【紹介】相沢沙呼著『medium 霊媒探偵城塚翡翠』『午前零時のサンドリヨン』【マジシャンが再現】
あらすじ
推理小説作家・香月史郎と霊媒・城塚翡翠がタッグを組んで難事件に挑みます。翡翠の霊媒の能力は、死者の言葉を代弁し事件解決をアシストしますが、その言葉自体には証拠能力もなく、また殺害現場に行かなければ発動しないなどの条件があり、香月史郎がその言葉を推理によって現実世界と繋ぎます。しかし、巷を脅かすシリアルキラーの魔の手は翡翠にも忍び寄る——。
非常に説明しにくい!
このミステリーがすごい!第1位
本格ミステリ・ベスト10第1位
今年のベストブック第1位
本格ミステリ大賞第1位
SRの会ミステリーベスト10第1位
現時点でこれだけのタイトルを獲得しているすごいミステリ小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を書評してやろうという魂胆で読んでみました。ただ、「すべてが、伏線」の謳い文句は伊達ではなく、書評が非常にしにくかったです。
本格ミステリは往々にして、パズル要素に力を入れるためキャラが愛されにくいですが、本作の翡翠は非常に人気が高く、「#翡翠ちゃんかわいい」がTwitter上で本作を語る上でのキーワードになったといいます(これは本作のことを書評し難かったというのもあるかもしれません)。また、全国の書店員が今一番読んで欲しい本を紹介する、「本屋大賞」にノミネートされていることもあり、本格ミステリにしては読みやすい方だと思います。
ミステリ好きが読むと
ミステリ好きが読むと気がつく点がいくつかありました。たとえば、第二話『水鏡壮の殺人』では『黒書館殺人事件』と呼ばれる推理小説がでてきます。これは小栗虫太郎『黒死館殺人事件』をモチーフにしていることでしょう。また、登場人物の名前も日本のミステリ作家の名前をもじったものだと思われます。
他にもシャーロック・ホームズを彷彿とさせるものとか、ミステリ好きが読むとどきりとできる読者サービスが多数ありました。
奇術愛好家が読むと
じつは著書である相沢先生は奇術愛好家であり、同じ愛好家が読むとニヤリとできるポイントが多数ありました。これはもう、本当にマニアしか気がつけないことなので、ここには書きません。というか、書いても伝わらないでしょう。ここだけの話、序盤から違和感に気づいてプルプルしていました。
最後に
泡坂妻夫先生が亡くなってから奇術をしっかり描けるミステリ作家がいなくなってしまいました。そこに彗星の如く現れた相沢沙呼先生。デビュー作『午前零時のサンドリヨン』ではまさに、凄腕女子高生マジシャンが描かれています。そのマジックを動画内で再現してみました。よろしければご覧ください。