文学フリマに行った話 #大阪12
遠征してしまいました、文学フリマ大阪12!
東京の文フリには過去2回足を運んだのですが、
●出品されている本(zine:ジン)の多様さ
●それを丸ごと受け入れる「文フリ文学」の概念の大らかさ
●ダイレクトに感じられる書き手たちの熱量
●それを迎え撃つ読み手たちの熱量
●結果、会場に立ち込める自由な祭りのエネルギー
の全てが大好きすぎて、文学フリマと言うコンテンツにすっかり魅了されてしまっています。
で、沼り始めたオタクは(他の会場には、どんな本が出品されてるんやろう)って好奇心を広げてしまうわけです。
とりわけ、自分の出身地で開催されている文フリには、強く気持ちを寄せてしまうわけです。
当然、東京の文フリよりも、関西圏にゆかりのある出店者の比率は高くなるよね。
土地の色って、会場にも出店者にも作品にもきっと出るよね。
それ、体感したいなぁ。読みたいなぁ。欲しいなぁ。
ってなるわけです。
しかも大阪に行けば、関西圏のnoterさんたちにも会える。
あと今年は、創作大賞の応募作を書くために脳内がさんざん大阪に染まったので、わたしはちょっとしたホームシックである。
もう行かない理由が無いやないか。
と言うことで、
「大阪行きたい。せっかく行くから1泊2日で行きたい」(だから子どもたちヨロ)と夫に仕事の調整をしてもらい、晴れて大阪への切符をゲット。
最高に浮かれながら来場し、8作品を購入しました。
例によって素敵な本にたくさん出会ってしまったので紹介したい。と言うかします。
表示は購入順です。
著者紹介での敬称は省略させていただいてます。
noteをされている方は、topページのリンクを貼らせていただいてます。
ウミネコ制作委員会(うみねこせいさくいいんかい) 【か-25】
大賑わいやんか。
と言うのが、文フリの受付から会場全体を最初に見回したときの感想。
過去開催時のレポートや、参加された方のお話から、混雑率100%くらいのアットホームな賑わいを勝手に想像していたのですが、(東京は場所と時間帯によっては200%超え)
よそ見して歩いてたら確実に誰かにぶつかるレベルで、しっかり混んでる。
この大混雑を作っている本好きな人たちに親近感を覚え、うれしくてひとりでニヤニヤ。そして、まずは交流のあるnoterさんたちに会いに行くべくブース番号を検索。
カニゴー(か-25)で出店されているdekoさん、穂音さんを突撃しました。
初回のようにいちいち緊張で記憶を飛ばすこともなく、むしろお二人のお顔を遠くから見つけたらホッとして、うきうきと早足に。
「noteで交流してる方にリアルでお会いする」と言う衝撃に、耐性ついてきたのかもしれません。
dekoさん&穂音さんと手を振り合いながら再会のうれしさを味わいつつ、ラインナップ豊富なウミネコブースにうっとり。
単著の書籍が好みではあるのですが、〈ウミネコ製作委員会〉は素敵な共著だらけで、読んでみたい。って気持ちになる本がたくさんあります。
特に童話集とか。もはや本からエネルギーがはみ出てる感じがする。
おしゃべりしながらdekoさんの手作りくじを引いてキャッキャして、これどうぞこれもどうぞって小ぃちゃいお菓子が次々に出てくることにキャッキャして、お二人が首から下げられてた可愛すぎる「番頭」ネームホルダーにキャッキャしました。
どうしよう。オープニングからたのしいなぁ。
お二人から新刊を買わせていただいてお暇して、そのままお隣の<つるるとき子書店>に伺おうと思ったのですが、とき子さんもつるさんも、それぞれ接客の真っ最中。
少し待とう。と顔を上げると、ブースの斜め後ろ、会場の壁際にいぬいさんが。お声掛けしたら、いぬいさんもブースの混雑がやわらぐのを待ってらっしゃるところでした。
北海道からの遠征を労いつつ、わたしのダッシュトレーニングのような遠征も労ってもらいつつ、つるとき書店が空くタイミングまで壁待機。
