「ぼくは名たんてい」 木村研
雨あがり、ぼくは探偵ごっこをしていた。虫メガネで、足あとを追いかけていると、
「やってるな」
と、畑仕事から帰ってきたお父さんがいった。
お父さんはよごれた作業着を着替えてからうちに入って行った。
次の日から雨になった。
毎日、毎日、雨の日も、うちの中で探偵ごっこをしていた。すると、お母さんが、
「だれ? ドーナツを食べたのは?」
と、悲鳴のような声をあげた。
ドーナツ盗難事件がおきた。
「ボクにまかせて」
ボクは、早速捜査を始めた。
家にいたのは、おじいちゃんとおばあちゃん。それに、おじさんと、おねえちゃん。ママもいた。
順番に尋問をしていくと、ボクには犯人がわかった。だから、名探偵みたいに、
「犯人は、お父さんだね」
と、かっこよくいった。
「えっ。どうしてばれたの?」
お父さんは、いたずらっ子のように、ペロッと舌を出した。そのほっぺに、チョコレートがべったりついていたからね。
だから、お父さんのおやつはもうありません。お父さんは、きまり悪そうに、
「それじゃ。雨も上がったことだから、畑にでもいってくるかなあ」
と、外にでていった。
お母さんがお茶を入れて、みんなでお茶を飲んでいると、お父さんが悲鳴をあげた。
「おーい。事件だぞ。帽子を盗まれた」
事件です。
名たんていが、現場にかけつけてお父さんに聞くと、昨日畑から帰ってきて着替えた時に庭に置いた帽子が消えている、というのだ。
家の人は、だれも庭に近づいていないし、外から入ってきた人の足あともない。
さすがの名たんていもお手上げだった。
腕をくんで、空を見上げた時に、事件は解決した。犯人は、「たけのこ」だった。
お父さんが、ぼうしをかけておいたたけのこの背がのびて見えなかっただけだった。
でも、さすが名たんてい。おかげで事件は、無事解決しました。
(作者のことば)
推理クイズの本などをよく書いていましたが、子どもものは、殺人や誘拐などはつかいません。だから、科学的なものや観察力や注意力を使うものが多かったように思います。自粛で家にいる時間が多いようですから、子どもと一緒に科学実験などしてみるのもいいですね。
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