丸井グループ社長が2人の子育てから学んだ「仕事と家庭」の両立-あなたの読み聞かせ履歴vol.8
ESG経営、将来世代と共創、「伝統的企業」ながら時代の先をいく丸井グループ
青井 浩社長の読み聞かせ履歴
言語化コミュニケーションは、子どもたちが世界へ羽ばたく上で欠かせない。
仕事に追われ参加できなかった1人目の子育て。その悔しさから、2人目の時は仕事帰りに読み聞かせ。
絵本の面白さは対話。歴史を土台にした創作物語に、絵をつけてくれた子どもとの幸せな時間は今も覚えている。
「ゴルフをしない」という選択。仕事と家庭を両立するために意識したのは「何をやらないか」
【あなたの読み聞かせ履歴書】第8回は、丸井グループ代表取締役社長の青井さんをゲストにお迎えし、インタビューしました。幼少期の読み聞かせエピソードを深ぼる通常の「あなたの読み聞かせ履歴書」コーナーとは一味違い、保護者視点での「お子様との読み聞かせ」エピソードを伺いました。
YOMY!と丸井グループとの関係性は、丸井グループが主催する25歳以下の将来世代を対象にした新規事業創出プログラム「Future Accelerator Gateway 」に由来します。テーマは「社会課題を解決するための新規事業」。始めは、面白いビジネスアイデアを考えよう!と思って参加した私たちでしたが、最優秀賞とオーディエンス賞をいただき、プログラム終了後も本格的にビジネスとしての取り組みを進める方向へと舵を取ることになりました。
読み聞かせには、息子とのたくさんの思い出が
青井社長が審査員をしてくださった時におっしゃっていた言葉です。
(青井社長)今回お話もらって、僕が読み聞かせを子どもにした思い出っていうのが結構あるので、詳しくお話しできたらと思っています!
その前に、YOMY!って、ダイアローグ的な読み聞かせをされていますよね?そこをまず深く聞いておきたいなと思っています。
(安田)はい、YOMY!では、ダイアロジック・リーディングという読み聞かせ方法を取り入れています。これは、元々アメリカの親子が読み聞かせをするときに、たくさん対話をするというのがあって、その読み聞かせを研究し、体系化したものになります。たくさんの論文で子どもたちの語彙力や文章構成力、共感力などの効果が証明されていて、そのダイアロジックリーリングを土台に、子どもたちの「自分を表現をする力」を育む独自メソッドを開発しています。
(青井社長)具体的にはどんな読み聞かせなのですか?
(安田)例えば、まだ小さな3、4歳の子だと、 まず絵本を見ながら「何が見える?」と問いかけます。例えば、子どもが「うさぎさんが見える」って言ったら、「そうだね、白いうさぎさんがいるね!」 や「耳の長いうさぎさんがいるね」ということで、少しずつ言葉を覚えていく。実際に、語彙力や言語力の向上が研究などでは報告されています。
アメリカだと、言語の発育に障害のあるような子どもたちのトレーニングにも使われているみたいです。もう少し大きくなると、答えのない質問、例えば「自分が主人公だったらどうする?」や「次何が起こると思う?」と聞いて、想像力を膨らませたり、自分なりの意見を考えたり、生活と繋げたりして理解を深めます。
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日本の子どもたちが、世界へ出ていく時に必要な力を
(青井社長)なるほど、アメリカと日本で違いが結構出そうな感じもしますね。
(今井)そうですね。YOMY!でも初めは慣れていない子どもたちも多くいます。質問をしても、とりあえず「わかんない」と答えたり、ときには子どもが発言していると、お母さんが後ろで「静かに聞きなさい!」なんてこともありました。
やっぱり図書館とかでも、大人数で静かにじっとお話を聞くっていう体験がやっぱ今まで多くて。それはそれでもちろん、お話に集中できたりいいことはあるのですが、私たちの読み聞かせでは子どもたちが自分の思いを伝えるというのを大切にしています。
最初は慣れていない子も、1ヶ月とか2ヶ月経ってくると、だんだん自分の意見を言ってくれるようになるんです。
(青井社長)そうだね、アメリカってよくshow and tellっていうコミュニケーションの時間はあったり、言語化するコミュニケーションが得意なイメージ、一方で日本はもうちょっと控えめというか、非言語的なコミュニケーションが得意のような違いがあるように思いますね。
(安田)そうですね、以前にアメリカの図書館に行った際には、子どもの絵本のコーナーではお話ししていいよみたいなマークがあったり、保育園や小学校では小さな時から子どもたちが自分のことを話す習慣って多いと聞きました。また、YOMY!でも、show and tellを参考にしたあいさつタイムを導入しています。