つるるとき子書店(つるるときこしょてん) 【か-26】
いまチャンスですね。と、いぬいさんと一緒にお客さんの途切れた〈つるるとき子書店〉に移動。
つるさんとは前回の東京文フリでもお話させていただいたので、きっとお互いに「おひさしぶりです♡」な感覚だったはず。(図々しいですかね… よく ごく稀に言われます)
そしてとき子さんはきっと「はじめまして」と思ってくださってたと思うのですが、わたしのほうは密かに「二度目まして」と思っていました。
去年11月の東京文フリで、実はつるとき書店を訪れているのです。
つるさんの巧みな話術により「本はnoteで知りました」と正直に答えてしまったのですが、あぁこの人たちがつるときさんかぁ…と緊張拗らせ過ぎて自分のnote名をお伝えすることは出来ず、購入した本受け取るが早いかほとんど逃げ帰ってしまったのです。(←ただの不審者)
今はちゃんと名乗れるようになったし、なんなら緊張もせず会話だって出来るようになったし、我ながら大成長。
今回は文フリ当日の2日前に、つるさんが「日本自費出版文化賞」に入選されたと言う嬉しいニュースもあり、いつもに増してハッピーなオーラ溢れるつるとき書店でした。
つるさん本当におめでとうございます。
ブースの前で、いぬいさんが玄人の大声量で「ええッ!日本自費出版文化賞、受賞ッ!?」と宣伝されてました。3回も。
サクラの活きが良すぎる。
見本誌コーナー
みなさんと別れてからは、恒例の見本誌コーナーへ。
ここもしっかり混んでたなぁ。
でも、ここに置かれた見本誌全部をざっとさらわないと、わたしの文フリは始められないのです。
もちろん全ての本を開くわけではないけど、タイトル・装丁・ジャンルは全部確認したい。
会場を散策しつつ出店者の方とおしゃべりをして本を買う、って言うのは醍醐味なのだけど、「その日絶対見落としたくない本」みたいなのが無いか、予めここで押さえておきたいのです。
好き。と思ったら躊躇わずに手に取って本を開き、
気になる。と思ったら表紙に貼られている一言紹介を読み、それでも気になり続けたら本を開き、
本を開いて文章に恋したら、(やられた。好きです)とページに向かって告白。今回はけっこう、告白の連続だったような。
さらにその「好き」が、自分のなんだか大切なところに触ってくる時は(これは絶対に買って帰ろう)って、嬉しい気持ちでブース番号が書かれた表紙の写真をメモ代わりに撮影する感じです。
note、愛読書、本屋で衝動買いしてしまった本、三分の一だけ読んだ積読本…
とわたしの日々は常に読み物が控えているので(だけど速読めいたことは出来ない。その上自分でも書きたいんだから、もう時間が全然ない)、文フリはギャラリーを楽しむような感覚で訪れて、確実に読み切れると思える量の本だけを買うって決めてます。
なので買えなかったけど、好きだなぁ(買いたいなぁ)と思える本にはたくさん出会えました。以下、自分のための備忘録。
*
パレオパラドキシア【そ-53】/海老名絢
あかるい身体で
・テーマにされてる「身体感覚」を本当に感じられる詩だった
あやめし【し-10】/あやめし
そんなわけで、今日もおつかれさまでした。
・やわらかくて知的で凛とした文体。最初「あやしも」と読み間違えた
レズ風俗に行ったら風邪をひいた話
(※タイトルの漢字が正しくない可能性、そして文フリのカタログにもヒットしないので著者の名前もわからず)
・買おうとしてたのに、見本誌の写真を撮り忘れたせいで買い忘れちゃった本。今回最大の悲しみ。「やわらかくて気持ちよさそうだから女性の胸を触ってみたい」と思い立った著者(おそらくストレート)がレズ風俗に行ったときのレポートで、冒頭からなんだか分からないけど、ふつふつと笑ってしまう。スラスラ読めちゃうのは口語に近いカジュアルな文体だから、ではなく、恐ろしく文章が上手だから。お洒落なモノクロ写真がショッキングピンクで縁取られた装丁も最高にかわいかった。
