見出し画像

人生という名の物語



元々、他人のエッセイだとか日記というものに興味がなかった。

だが、大学で福祉を学ぶようになってから、少しずつ興味が湧いてきた。


大学一回生の時の授業でライフヒストリーという課題が出た。


身近な人、父母や、祖父母にインタビューして、その生い立ちをレポートにして提出するという課題。


(そういえば、学年を何回生と呼ぶのは関西の大学だけらしいね。)


写真や年表などを使い、大体5000字以上で書くようなレポートだった。


誰を対象にするか悩んだが、祖母が幼少期の頃に戦争を経験しているから、祖母にインタビューをしてレポートを書くことにした。


なかなか文字数が稼げず、どうしたものかと考えた結果、少しフィクションを加えてやろうということで、話を盛りに盛って若干捏造し、レポートを書き上げた。


自分のレポートに関しては、ライフヒストリーではなく、ライフストーリーになってしまったが、結構いい評価を得た。


2年後、3回生になると社会福祉士を取るための実習が始まった。


福祉には、高齢者、障がい者、児童、地域、医療、低所得者など、色んな分野があり、各々希望する分野の施設に実習に行く。


当時の自分は、あまり人気のない低所得者福祉に興味があった。


だから実習先は、あまり聞き馴染みのない人が多いと思うが、救護施設だった。

救護施設とは、身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。

生活保護法 第三十八条より抜粋


福祉業界では基本的にケース記録なるものが存在し、そこにはその人の生い立ちから、日常に起きたことなど、すべてが乗っている記録がある。


まあ病院のカルテのようなものである。

計24日間で、実習させて頂いている身分なので、とてもありがたいのだが、夏休みの間、無賃でほぼ職員と同じ業務をこなすことが何よりもしんどかった。

その中での唯一の楽しみが、入所者のケース記録を読むことだった。

あまり良くないとは思うが、生い立ちに関しては、自分が生きてきた世界とは程遠い環境や世界で、ある意味小説を読んでいるような感覚だった。


そんなこんなでなんとか実習を乗り切り、あれから4年ほど経つが、今でもあの時読んだケース記録は覚えている。


人生はその人が生きてきた物語で当たり前だけど同じものはない。そしてそれは人の数だけ存在する。


仮に同じことを経験したとしても、その時の感情や考えは人それぞれ。


それが興味深いと思うし、別の人ならどう思うのか、感じるのか知りたいと思う。


個人的には、偉人の伝記のような何かを成し遂げた人のではなくて、ただ平凡な人生を送った人のライフヒストリーの方が読み応えがある気がするし、そっちの方が楽しめる気がする。


だからこの世を生きる人には、自分のライフヒストリーを書いて、この世を去って欲しいと思うけど、やはり楽しく読むには、多少の文章力は必要で、なかなかに難しいことである。


だから、その代わりにこの世にはエッセイや日記の本が、本に出来なくとも、誰かに共有できるようにnoteやブログといったものがあるのではないか。


そんなことをふと思った。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集