(青井社長)それはいいですね、これをきっかけに世界に出ていく時に、モードが切り替えられるといいかもしれないですね。
仕事帰りの読み聞かせ
2人の子育てから学んだこと
(青井社長)対話というと1つエピソードがあります。私には2人子どもがいるんですが、2人目の子育ての時だったかな。最初の子の時は残業が多く、休みの日も仕事があったり、週末はゴルフに行かなきゃいけないとかで、本当に忙しくて、 あんまり時間が取れなかったんです。 2人目の子どもの時には、社長になっていたのですが、少し落ち着いて、家族のために時間を使いたいとすごく意識していました。
そんな時によくしていたのが読み聞かせ。休みの日だけでなく、平日でもできるのがいいですよね。寝る時間に帰ってきてもできるから、2人目の子には、結構読み聞かせをしていました。
最初は、本を読んでたんですけど、だんだん本を読むんじゃなくて、僕がお話を創作して読むようになったんです。 くたくたガチャピンっていう、すごい可愛いガチャピンのぬいぐるみを抱っこしながら、腹話術のように!最初は、教育的な意図を込めて、歴史的な要素を入れていたんですけど、まあそれは不評で(笑)
あるときに、口から出任せて、即興で思いついたことを適当に話をしてみたら、それはすごい喜ばれて!子どもも「お話、お話♪」みたいな感じで、笑いながら聞いてくれたんです。
そしたらある日、お話した翌朝に、話したことを絵に描いて、見せてくれたんです。
僕が話したシーンを、こういうシーンとして受け取っていたのか、みたいなのがわかって、すごい面白くて。口頭で話したお話だから、字もなければで絵もなくて、その場で何か思い浮かんだイメージを、絵にして返してくれるっていうのが、興味深かったですね。
あと「よく描けてるね」とか褒めたりすると、また絵を描いてくれて、自分はまたお話を考えてみたいな。これも一種の対話のような気がしましたね。当時のことは、すごく良い思い出に残っていて、僕もすごく幸せでした。
(今井)それはお子様が何歳ぐらいの時ですか?
(青井社長)3歳とか4歳ぐらいだと思いますね。絵を描いたりするのが好きだったのかな。今でも絵とか描いてますけど。
(安田)その時が、「アート」との出会いだったのかもしれないですね。子どもの時の思い出、「上手だね」とか言ってもらった経験って、大きくなっても残ってると思うんです。どんなお話をつくっていたのですか?
(青井社長)即興のお話は、どこかで聞いたことあるような話を参考にしていて、クタクタガチャピンが、歴史上のいろんなところに登場するっていう設定が多かったんです。
例えば、宇宙に行くエレベーターがあって、ずっと登っていくと、雲を抜けて、成層圏にくる。まだまだこう続くんですけど、どこまで行っちゃうのかなと思って、ふと振り返ってみたら、「地球が青かった」って言ったりして。あの旧ソ連のガガーリンの言葉なんだけど、これを子どもが絵にしてくれて。
(3歳のお子様に、人類初の宇宙飛行士、ガガーリンの言葉「地球は青かった」にかけたお話しをする青井社長!)
(今井)実はYOMY!で1番人気の絵本が、エスカレーターがどんどん伸びていって、宇宙にいくお話なんです!(まえだゆうきさんのぼくエスカレーター)
(青井社長)戦いでオオダコが襲ってくるお話では、主人公がパンってタコ切ったら、それで、たこ焼きを作るとかね。その、バーってなんか切ってるところとかの絵をすごい細かく描いてくれて。
(安田)もう親子で絵本出せますね!
根比べの読み聞かせ
「ハリーポッター」は事前に読み聞かせ練習
(青井社長)あと面白かったのが、なんでかわからないんだけど、子どもって同じ絵本を何度も何度も繰り返し読んでくれって言いますよね。「ほねほねザウルス」(ぐるーぷ・アンモナイツ・作、岩崎書店・出版)は、50回くらい読んだ覚えがあります。
(安田)子どもって何回読んでも飽きないですよね。YOMY!でもよく、「同じ絵本を読みすぎて、毎回、私が寝落ちしちゃうんです。」というママパパもいらっしゃったりします!
(青井社長)もう、ここまで来たら根比べみたいになって、その絵本はとことん読んでやろう!って思っていましたね!その後は「かいけつゾロリ」(原ゆたか・作、ポプラ社・出版)とか。「ハリーポッター」(J・K・ローリング・作)も全部読みましたね。ハリーポッターはすごい難しいんだよね。翻訳だし、疲れちゃうんですよ。しょうがないから事前に練習したりして、すごい辛かったですね!(笑)
(今井)事前練習されていたんですか!僕も、おばあちゃんにいつもハリーポッターを読んでもらっていたんですけど、難しすぎて毎回寝て、毎回同じとこから読む。全然進まなくて、「賢者の石」(ハリーポッターシリーズの第一巻)が一生終わりませんでした!