EYEDEAR【ち-04】/有限会社EYEDEAR/百百百百[編]
文芸ムックあたらよ 創刊号・特集:夜
・流し読みしただけで、文章から変なオーラーが押し寄せてくる文芸誌。絶対好きなやつ、と思ったけど、ネットでも買えるかな?と思って保留。願わくば蔓緒さんの受賞作が掲載されたやつを買いたい。
*
その他、タイトルなどは失念してしまったけれど「好きだなぁ」と感じた本たくさんありました。見本誌コーナー、楽しい。
いのり 【け-32】
見本誌コーナーを出て会場に戻り、欲しいと思った本が重複していた「け」の列へ。
三題噺(さんだいばなし)では、「スプーン」「コップ」「海」「石」「指輪」「ノート」「木」の7つの題材から3つを組み合わせて物語が作られています。そして本を開くと樹形図のような目次が現れて、これもすごく楽しい。
7つの題材から3つをピックアップする組み合わせと言うことで、7C3=35通りだと思うのですが(そして収録されているのも35話なのですが)、紹介文には「36話収録」との文字。
見えない1話がどこかに収録されてるのか。
淡々とした不可思議の中に、五感が「ぐにゃ」っと刺激される一文が差し込まれている短篇でした。(わたしは「海」が絡む物語が好き)
人称の揺れ、物語に対してどう機能させたらいいのか設置された目的が不明の単語、主語抜かし、などにより、前触れなく不明瞭になる文章が意図的なのか恣意的なのかは測りかねるけど、この不明瞭が全く不快じゃないのはなぜなんだろう。
ものすごく正直な感想を述べてしまうと、コンセプトが先行したときに起こりがちな、数合わせめいた物語も混ざってます。でもそれを上回って楽しかった。買いたい。一緒に家に帰ろうね。と言う気持ちになる一冊でした。
もも商店(ももしょうてん) 【け-12】
見本誌コーナーではスキップしたのに、ブースで見ると「好き!」ってテンションになる本があります。こちらもそう。
シリーズで陳列されている食べ物イラストの本たちが可愛くてキュンとしてしまい、(どれにしようかな?)って、もはや中身も確認しないうちから選択モードに。
うめおかかさんとお話をするうち、どれも食べ物を題材にした小説だと言うことが判明しました。うんうん素敵ですね。買う。
「ご自身の食べたい物が書かれてる本を買っていかれる方が多いです」
と言われ、それぞれの目次を見ながら(あれもこれも美味しそうや)と一通り楽しんだんですが、ご自身の食べたいものが多すぎて決められず。
「どの本が、いちばんお好きですか?」
と逆に質問すると、迷われながらも<喫茶店>をテーマにされた本作をあげられたので、こちらを購入することにしました。著者が「自分でも好き」と感じる作品には、著者にとっても理屈不明の愛がこもっているような。(少なくともわたしはそう)そして、そう言う文章を読むと幸せな気持ちになります。
文フリカタログと実際購入した書籍名が違ったのですが、カタログの方の名前で紹介させていただきました。
森と1月(もりといちがつ) 【け-18】
大阪文フリ、来てよかった。
って、読後に放心した作品。
20ページの短篇「牛飼い」の最初の3ページを見本誌コーナーで読み、(わぁこれは、かなり好きなやつ)と確信めいて購入した本ではあったのですが、ラストまで読んだら想定の100倍くらい物語の階層が深くて、しかもそこで描かれていることに心から共感してしまった。
この方がアマチュアとか……ていうか、アマチュアってもはや何?(←noteではお馴染みの感覚)
「牛飼い」は、彦星が連れ帰るのを忘れた牛(喋る)を織姫が地上に返してやる物語。
ギャルの織姫がとにかく可愛い。牛が喋り始めたのに驚いて「牛ピ、しゃべれたんだ」って言った瞬間、なんかもう心臓を撃ち抜かれてしまいました。このギャル感が絶妙で、セリフがこれ以上リアルな口語に寄ったり、聡明さや品を感じさせるラインを超えて「無料素材のようなステレオタイプの粗野なギャル」とかになったりしたら、伏兵のように差し込まれるガチもんの描写と融合できなくなるんじゃないかと思うのです。
