を注ぐ。寒空の下でハフハフ言いながら食べるコンビニおでん。あぁ、あの頃のくだらない空気と、忙しく暇な日々と、冬のおでん。たまらない。
あなたの脳を直接攻撃しながら、こちらの脳みそがやられてしまった。今週はおでんを作ろうと思う。