(青井社長)年齢によって、読み聞かせの仕方も発展していったり、段階があるのかなって思いますね。なんかこう、キャッチボールができたっていうのは、すごく思い出に残っていて、嬉しかったなあ。対話の双方向性が、読み聞かせに取り入れられることはすごいいいなと思います。
(安田)そうですね。絵本はそれ自体が、保護者にも子どもたちにも、対話のきっかけを与えてくれるような存在ですよね。
1つ目の質問が予想以上に盛り上がりつつ、次のお題へ。
育児休暇の学びは全てに繋がっている
(安田)丸井グループはウェルビーイングを意識した経営をされている中で、さまざまな働き方改革が行われていると思います。この記事は特に子育て世代の方が多く見ていらっしゃるので、中でも「子育て」に焦点を絞ってお伺いします。
丸井グループも子育て世代の社員さんは多くいらっしゃると思いますが、何か取り組みなどは行われていますか?またもしその背景にある、青井社長の考えがあれば教えてください。
(青井社長)男性の育児休暇にはすごく力を入れていています。
日本全体では今 17パーセントですが、( 男性の育児休業取得率:17.13%「令和4年度(2022年度)雇用均等基本調査」)4年程前からずっと100%です。
一方でまだ、2週間以内の短い人が多かったんです。今は半年、1年、人によっては2年ぐらいの長期取得を増やそうとしています。22年度には1カ月育児休職を取る男性社員が2割くらいに増えてきました。
これは働き続けやすいようにというのも理由の1つですが、男性もやっぱり育児とか家事に携わった方がいいんじゃないかっていう考え方があります。これは、僕自身が昔は忙しくて、妻や子どもとの時間を過ごせなかったことにすごく悔しさがあることも背景にあります。
やっぱり生活が充実していると、その人の人生を豊かにする。それって必ず、仕事にもフィードバックされると思います。例えば、家庭にいると、家計をどうやりくりしているのかわかったり、赤ちゃんが泣いている場面に出会ったり。赤ちゃんとは、言葉だけではやりとりができない、どうしようもない、そんな状態から、段々と人が成熟していく姿を見ていく。
この時間ってとても大切だと思います。こういうことは、仕事の邪魔になるわけではなく、全部つながっている。ワークとライフをもっとこう融合していくことが大切ですね。
「何をやらないか」
青井社長流の仕事と家庭の両立
(安田)青井社長ご自身が仕事も家庭も両立させるために気を付けてることはありますか?
(青井社長)まず、「何をやらないか」が重要です。例えば、ゴルフを週末にすると、家族との時間が減ってしまいます。私は社長になったときにゴルフをやめました。
(安田)ゴルフを!何かその決断についての反響は?
(青井社長)実は、中学生に向けて講話をした際、一番驚かれたのはこの話でした。 「経営という仕事」というタイトルで話したんですけど、講演会のあとにもらった感想文に一番多かったのが「ゴルフしないことにびっくりました」でした(笑)
彼らの中では、多くの人が社会人、特に社長がゴルフをするものと考えていたんですね
ゴルフを10年やらないことで、約2年分の時間が他のことに使えます。この時間で家庭や他の重要な事に注力できます。 社交的なパーティーの場よりも、友達や仲間と集まるのが好きですね。
(安田)いいですね。中学生もびっくりするようなお話で、聞いていると青井社長は大企業の社長でありながらもどこか、「今までの枠にはとらわれない」印象を受けました。 私たちYOMY! も、絵本を届ける時に、子どもたちには「枠にとらわれない」を意識して設計しています。
例えば、絵本市場にある絵本は7割が旧作を占めてたりとか、いつまでも昔話では「おばあちゃんが川に洗濯に行って、おじいちゃんが芝刈りに行く」、男の子が主人公の絵本は女の子が主人公の4倍あったりと、
絵本にはまだまだジェンダーバイアスや古い価値観が残っています。 そこで、SDGsや多様性を配慮した絵本選びを意識して、新しい価値観を形成する活動に取り組んでいます。
全員がマイノリティ、新しい価値観を作る上で大切なこと
(安田)青井社長はこのような新しい価値観を企業として作っていかれていると思うのですが、意識されていることはありますか?