織姫が機仕事の師匠とうたう、天界の大きな蜘蛛の巣の描写が泣きたくなるくらい美しい。
彦星を呼ぶために川に入って鼓を打つ時の織姫の心情や、みんなで合唱する機織り歌の歌詞(小説に歌詞を挿入するってすごいハードル高いと思うんですが全く興醒めしない)に胸が締め付けられる。
ラストの文章の温度感も、最高に好きと思いました。
大阪文フリ、行ってよかった。
第一芸人文芸部(だいいちげいにんぶんげいぶ) 【い-01】
東京の文フリでも気になりつつ、でもいっつもブースが混雑してるので買いそびれていた本。
ちょうどお客さんがまばらになる時間帯だったのか、遠目から見たブースが空いてたので「あ、チャンスかも」と思って伺いました。
本書は又吉さんの散文、ピストジャムさんの書評、ファビアンさんのショートショートで構成された「文芸誌」。これを文芸誌って呼ぶとこが粋。
又吉さんの作品や人物像について実は詳しく知らず、「火花、よかったなぁ」と「千鳥の相席食堂、ちーよおじいとの絡み最高やったな」と「オシャレな人やなぁ」という3種類の感想しか持ち合わせてなかったのですが、
これ読んでいきなり、本気度の高いファンになってしまいました。
もう笑った。くすくすでおさまらず、所々爆発的に笑ってしまった。で、散々笑かされるのですが、エモ的な破壊力もすさまじくて、福耳のホームレスの笑顔と街灯の下で見る物語には、もう内臓を雑巾搾りされるような勢いでキュゥゥンとしたり。今度ぜったい小説も読もう。
ピストジャムさんの書評も夢中で読みました。紹介されてる本、全部読みたくなってしまう。町田康さんの「口訳 古事記」は今年中に必ず読むだろうな。
ファビアンさんのショートショートも面白かった。オキノピのラストで鼻以外の全てが伸びた瞬間、ゲラゲラ笑いました。
真剣に書くけど、深刻になってしまったら良くないんだよね。
と、物を書くときは結構な頻度で、戒めのように思ってます。深刻な物語を書いてはいけない、と言う意味じゃなくて、書き手(わたし自身)が深刻になってはいけない、という意味です。深刻に書くのって、乱暴な言い方かもしれないけど、たぶんそんなに難しくない。でも真剣に書くのは難しい。真剣って、集中力と体力と距離感の上に成り立つものであるような気がするので。
そして創作における真剣は、「真面目」や「一心不乱」よりも、「自由」という言葉に置き換える方がわたしはしっくりきます。
と、そんなことを読後に考えたくなるような文芸誌でした。
すごく面白かった。読めてよかったです。
コッシーさん 【文フリ会場の廊下】
どこかでバッタリ会えたりするかな?
と思ってたのですが、15時近くなってもコッシーさんらしき人をお見かけすることができず。15時半には会場を出ようと思っていたので、その前にお会いできたらいいなと思い、直接連絡をさせていただきました。
というわけで、オスの町のコッシーさんと無事に合流。
インタビューされるのも緊張しますが、するほうは多分、もっと緊張するはず。自分がインタビュアーの立場だったらって想像したら、想像しただけで緊張死できる。コッシーさん、いろいろ話題を振ってくださりありがとうございました。すごく楽しかったなぁ。
日帰り遠征、おつかれさまでした!
▼文フリレポートの音声配信はこちらから
そんなわけで、文学フリマ大阪12、めちゃくちゃ満喫してきました。
この日は文フリ後もお会いできたnoterさんが何人もいらして、最後の最後まで本当に楽しい1日でした。
遊んでくださったみなさまに心からの感謝を。
またこんな機会に恵まれたらいいなぁ。
幸せいっぱいのまま、セブンでラーメンとおにぎりとビールを買って宿泊ホテルに帰宅。
で、部屋に戻って明太子おにぎり食べたら、まさかの海苔があじのり!!
「うわぁ!なつかしい!!」って思わず声上げて、興奮で立ち上がってしまいました。
大阪に来れてほんとによかった。