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愛すべき書店員、奮闘の日々の話〜早見和真『店長がバカすぎて』〜
かおりさんへ
突然ですが、かおりさんはどこで本を読むのが好き?私は前にも言ったような気がするけど、在来線に揺られながら本を読むのがいちばん好き。このあいだ久々に、在来線で遠出をする機会があってね、とてもとても幸せだったわ。さて、今日はその時に一気読みした早見和真『店長がバカすぎて』について書こうと思います。
この本は書店でも図書館でも何度も見かけていて、ずっと気になっていたんだよね。私の口癖が「バカじゃないの!?」だということもあり…なんだか親近感を感じつつ、なんとなく手に取りにくかったというか…
予想通り、普段の会社での自分の様子が繰り出されているような本でした。でも、常に文句を言い、たまに大爆発もしちゃうけれど、真面目で真っ直ぐで、本が大好きな書店員の谷原京子ちゃんがとても愛おしくなりました。
そして、書店の仕事は楽しそう!と再認識しました。かおりさんが前に教えてくれた『書店員は見た!本屋さんで起こる小さなドラマ』でも『名を名乗れ!』という本を探してと言われる話があったけど、似たような話がたくさんあったわ。
京子ちゃんが神様Aと呼んでいるお客様。昨日散髪屋の棚にあった新聞(どの新聞かも何日の新聞かもわからない)に載っていた『今いちばん売れている本』(実用書なのか雑誌なのか漫画なのかもわからず、タイトルも著者もわからない)として紹介された赤い表紙の1600円くらいの本を今すぐ売れと言ってくる…そんな、ご無体な。
こっそりマダムと呼んでいる、いつでも京子ちゃん好みの本をお買い上げになるお客様に、うっかり声をかけてしまい、いつもどんな本を買っているか見守っていることがバレてしまったと反省したり。
いろいろなことが巻き起こるけれど、書店員の矜持は素晴らしい本とお客様をつなぐこと。それがわかる一文がこちら。
「…書店員が一人辞めたら、出会うべき作品にお客様が出会えなくなることがあるかもしれないじゃないですか。現に私がそうでしたよ。谷原さんが書店員をしてくれていたから、私は『空前のエデン』と出会えたんです。生き延びることができたんです。(中略)一人の小説家にしか生み出せないものがあるように、一人の書店員にしか良さを伝えられない作品があるかもしれないし、そうあるべきなんじゃないかって私は思っています」
前回ご紹介した「書楼弔堂」もかおりさんが紹介してくれた「一万円選書」もそうだけど、本と人を結びつける仕事って素敵な仕事だなと思う。そして、この「読みたいふたり」も誰かと本を結びつける小さな手助けになったらうれしいなと思ったりしました。というわけで、また。
2025年1月24日
やすこより