R&Bオヤジ小説 日本国神話 壱 国産み
かねがね小説を書いてみたいと思っていた。
何を書こうかと考えたが、近年、日本のみならず世界の神話に関心を持っているので、まずは自分の国、日本の神話をもとにして書いてみようと思いついた。
初回は、日本国がどうやって生まれたのか、その起源を書いた。10回くらいの連載にしたいと考えている。
R&Bオヤジ、人生初の小説である。
高天原(たかまのはら)の神々のご相談ごと
澄み渡った空の彼方。天空にある世界。
「高天原(たかまのはら)」
日本という国ができる前、遠い遠い昔のことである。
たくさんの神々が、この高天原に静かにお住みになっておられた。
ある日、神々がご相談になり、下界に新しい国を造ることになった。
この新しい国が、いまわたくしたちが住んでいる日本国である。
新しい国造りにあたって、白羽の矢が立てられたのが、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の二柱(ふたはしら)の神だ。
(神様は「柱(はしら)」と数える)
神々は、伊邪那岐命と伊邪那美命をお呼びになりおっしゃった。
「そなたたちは、下界に新しい国を造るがよい」
「はい」
「しっかりと国造りを固めよ。この矛(ほこ)がきっと役に立つであろう」
神々は、伊邪那岐命と伊邪那美命に「天の沼矛(あめのぬぼこ)」と呼ばれる矛を授けられた。
天の沼矛(あめのむぼこ)の滴りで於能凝呂島(おのごろじま)
伊邪那岐命と伊邪那美命は、下界の様子をご覧になろうと、高天原にある「天の浮橋(あめのうきはし)」という橋の上にお立ちになった。
天の浮橋は天空にかかる大きな橋で、橋の上からは下界を眺めることができる。
二柱の神様が下を見ると、水に浮いた油のような何かがいくつも海面を漂っている。
「伊邪那美命よ、神々はわれわれに新しい国造りを命じられたが、どうしたらよいだろう」
「ええ、下界はあのようにユラユラとしております」
「神々は天の沼矛を与えてくれた。これを使ってみようと思うがどうであろう」
「よろしいと思います」
伊邪那岐命は天の沼矛を下界に向かって降ろし始めた。
天の沼矛は、下界に向けてぐーんと伸びていく。
「天の沼矛は、下界まで届きそうですか」
伊邪那美命は優しく問いかける。
「うむ。海まで降ろしてみよう」
伊邪那岐命は天の沼矛を海中にさし入れた。そして、海水を力いっぱい掻き回し始めた。
油のようなものが漂っている海面が大きく揺れる。
しばらく掻き回してから、矛をおもむろに引き上げた。
矛の先から雫が滴り落ちる。すると、滴り続ける雫がみるみるまにひとつの塊となり、島ができあがった。これが「於能凝呂島(おのごろじま)」である。
大八島(おおやしま)をお産みになる
伊邪那岐命と伊邪那美命は、高天原から舞い降り、できたばかりの於能凝呂島に降り立った。
さっそく「天の御柱(あめのみはし)」という大きな聖なる柱を天空に向かって立て、さらに広大な宮殿もおつくりになった。
「伊邪那美命よ、わたしたちは聖なる天の御柱を巡って結婚し、国を産もうと思う。どうであろう」
伊邪那岐命からこう尋ねられた伊邪那美命は「あなた様の思うままに」と答えた。
伊邪那岐命は柱の左から、伊邪那美命は柱の右から、それぞれ柱を巡り始めた。
そして出会ったところで「ああなんと、立派な男性でしょう」、「ああなんと、美しい女性だろう」と言葉を掛け合い、島を産み始めた。
最初に産んだのは淡路島である。続いて四国、隠岐島、九州、壱岐島、対島、佐渡島とお産みになり、最後に本州を産んだ。
八つの島を産んだことから、これらの島々を「大八島国(おおやしまくに)」と呼び、これが日本の国土の始まりである。