(青井社長)古いというだけでダメというわけではないですが、その人がその人らしく生きることを妨げるようなバイアスや抑圧みたいなものがある時は、しょうがないでは終わらせられないですね。 自分は迷惑被ってないから「いいや」っていう風に目をつぶるのは良くない。昭和的な軍隊のような考え方や、高校野球って坊主刈りにしないというルールとか。
人ってそれぞれがどこかでマイノリティであり、そのような状況で生きづらさや自分を偽らなければならないような苦しい経験があると感じています。特にLGBTQの方や障害を持つ方もそうですし、特に目立った障害はなくてもコンプレックスがあったり、なんか変わってるのかな?と違和感を感じてしまう場合もです。 そういう不自由を感じることに対して、憤りや怒りはありますね。
僕自身もそういう経験があるので、もし自分がリーダーシップを取れるなら、「そんなのおかしいよ」「やめていいよね」と、これらの問題を改善したいと考えています。リーダーはそれができるチャンスをもっていて、チャンスがあるのであれば、もうぜひやったらいいんじゃないかなって思います。
暴力に対する最高の復讐は、それをできる立場になった時にやらないこと
(安田)そのリーダーシップの考え方は、いつから持つようになったのですか?
(青井社長)ずっとあったと思いますね。子どもの頃に家庭教師をしてくれた人が僕は一番尊敬する人なんですけど、こんな話をしてくれたことがあって。彼は高校生の時、地方の野球部だったんです。昭和の文化って、1年生は奴隷のように働いて、3年生になったら天下をとって後輩をいじめるような文化があったんですけど、それを変えたいと思って、3年生になった瞬間に、そういう文化をなくしたと言ってました。
また、五常の 慎さん(慎泰俊氏:五常・アンド・カンパニー株式会社代表取締役)も同じようなことを言ってました。彼は朝鮮高校だったからもっとハードな環境だったみたいなのですが、いじめが荒れ狂ってる学校の中で、生徒会長になっていじめは全部やめさせたみたいなんですけど、とてもかっこいいことをおっしゃっててね。
「被害や暴力、ハラスメントに対する最高の復讐っていうのは、自分がそれをできる立場になった時、それをやらないことだ。」
本当に尊敬する人です。誰もが何らかの形でリーダーになることってできると思うんですよ。必ずしも、総理大臣や大統領にならなくても、リーダーシップで取れる。日常生活の中で小さいながらも意義のある変化を起こすこと、これおかしいよね?ってことをやめるとか変えるとか、そういうことがリーダーシップにとって大事なことだと思います。
将来世代に委ねるのではなく、共創していく
安田)YOMY!は、「社会課題を解決する新規事業を作りなさい」というテーマから生まれました。そんなきっかけを下さったのは丸井グループが主催する25歳以下対象の新規事業創出プログラム「Future Accelerator Gateway」です。青井社長から見たYOMY!のサービスについて、ぜひお声を聞かせていただけませんか。
(青井社長)未来を作っていくのは、やっぱり将来世代の人たちだと思っています。なのでFuture Accelerator Gateway に参加していただいて、 これがきっかけで事業化してみようというのは、非常に嬉しいです。
一方で、じゃあ全部次の世代にお任せって言って委ねてしまうのではなく、一緒に共創できたらいいなっていうのが僕の願いです。いい意味で、利用もしてほしいし、例えば店舗やお金、クレジットカードを通じたお客様との繋がりなど活用して欲しいです。
私は、テーマ自体の良し悪しってあんまり感じていないんだけど、生き方とか、社会との関わり方として、必ずしも会社やお役所に勤めることだけが仕事の在り方ではなく、起業って選択肢もありますよね。
そして、なんで起業するかっていうと、自分たちがやりたいことやサービスが、この世の中にないからで、これを作っていくっていうクリエイティブなことって、大変だと思うんだけど、楽しさや、やりがいもあることだと思います。
思ってる通りになかなかいかないと思うんですが、試行錯誤していけば、必ずユーザーさんからフィードバックはもらえると思うので、それにしっかり応えていけば形になると思います。僕達にできることがあれば、ぜひまたいってください。
(安田)ありがとうございます。リーダーシップの話は心にグッときましたし、こうやって、青井社長が将来世代にと、私たちに言ってくださることは、私たちは読み聞かせの中で次の将来世代の子どもたちに届けているので、同じように伝えていきたいと思います。
What is YOMY!
YOMY!は3-8歳の子どもたちを対象としたオンラインスクール。
幼少期にいろんな世界を冒険してほしい、様々な価値観に触れてほしいというところから「絵本」を題材に、日本の教育にまだまだ少ない”Output”に力をいれ、小さな時から「自分の意見を伝える力」、表現力を育むレッスンを届けています。
「静かに読むだけが読書じゃない」がコンセプト。
ハーバード大学をはじめ、アメリカの大学で長年研究されてきた「ダイアロジック・リーディング」を基に開発された読み聞かせ方法YOMY!メソッドのもと、子どもたちの思考力、想像力、そして対話力を最大限に伸ばします。
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